表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
364/999

5-60  ループの先

―1―


 さて、どうしようか。

「最初の部屋……よね?」

 魔法使いのお姉さんが杖をくるくると回している。うん、確かにどう見ても最初の部屋だよね。


 さて、ホント、どうしようか。

「なら、こっちじゃね?」

 侍さんがもう一つの扉を指差す。そりゃまぁ、右を進んで左から出てきたのなら、残りの扉に行くのがセオリーだよな。

 でも、どうなんだろう。


『もう一度、右の扉に進んでも良いか?』

 えーっと、もう一度、確認したいんだよね。


「ええー!」

 魔法使いのお姉さんが大きく叫び、不満そうに頬を膨らます。いや、それなら、あなたは他のルートを進んでもいいんだよ、俺が勝手に調べたいだけだからさ。


 俺は2人を無視して最初から開いている扉――右の道へ進む。

「ちょっと待ってよー」

「わし、1人にしないで欲しい」

 2人が慌てて俺の後をついてくる。ちょっと、床に線を引いておくか。真紅妃で床に傷を付け、線を引く。迷宮だから、出来るかなっと思ったけど、普通に線が引けるね。これ、普通の迷宮なら出来ないけど、ここなら壁を壊すことが出来るんじゃないか? ま、いよいよとなったらやってみるか。


 右の道を進んでいく。先程とまったく同じ無数の分かれ道がある道を進むと、またも魔獣が現れた。今度は……、お、ゴブリンだ。ちょっと壊れた鎧に錆びた剣を持ったゴブリン。油断したらやばそうな感じだね。


「わし、頑張る」

 侍さんがシャムシールを斜めに、滑らせるように、駆ける。そのまま上へと斬り上げるとゴブリンは防ごうとした錆びた武器ごと真っ二つになった。そして、そのまま消滅する。うーん、この侍さん、結構強いよね。


 しばらく進むとまたも扉がある。今度は最初から開いているな。で、扉の先は――予想通り広間か。しかも、俺が引いた線もそのままっと。


「えー、ここさっきの部屋じゃない!」

 魔法使いのお姉さんが叫ぶ。うーん、これ、完全にループしているよな。




―2―


 にしても2層目は、こんな感じかぁ。俺はもっと普通に迷宮を攻略するのかと思ったんだけどさ、予想と違う感じだ。

 でもさ、迷宮都市が冒険者としてやっていけるかを確認する試験に使っている迷宮ってことなんだからさ、これにも何か意図があるんだろうな。


「わし、無理ー」

「私もー」

 2人が座り込む。


 じゃ、ちょっと、そこで座って待っててくださいな。


 俺は2人を残し、全力で駆け出す。もう一度右の扉を抜け、走る。現れた魔獣は――蟻か。ワーカーアント?


――[アイスウェポン]――


 真銀の槍が氷に覆われる。蟻の横を駆け抜け、駆け抜け様に斬り裂く。そして、そのまま走って行く。

 現れるのはまたも開いたままの扉。そして、その先は広間になっており、侍と魔法使いのお姉さんが座り込んで休んでいた。


 やはりループしているのか。


 もう一度、右の扉から入り、今度は最初の分かれ道を曲がってみる。すると、すぐに巨大なネズミのような魔獣が現れた。


――[ウォーターカッター]――


 現れたネズミを高圧縮した水で切断し、そのまま進むと見慣れた開いたままの扉に行き着いた。扉の先の広間には座り込んだ2人が居た。うん、なるほど。


 これはアレだね。正解ルートを通ると次の分岐が現れ、失敗ルートに入ると魔獣が現れてスタート地点に戻る、そんな感じか。


 って、ことは正解ルートは右の最後の分岐前ってコトだな。そこからさらに分岐があれば一個一個確認していくしかないか。


『この階層の仕組みが分かった』

 俺は座り込んだ2人に説明する。

「えー、本当に?」

 まぁ、本当かと言われたら多分、そうじゃないかなーとしか言えないけどさ。

「わしは信じるよ」

 侍さんが立ち上がる。

「ちょ、ちょっと、私を置いていく気?」

 いや、パーティメンバーってワケでも無いし、置いて行くも何も……。


「魔法使いは冒険者では貴重なんだからね! もっと私を敬って欲しいわ」

 魔法使いのお姉さんはそんなことを言いながら三角帽子を表情が見えないくらい、深く押さえ込む。ふーん、魔法使いって貴重なんだ。でもさ、

『魔法なら自分も使えるが……』

 俺の天啓に2人が驚く。あれ? そう言えば森人族の方々を除いたら戦闘に魔法を使ってる人たちって余り見ないな。蟻の時に一緒だったクレアくらいか?


「いやいや、喋る芋虫も驚きだけど、魔法が使えるってどうなってるの!」

 あれ? 使ってるの見せてなかったか? 仕方ないなぁ、じゃあ、一個魔法を使ってあげるよ。


――[クリーン]――

――[クリーン]――


 クリーンの魔法を使い2人を綺麗にしてあげる。

「あら、生活系の魔法じゃない。なによ、びっくりした。ホント、飼いたいくらいに優秀ね」

 いや、あのね、飼うとか勘弁して下さい。


 とりあえず進むか。右の扉の先へ進み、最後の分かれ道を右に進む。するとまた分かれ道が現れた。直進と右か。今回は右に行くかな。


 3人で、分かれ道を右に進むとすぐに扉が現れた。あら、今回は閉まってるんだな。

「またぁ?」

 魔法使いのお姉さんがうんざりしたように嫌そうな声を上げる。

 俺が扉を開けると、そこは最初の部屋だった。左と右に開かれた扉が見える。左側には俺が付けたであろう傷が床に残っていた。って、もしかして、あの閉められていた扉から出てきたのか。そう言えば、結局、そっちは開けてなかったもんな。


 俺たちがため息を吐きながら部屋の中へと入ると、中央の床が割れ、下り階段が現れた。へ? 何だ、そのギミック。


 と、とにかく、これで、この階層はクリアってコトだよね。


 じゃ、次はついに最下層か。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ