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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
385/999

5-81  異界の呼声

―1―


「にしても、芋虫が貴族の仲間入りか。いよいよ帝国は終わりかもしれないな」

 フロウが俺の首から提げた指輪を見て笑っている。

「まぁ、今だけ使える、その指輪、有効活用するんだな」

 あ、はい。


 それだけ言うとフロウは手を振って闘技場へと帰っていった。闘技場が1番盛り上がる時間だからね、お仕事頑張ってください。そして、怖いんで、もう俺に構わないでください。


 自宅に戻り、結果をユエに報告し、ご飯を食べて就寝である。えーっと、何か忘れていることは……何もないよね!


――[アクアポンド]――


 翌朝、日課として家の裏に池を作り、ポンちゃんからお弁当を受け取り、フルールに矢の作成を依頼し、転移する。


――《転移》――


 ぴょーんとな。


 荒野の途中に着地する。あれ? そう言えば俺って『異界の呼び声』の付近でチェックしたか? してない、してないじゃん!


 仕方ない、もう一度歩くか。


――[ハイスピード]――


 風の衣を纏い荒野を駆けていく。


 荒野と言っても、結構、岩とか小さな丸まったような草とか葉のない木とか、少ないけど自然が見えるよね。


 しばらく荒野を駆けていると遠くに魔獣という線が見えた。近寄ってみると、大きな鶏が耳障りな鳴き声を響かせながら歩いていた。ホント、この世界は何でも大きくなるな。人くらいぺろりと丸呑みしてしまいそうな大きさの鶏とか、怖いです。

 荒野で汚れてしまったのか、体毛が灰色だね。さあ、どうしよう。


 せっかく見つけた魔獣だ。狩りますか! いやぁ、ホント、俺もこの世界に馴染んだよなぁ。


 俺は鶏に気付かれないように芋虫スタイルで近寄っていく。


 鶏はこちらに気付かず、餌でも探しているのかキョロキョロと周囲と見回しながら耳障りな鳴き声を響かせている。


――[アイスウォール]――

――[アイスウォール]――

――[アイスウォール]――


 氷の壁を鶏の三方に張り、逃げられないようにする。突然、自分の周囲を氷に囲まれた鶏が大きく耳障りな鳴き声を立てながら暴れる。


 さあ、終わりなんだぜ。


――[アイスストーム]――


 氷の壁によって密閉された世界に氷と風の嵐が生まれる。そして氷の壁が砕け散り、嵐が止んだ後には瀕死の鶏が生まれていた。瀕死の鶏がよろよろと首を動かしこちらを睨み付ける。うお、まだ生きているのかよ。も、もしかして結構、強力な魔獣なのか? 一応、鑑定しておくか。


【名前:荒野の孤独】

【種族:エレエルコカトライス(コカトリス変種)】


 名前付き(ネームドモンスター)かよ!


――[アイスストーム]――


 鶏を中心に氷と風の嵐が吹き荒れる。巨大な鶏が、まだ、こんなにも元気が残っていたのかと暴れ回る。そして鶏が嵐を突破する。


――[アイスランス]――


 俺から生まれた尖った木の枝のような氷の槍が鶏を嵐の中へ押し戻す。


 鶏が耳に残る嫌な叫び声を上げ息絶えた。おー、勝った、勝った。うん、楽勝じゃん!


 で、残されたのは氷の塊によってズタボロになったコカトリスの死骸っと。これ、素材の価値がなくなってそう……。ま、まぁ、せっかくの名前付き(ネームドモンスター)の素材だ。魔石を取り出して魔法のウェストポーチXLに入れておこう。何か俺には分からない、素材としての価値があるかもしれないからね! ね!




―2―


 小一時間かけコカトリスから魔石を取り出す。いやね、大抵、魔獣って心臓部に魔石があるんですけどね、このコカトリスさん、でけぇ、デカすぎるんだよ! 体の中に入るような感じで、なんとか魔石を取り出したぞ。あー、もう、からだがぐちょぐちょだよ。もう二度と経験したくない感触だよ!


――[クリーン]――


 クリーンの魔法を使い体の汚れを落とす。はぁ、覚えていて良かった、クリーンの魔法!


 さ、残った傷だらけで色々なところが斬り裂かれたコカトリスの死骸を魔法のウェストポーチXLに入れてっと。じゃ、進みますか。


 えーっと北だよな。北。コカトリスに釣られて、道が分からなくなってしまったけど、とりあえず北に進めば大丈夫だよな?


 しばらく進むと小さな城のような建物が見えてきた。うん?


 小さな城の前には野営している3人の冒険者たちの姿が見える。ううん?


 えーっと、何かの小迷宮なのかな?


 近づいて冒険者の人に話を聞いてみようかな。襲われないよね?


 俺が芋虫スタイルで気配を隠し歩いて行くと、冒険者たちが動き始めた。冒険者の1人が火を消し、武器を持って立ち上がる。き、気付かれてる? も、もしかして魔獣かと思われてる? ちょっとちょっと襲われたら洒落にならんよ。


『待って欲しい。自分はこのような姿だが敵では無い』

 すぐさま天啓を飛ばす。


 俺の天啓の効果か、武器を持ち立ち上がった冒険者たちが俺に背を向け座り直す。


 俺が冒険者の元まで歩いて行くとスキンヘッドの冒険者が俺に背を向けたまま話しかけてきた。

「鷲鼻が話していた芋虫野郎か。噂されているお前の活躍は眉唾だと思うが」

 モヒカン冒険者が火を起こし、何かの肉を焼き始める。


『噂とは?』

「お前の噂だよ、噂」

「……」

「そうだな、帝都の闘技場で王者になったとか、魔族の侵攻を食い止めたとか、北の国を救ったとか、そんな感じだな」

 えーっと、あー、うん。


『ちなみに、ここは?』

「お前、聞いてばかりだな」

「……」

「小迷宮『異界の呼び声』だよ、『異界の呼び声』。中は悪魔系の魔獣がうじゃうじゃ、危険な迷宮だぜ」

 ?


 うん?


 ちょっと待て、ちょっと待て。ここが『異界の呼び声』だと?


 なんだと!

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