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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
373/999

5-69  戦いの意味

―1―


 さて赤騎士、青騎士との戦いか。って、2対1かよ!


「ラン、わらわが受け取るのじゃ」

 うん? 受け取る?

「にゃあ?」

 姫さまがこちらへと近づき、俺の頭の上の羽猫を持ち上げる。あー、羽猫か。

「こやつはわらわと一緒に観戦なのじゃ!」

 あ、はい。姫さま、羽猫をお願いします。


「それじゃあ、行くぜ」

 赤騎士が赤いマントをはためかせ、大剣を両手で持ち、そのまま正眼に構える。盾は持ってないんだな。

「では、行きますよ」

 青騎士も両手に持った剣を滑らせるように構える。


 これ、魔法とか使ったら駄目なパターンだよな。アイスストームで2人を吹き飛ばしたら駄目だよなぁ。あー、真紅妃を召喚するのも駄目かな――そういう手段で勝っても駄目そうだ。


 赤騎士がこちらへと駆ける。早い! 俺の視界に縦の赤い線が走る。って、俺を殺す気かよ!


 赤い線をなぞるように走る素早く力の入った振り下ろし。右に避ける。これ、赤騎士の一撃が本気じゃなければ、逆に回避出来なかったぞ。

「俺の本気の一撃を回避するか!」

 いきなり殺す気で斬りかかってくるとか、怖い人だな。


 と、避けた俺の所へと青騎士が迫る。まずは右の剣からの振り下ろし、俺は左へ回避、そして左の剣からの横薙ぎ……。


――《魔法糸》――


 魔法糸を飛ばし、円を描くように俺自身をスライドさせ、青騎士の横薙ぎを回避し、そのまま背後へ回り込む。そのままサイドアーム・ナラカに持たせた真銀の槍で斬りかかる。しかし青騎士が、俺の縦斬りを振り返ることなく、背後に右の剣を回し受け止める。き、器用なことをするなぁ。


 けど、俺の武器はもう一つあるんだぜ!


「俺を忘れてるぜ!」

 赤騎士が大剣を水平に構え、そのまま突きを放つ。ちょ、あぶな! とっさに横へ飛び、赤騎士の突きを回避する。声をかけてくれなかったら、まともに食らってたぞ。もうね、せっかくのチャンスだと思ったのに。


 青騎士が剣を振り払い、こちらへ向き直る。2人で連携してくるのは卑怯だよな……。さあ、どうする、どうする?


 ま、相手が2人なら、こっちは手数を増やすしかないか。


 真紅妃を自分の手で持ち直す。そして魔法のウェストポーチXLから金剛鞭を取り出し、その空いたサイドアーム・アマラに持たせる。


 自分の手に真紅妃、サイドアーム・ナラカに真銀の槍、サイドアーム・アマラに金剛鞭、三刀流だぜ!

「スー」

「わかってる。あの浮いた武器は軌道が読めない分、要注意だな」


 手数で攻めて速攻で片をつける!




―2―


――《W百花繚乱》――


 俺は青騎士へと間合いを詰め、2つの槍から穂先も見えぬほど高速の突きを放つ。青騎士が俺の高速の突きをじりじりと後ろに下がりながらも、2本の剣で打ち返していく。

 そこへ俺の側面から――上段に大剣を構えた赤騎士が飛び、迫る。


――《ゲイルスラスト》――


 サイドアーム・アマラに持たせた金剛鞭で突きを放つ。赤騎士が空中で体を反らし、金剛鞭を頬に擦らせながらも、大剣を振り下ろす。

 俺へと迫る大剣。こ、これは躱せないぞ。


 俺の首に巻き付いていた白竜輪が動き、赤騎士の大剣を絡め取る。ああ、白竜輪があって良かった。

「なんだと!」


――《スパイラルチャージ》――


 大剣を絡め取られ動きの止まった赤騎士へと真紅妃が螺旋を描きうねりを上げる。赤騎士がとっさに大剣を手放し、横へと飛ぶ。

 そして青騎士が両手に持った2本の剣をこちらへと叩き付けてる。


――《払い突き》――


 2本の剣の下を真銀の槍を滑らせるように受け流す。そのまま一回転、無防備な青騎士へと突きを放つ。

 青騎士が腕をクロスさせ、篭手にて真銀の槍の突きを受け止める。そして振り下ろした剣を返し、斬り上げる。


――《魔法糸》――


 俺は魔法糸を後方へ飛ばし、青騎士の攻撃を回避する。そして、そのまま金剛鞭を魔法のウェストポーチXLに仕舞い、代わりに中から水天一碧の弓と黒金の矢を取り出す。


――《アローレイン》――


 空中にて矢が光となり赤騎士へと降り注ぐ。赤騎士がとっさにマントを動かし、光の矢を受け止める。

「スー!」

「こっちは大丈夫だ!」


――《飛翔》――


 《飛翔》スキルを使い青騎士へと飛ぶ。


――《トリプルアロー》――


 飛びながら3つの矢を番え、放つ。青騎士がとっさに剣を動かし矢を受け止める。


――《ダブルアロー》――


 その隙間を狙うようにさらに2本の矢を放つ。しかし、青騎士の鎧が俺の矢を弾く。

「くっ!」


――《W百花繚乱》――


 穂先も見えぬほどの高速の突きが青騎士へと迫る。青騎士が剣を動かし、高速の突きを受け止めようとするが間に合わない。そのまま突きを受け、体が舞う。いや、自分で後方へと跳んだのか。


 青騎士が空中で態勢を整え、片方の剣をこちらへと投げてきた。俺はとっさに回避しようと動くが、躱しきれず小さな足の膝部分に擦り傷を作ってしまう。


「奥の手だぜ!」

 赤騎士が叫ぶ。ああ、赤騎士も居るんだよな。どちらかを気絶させないとまともに戦えないなぁ。


 赤騎士が何も無い空間に剣を持つように手を添え、もう片方の手を上に動かす。その動きに合わせるように風が唸りを上げ、風の剣が作られていく。何だ、魔法か?


「そこまでなのじゃ!」

 と、そこで姫さまからのストップがかかる。

「スー、熱くなりすぎなのじゃ」

 姫さまの制止に青騎士が大きく息を吐く。

「スー、姫さまの言うとおりですよ。ここで殺し合いをするつもりですか」

「ちっ、わーったよ。が、ランもまだまだ本気じゃないようだがら、まだ行けそうだと思うんだがな」

 赤騎士が両手を上げる。いやいや、これ以上とか嫌だから、ね。俺は戦闘狂じゃないからね。終わってホッとしてるよ。


 しかしまぁ、弓を使ったのは失敗だったかなぁ。青騎士さん、良い鎧を装備してますね。材質は何ですか? 多分、チャージアローとかじゃないと貫けない感じなんだろうなぁ。


「ラン、返すのじゃ」

 姫さまが羽猫の腋に手を入れ、ぶらーんと胴体を垂らした状態でこちらへと運んでくる。あ、すいません。

 羽猫は俺の近くに来ると、その小さな羽をパタパタと動かし、空を飛んで俺の頭の上に乗っかった。ホント、お前は俺の頭の上が好きだよな。


「ま、他の冒険者が居る手前、全てを出すのも得策じゃないか」

 あ、そういうの全然、考えていませんでした。

「そうですね。でも、これで姫さまの思惑通り、ここに居る上級冒険者のランさんを見る目が変わったと思いますよ」

 な、なるほど、そういう思惑があって、赤騎士と青騎士を俺にけしかけたのか……。姫さま、面白そうだからってやってたわけじゃないんだね。


「うむ。ランは凄いのじゃ」

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