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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
368/999

5-64  盾完成です

―1―


――[アクアポンド]――


 今日も今日とて家の裏に池を造る。これで水の心配はないね! にしても、アクアポンドが便利過ぎる。覚えた当初は水溜まりを作るだけの使えない魔法だと思ったんだけどなぁ。使い続けた甲斐があったよね。


 俺がそんな風に、感慨にふけっているとフルールの鍛冶小屋の方から大きな音がした。なんだ、なんだ? 何が起こった?

 と、とりあえず見に行くか。


 フルールの鍛冶小屋へと走る。


 そこには無残な姿に変わり果てた鍛冶小屋があった。お、おい、フルールは無事か? 何かの襲撃を受けたのか?


 壊れた小屋の中でフルールが盾を持ったまま倒れていた。うん? このちょっとカッコイイ盾って、もしかして新しい盾か?

 クソ餓鬼連中の姿は見えないな。フルールだけか。にしても、何が起きたんだ?


――[サモンアクア]――


 水の球を作り、フルールに浴びせる。


「はっ、なんですのん!」

 フルールが足をばたつかせて、上体を起こす。

『起きたか、何があった?』

 フルールが犬耳をパタパタと動かしている。どうした?

「耳に水が、水が! と、とれないですわ」

 へー、大変だね。

『何があったのだ?』

 俺の言葉にフルールが跳ね起きる。

「そうですわ、盾は? 盾は?」

 盾? えーっと、その、今、フルールが持っている、装飾の施された、うっすらと青く、そして銀色に輝く盾のこと?

『今、手に持っている盾のことか?』

「そう、この盾ですわ! って、持ったままだったのでしたわぁ」

 そ、そうだね。

「ラン様、ご要望の盾、完成しましたわぁ」

 あー、そうか。ついに完成したのか。で、その盾の完成とこの惨状が、どう繋がるのかね。

「どうぞ、ですわ」

 フルールから盾を受け取る。ああ、ありがとう。と、いや、そうじゃなくてだね、この惨状は何が原因なのかを知りたいんですけど。


『この惨状は?』

 フルールが片方の犬耳を押さえながら、ぴょんぴょんと飛び跳ねている。


『この惨状は?』

「へ?」

 フルールが不思議そうな顔でこちらを見る。いや、だから、なんで、こんなズタボロな状態なんだよ。俺の言葉は天啓だから、耳を押さえているから聞こえないなんて通じないぞ。


『この惨状は!』

「えー、そうですわ。完成した盾を調べていたら、魔法が発動して……死ぬかと思いましたわぁ」

 魔法が発動した? 俺は手に持った盾を鑑定してみる。


【王者の盾】

【氷嵐の主の加護を受けた盾。アイスストームの魔法が発動出来る】


 ん? 何だコレ。俺の加護? 加護なんて出来るようになった覚え、全く無いんですけど、どうなってんの。


「MPをごっそり持っていかれて死ぬかと思いましたわぁ。もう、ふらふらで今日は何も出来そうにないですわ」

 な、なるほど。この惨状は、フルールが誤ってアイスストームを発動させてしまったからか。普通のアイスストームって消費MPが80くらいあったよな。MPが少ない人には結構、きつい消費か。


「しかし、なんで、こんな力を持ったのか分からないのですわ。レアメタルは軽くて硬いだけの金属、こんな真銀みたいに魔法の力を持つことはないはずですわ」

 チャンピオンソードから作られたインゴットを使ったからなのかなぁ。名前が王者の盾だもんね。インゴットにしたら何でも一緒かと思っていたけど、元の素材も重要なのかなぁ。うっすらと青く、そして銀色に輝くのは、レアメタルインゴットの時とは全然違うもんな。


 にしてもアイスストームの魔法か……。


 よし、ちょっと外で試してみよう。


 建設途中の建物から外れた少しだけ広い場所に行ってみる。フルールも俺の後をついてくる。そして、何故か、いつの間にか、14型の姿がある。うお、お前いつの間に俺の後ろに……。


『少し、試しに使ってみるぞ』

「わかりましたわぁ」


――[アイスストーム]――


 盾を掲げて魔法を使ってみる。普段とは違う魔法の使用感覚。俺が狙った場所に小さな氷と風の嵐が巻き起こる。あれ? 威力が小さい。普段はもっとがーん、どばー、ずしゃーって感じなのに。上位版は当然のこと、普段のアイスストームより、かなり弱い感じがする。


 消費MPは……、え? 40だ。40しか消費していない。


 俺は王者の盾を置き、もう一度、魔法を使ってみる。


――[アイスストーム]――


 先程よりも大きな氷と風の嵐が巻き起こる。こちらまで寒くなりそうな肌がビリビリと震えるほどの嵐だ。


 こちらの消費MPは、うん、80だ。アレ? 半分じゃん。


「ラン様、MPは大丈夫なんですのぉ?」

 フルールが心配そうにこちらを見る。俺を誰だと思っている! 余裕ですよ、余裕。この程度の消費なら、俺ってば20回以上は使えるんだぜ。


「マスターなら大丈夫なのです。この何も考えてなさそうな外見からは想像出来ないくらいにマスターは凄いのです」

 あ、はい。14型さん、一言多いです。それと俺は考え無しじゃないです。無いですぅ!


「ら、ラン様、実は凄い人? 人ですよね? ……人だったんですのぉ。フルール、ラン様に雇って貰えてよかったですわぁ」

 フルールが14型に俺が人かどうかを確認し、嬉しそうに尻尾をパタパタと振るわせている。は? イマサラ、デスカ。ホント、この狼頭は……。


 ま、まぁ、これで盾は完成したワケだ。切り札的な魔法も使用出来るみたいだし、ジョアンに良いプレゼントが出来たな。うん、この盾を持って頑張ってほしいものだ。


 あ、そうだ。

『フルール、これを』

 俺は、昨日のうちに、鉄のナイフから作っておいたインゴットをフルールに渡す。

「ラン様の持ってきてくださるぅ、インゴットはどれも素晴らしいんですわぁ」

 そりゃまぁ、究極とか名前についているもんね。さすがは上位魔法!


「でも、これ、普通ですぅ……」

 フルールが嬉しそうにアイアンインゴットを受け取る。そして金属を見た瞬間、その表情がすぐに微妙なものとなり、そんなことを呟いた。ごめんね、期待させてごめんね。それ、俺が普通にクリエイトインゴットの魔法を使っただけだから、上位魔法版じゃないから、期待させてごめんね。


 ま、タダであげるからさ、それで適当に何か作って売っといてください。

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