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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
369/999

5-65  交易ルート

―1―


――《転移》――


 我が家の食堂にて食事を済ませ、お弁当を受け取り、《転移》スキルを発動させる。


 キャラの港町の前に到着。さてと、ファット団の隠れ家に向かうかね。


 浜辺を駆け抜け、ファット団の居る洞窟へ向かう。さすがに今回は奇岩島から行かないからね。あっち、面倒だし……。


 ファット団のアジトになっている洞窟へ向かって浜辺を走っていると、海の方から巨大なカニ爪が伸びてきた。ジャイアントクラブか!


 海からカニ爪の先が、体が砂浜へと姿を現していく。おー、蟹だ、蟹肉だ。


 巨大な蟹がハサミをカチカチと鳴らしながら歩いてくる。おー、早い早い。横を向いたままカサカサと、ホント、素早いなぁ。

 ハサミがこちらへと迫る。俺は大振りのハサミを躱し、真紅妃を突き出す。


――《スパイラルチャージ》――


 真紅妃から生まれた赤と紫の螺旋が硬そうなジャイアントクラブの甲殻を打ち砕き、内臓を飛び散らせる。蟹肉が飛び散る、飛び散る。もったいない。


 そしてジャイアントクラブは、その一撃で動きを止めた。あ、もう死んだんだ。うーん、一撃か。これは真紅妃が強いのかな。


 真銀の槍で甲殻を切り裂き、ぐちゃーっと開かれた中から小さめの魔石を取り出す。そこまで大きくないよね。ま、これは後で真紅妃のオヤツかな。


 ジャイアントクラブの死骸を魔法のウェストポーチXLの中に入れる。王者の盾と混ざっちゃうけど大丈夫だよな。せっかくの豪華な王者の盾が、この蟹肉で汚れてぐちゃーってならないよな。


 ジャイアントクラブを倒し、そのまま進むとファット団のいる洞窟が見えてきた。


 俺が洞窟の中へ入ると、そこにはバンダナを巻いた太っちょの猫人族が居た。

「おー、チャンプだよ。どうしたのー」

 おー、俺のことを覚えているのか。

『ファットはいるだろうか?』

「ファットの兄貴? 兄貴なら、今、ネウシス号で出かけてるよ」

 マジか。無駄足になったか。

『いつ頃戻ってくるだろうか?』

「ファットの兄貴、気まぐれだから、でも今回はすぐだと思うよ」

 そっかー。じゃ、戻ってくるまで蟹肉でも集めておくかな。




―2―


 浜辺でジャイアントクラブを倒し続ける。倒し続けると言ってもさ、なかなか現れないから、浜辺を何往復もしていただけとも言う。正確には探し続けた、だよね。結局、追加で倒せたのは2匹だけ、これだけでもう日が暮れそうだ。

 やっぱりさ、迷宮じゃないと魔獣って居ないんだな。でも、ナハンでは、結構、外でも魔獣を見かけたんだけどなぁ。

 ま、サイズが大きいから3匹でも結構な量になるか。


 はぁ、でもさ、今日は迷宮都市でクエストを受けようと思っていたから、これで一日を潰してしまったのは、なぁ。損した気分です。

 ついでに迷宮都市の王城に行ってジョアンに盾を渡そうと思っていたのにさ、それも出来ないし、うーん、完全に計画が狂ってしまったな。


 ま、さすがにそろそろファットも戻っているか。


 俺がファット団の隠れ家に戻ると洞窟の中にネウシス号の姿が見えた。おー、戻ってるね。

「おー、チャンプさん、お帰りなさい」

 ファット団の1人がこちらに気付いて駆けてくる。

『ファット殿は奥かな?』

 バンダナを巻いた猫人族が頷く。よっし、帰ってる、帰ってる。


 そのままファット団のアジトを奥まで進むとファットが偉そうに椅子に座ってくつろいでいた。

「懐かしい顔じゃんよ……、あの怖いのは居ないみたいだな」

 ファットがキョロキョロと周囲を見回している。ああ、14型さんか。14型は俺の家で留守番しているよ。


「で、俺様に何のようよ」

 ファットが腕を組み、足を組んでこちらを見る。


『ファット殿、自分は今、帝都で食堂をやっているんだが、食材が欲しい。ホーシアと話をつけて、帝都との交易ルートを開きたい』

「ちょっと待て、ちょっと待て、ちょっと待てよ!」

 ファットが慌てて椅子から立ち上がる。大事なコトだから3回言ったのか? そこは2回だろうよ。

「食堂をやっているって何だよ」

 え? そのままの意味だけど……。


「はぁ、でよ。それでなんで俺様よ」

『ファット殿なら、ホーシアとの間を取り持ってくれると思ってな』

 そこでファットが大きなため息を吐く。

「それならお前もだろうがよ……」

 いやいや、俺はミカンくらいしか縁がないじゃん。女王と知り合いなのはファット様だろ?

「それによ、どうやって、その食材を帝都まで運ぶよ。俺様のネウシス号が、いくら格好良くて早くても陸上は進めねぇよ。ここから帝都まで何日かかると思ってるよ」

 なるほど。確かに魚介類なんて生ものだもんな。運んでいるうちに腐るか……。


「はぁ、まあよ。俺様も何とか考えてやるよ。で、どこに届ければいいんだよ」

 あ、そうか、それを考えてなかった。えーっと、どうしよう。考えてなかったぞ。


 えーっと、えー、あー、うん。ここで俺が作った商会の名前を伝えるべき何だろうけど、何も考えていなかったぞ。どうしよう、どうしよう。


 俺の名前が氷嵐の主だから……、って、そういえば、なんでみんなランって呼んでたんだろうな。うん? もしかして、ヒョウ・ラン・ノアルジって名前だと思われているのか。いや、まさかまさか。そんな俺の異能言語理解スキルが壊れているかのような伝わり方が……。あー、うん。


『帝都のノアルジ商会まで頼む』

「わーったよ。考えとくよ」

 ファットが小さな声でお前には恩があるからよっと呟いていた。あー、ごめん、こちらに聞かせるつもりじゃなかったんだろうけど、普通に字幕で見えちゃった。


 にしても変な思い付きで商会の名前をノアルジにしちゃったけど、失敗したかなぁ。本当はもっとカッコイイ名前にしようかと思っていたんだけどなぁ。ま、思いついたらだけどさ。


 はぁ、まぁ、今日はもう帰るか。帰ってユエに商会の名前を決めたことを伝えておこう。後はポンさんに蟹肉を渡して――ま、そんな感じか。

2016年1月28日修正

ノアルジー → ノアルジ


2021年5月10日修正

ミカンくらしか → ミカンくらいしか

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