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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
366/999

5-62  試練を突破

―1―


 と、とりあえず勝った、良かった、ってことで、うん。あ、そうだ、ここでヒールレインの魔法を使って少しは役に立つ所を見せるか。


 と、魔法をかけようと傷を負ったはずの侍さんを見ると、普通に歩いていた。あれ? 怪我は?

『傷は大丈夫か?』

 俺が侍さんに天啓を飛ばすと驚いたように自分の身体を見ていた。そうだよ、なんで普通に歩いてんだよ。


「ちょっと、説明聞いてなかったの? ここではMPにダメージを受けるんでしょ」

 あ、そうか。って、それだと、俺、何も出来ないじゃん。

「これで終わりか」

 侍さんが大きく息を吐いている。

「にしても、そこの芋虫ちゃんは私たちと一緒で良かったわね。私たちのおかげで試練の迷宮が突破出来たじゃない」

 魔法使いのお姉さんが杖をくるくると回しながら、そんなことを言っている。えー、ちょっと待ってよー。

「いやいや、この者はよくやっていると思うのだ。この者がおらねば、そなたも穴に落ちて終わってたんだぞ」

 そうだよ。俺、この魔法使いのお姉さんを助けているじゃん。

「そ、そうね。芋虫ちゃんが私を助けてくれたから、勝てたってことね。これもチームワークね」

 魔法使いのお姉さんと侍さんが笑っている。いや、あのー、多分、俺1人でも楽勝だったと思うんです、思うんですよ! って、今更、そんなことを言っても信じて貰えないだろうなぁ。


 ミノタウロスが消えてしばらくすると舞台の中央が開き、またも下り階段が現れた。これで終わりかな。


 3人で階段を降りていく。


 長い長い、先の見えない階段を降りていくと軽い目眩が……何だ?


 気が付くと入った時と同じような石造りの通路に居た。他の2人の姿が見えない。そして、俺の正面からは明かりが、外からの陽の光が差し込んでいた。で、出口?


「にゃあ?」

 俺の頭の上で羽猫が小さく鳴く。お前、いつの間に……。て、まぁ、これでゴールか。


 そのまま光へと歩いて行く。そして迷宮の外へ出た所で上から声がかかった。

「試練の迷宮のクリアおめでとうございます」

 これは……最初の場所か? 開かれた門も階段も、ああ、見覚えがあるぞ。入って出ただけってことか? この迷宮、何なんだ? もしかして、すべて幻覚だったのか? うーん、あり得るな。


「遅かったじゃない」

「ふむ。わしもいるぞ」

 魔法使いのお姉さんと侍さんもいる。


「今回の攻略者はあなたたちだけです。しかも初挑戦でクリアしてしまうなんて」

 猫人族のお姉さんが、少し驚いている。あー、一発クリアは凄いんだね。……凄いか、これ?

「では、皆さん、冒険者ギルドに行きましょう。迷宮都市は有能な冒険者を歓迎します」

 猫人族のお姉さんが口の端を上げ、にゃっと笑う。




―2―


 冒険者ギルドへ戻る。そう言えば、他に居た冒険者志望の人たちが見事に居ないな。失敗ってなった時点で迷宮から放り出されて帰ったのかな。


「こちらです」

 受付のお姉さんの案内にしたがって冒険者ギルドの2階へ上がる。そして、そのまま2階にある少し広めの部屋へ通される。


「みなさん、用意された椅子におかけ下さい。当ギルドの上級職員からのお話があります」

 見れば部屋の奥に腕を組んだおっさんが居た。無精髭のうさんくさそうなおっさんだ。

「ああ、試練の迷宮のクリア、おめっとさん」

 おっさんが面倒くさそうにお祝いしてくれる。はい、ありがとうございます。

「今回は、凄いのもいるな……」

 何故かおっさんが俺の方を見る。分かる人には分かるのかな。いやあ、俺ってば、万能系の冒険者だからね、注目されるのも仕方ないか。

「で、あんたらはステータスプレートは持ってんのか?」

 2人が頷く。俺は頷くことが出来ないのでサイドアーム・ナラカでステータスプレート(金)を取り出し、おっさんに見せる。

「まぁ、迷宮都市に来るような連中なら当然か。それと支度品か……おい」

 ギルドの職員さんが小さな巾着と金属のナイフ、それに皮製の水袋のような物を持ってくる。

「魔法の袋と剥ぎ取り用のナイフに水袋だな」

 あ、水袋でいいですね。にしても今更な感じの支度品だなぁ。正直、要らないです。

「で、これらを渡す前にステータスプレートに登録をさせてくれ」

 無精髭のおっさんが指をくいくいっと曲げ、こちらへ来いって合図する。それを見て魔法使いのお姉さんが無精髭のおっさんの前へと腰をくねらせながら歩いて行く。そしておっさんの前へと叩き付けるようにステータスプレートを置く。あ、ステータスプレート(銅)だ。

「はい、どうぞ!」


 無精髭のおっさんが、そのステータスプレートに水晶玉のようなモノをかざす。

「登録終わったぞ。Fランクから頑張りな。後の説明はうちのギルド職員から、あるだろ」

 魔法使いのお姉さんがひったくるように自分のステータスプレートを取り、元の場所に戻る。次は侍さんだね。

 侍さんが取り出したステータスプレートも銅だった。うーん、銅の方が一般的なのかな。

「ああ、終わったぞ。もうすぐEランクか。こちらでも頑張ってくれ」

 無精髭のおっさんの言葉に侍さんが頷いている。じゃ、次は俺か。


 俺も無精髭のおっちゃんの前にステータスプレート(金)を置く。

「おい、この芋……、うん、ああ、お前さん、金かよ。しかもDランクだと……」

 おっさん、俺の個人情報が漏れてますよ。って、この程度は個人情報にあたらないのか?

「おい」

 おっさんが俺を片眼で睨む。ど、どうしたの?

「何で、お前、試練の迷宮に挑んでいるんだ?」

 へ? 何でって、受けろって言われたから受けたんだけど問題だったのか? そこで無精髭のおっさんが猫人族のお姉さんの方へ向き直る。

「おい、なんで、試練の迷宮から受けさせてるんだ! これなら普通に登録してもよかっただろ!」

「本人がDランクと言っただけでしたので……」

 猫人族のお姉さんが下を向いてごにょごにょと喋っている。これは言い訳ですね、イイワケですね! って、もしかして、俺、試練の迷宮に挑戦しなくてもよかったのか? もしかして、舐められてた?

「まぁ、いいか」

 あ、いいんだ。このおっさんも適当だなぁ。


「ま、これで登録完了だ。後の説明は、うちの職員から聞いてくれ」

 そのまま無精髭のおっさんは部屋を出て、何処かへ行ってしまった。登録の為だけに来たのか。


「それでは、まず支度品から説明します」

 あ、鑑定しとこ。


【魔法の袋(2)】

【亜空間にアイテムを収納できる魔法の袋。収納できる種類は2】


「まずは魔法の袋です。小さなサイズであれば2種類まで入れる事が出来ます。試練の迷宮をクリア出来る方達であればMPの心配は無いと思います」

 MPの心配? まぁ、何にせよ、要らないです。これが収納できるアイテムのサイズが大きいタイプなら嬉しかったんだけどなぁ。


【鉄のナイフ】

【鉄で作られたナイフ。剥ぎ取りなどによく使われる、そこそこ頑丈なナイフ】


「次が剥ぎ取り用のナイフです。魔獣から素材や魔石の剥ぎ取りに使って下さい」

 今更、要らないです。フルールに頼めば、もっといいナイフを作って貰えるだろうし、ホント、要らないです。ま、後でインゴットにでも作り直すかな。


【皮の水筒】

【ウエイストズースの皮と胃袋から作られた水筒】


「次が水袋です。これを持っていれば当冒険者ギルドにて一日一回だけ、水を支給します」

 あ、あの肉か。この荒野にいる魔獣だよな。今度、倒しに行ってみよう。って、胃を使ってるのか。うーん、胃とか使って大丈夫なのか? まあ、どちらにしても、これも要らないよな。だって、俺、水に困らないし。


「水が貰えるのはありがたいわね」

 魔法使いのお姉さんは嬉しそうだ。ま、荒野と砂漠だもんね、水は貴重か。


「では、次に当冒険者ギルドについて説明します」

 あ、はい。にしても、これは長くなりそうだ。

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