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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
363/999

5-59  ループした

―1―


 目の前の熊が腕を叩き、こちらを威嚇している。うーん、近寄りたくない。って、ことで今、俺が使える最強の攻撃魔法でやっちゃいますか!


 熊が咆哮を上げる。


――[アイスストーム]――


 こちらへと突っ込もうとしていた大きな熊が氷と風の嵐に包まれる。


 氷の嵐が収まると、そこにはズタボロになった熊が居た。熊が右腕を持ち上げたまま、崩れ落ち、そのまま消滅した。

 へ? アレ? これで終わり? もっとこう、ここから変身するとか無いんですか?


 熊を倒した瞬間、またも軽い目眩に襲われる。


 そして気付いたら石造りの広間に居た。何だ? さっきのは幻覚だったのか?


 石造りの広間には他の冒険者たちの姿が見える。お、さっきの侍さんや魔法使いのお姉さんの姿も見える。全員、気絶しているのか、倒れ込んでいるね。


 じゃ、彼らが起きるまで待ちますか。MPにダメージってことだから、回復魔法は無駄だろうしね。


 しばらく待っていると、2人が目を覚ましたようだった。これは迷宮に入った順番なんだろうかな?


「ううーん、ここどこぉ?」

 魔法使いのお姉さんが三角帽子をかぶり直しながら、杖を片手に起き上がる。


「わし、もう無理」

 侍の人もよろよろと立ち上がる。


 で、どうするの? 今からみんなで殺し合って下さいって展開じゃないだろうし、うーん。


「あ、芋虫ちゃんも居る」

『ランだ』

 芋虫ちゃんではない、ランだ。


「ここはどこだろう?」

 侍の人はキョロキョロと辺りを見回している。


 ケーキのような円形の広間に扉が三つ、か。これ別々に分かれて進めって展開なのか、それとも協力して一つの扉を攻略していけということなのか……うーむ。


『自分も分からぬ。森の熊を倒したらここに居たのだ』

「森? 熊?」

 2人ともが不思議そうな顔でこちらを見ている。


「わしは岩の――あれはわしが侍になった時に寄ったフウキョウの里の近くの小迷宮に似ていた」

「私は魔法学校の実習で行った遺跡にそっくりだったわ」

 ん? んん?


『出てきた魔獣は何だったんだろうか? 自分はスライム、ジャイアントクロウラー、トレント、大きな熊という感じだったのだが』

「わしはホーンドラット、パープルドラゴン、ミーティアラット、見たこともない鎌を持った骨だった」

 そこで魔法使いのお姉さんが大きい声を上げる。

「え、パープルドラゴンって、あの?」

 お姉さんの言葉に侍が頷く。

「よく勝てたわね」

「うむ。わしも死を覚悟した。わしが今まであった中で一番強く、二度と会いたくない魔獣だからな。しかし、一撃斬り付けたら、簡単に消えてしまった」

 ふーん。

「私は猪にダアトスライム、それとグニャグニャしたのに、ゴーレムぽいの」

 うわ、すっごい適当。この魔法使いのお姉さん、余り考えないタイプなのかもしれない。

「特にダアトスライムは遺跡で、先生も一緒で、それでも犠牲を出しながら何とか倒した魔獣だったから、どうしようかと思ったわ。もうね、そこでMPが尽きるくらい魔法をぶち込みかけたのよ」

 魔法使いのお姉さんが三角帽子を深くかぶり顔を隠している。ふむ。やはり、全然違うんだな。


「で、どうするの?」

 どうするのって目の前の3つの扉から選んで進むしかないんじゃないですかね。

『進むしかなかろう』

「じゃ、私は芋虫ちゃんに着いていくわ」

 え? な、なんでついてくるんですかね。

「じゃ、わしも」

 え? 侍の人も? こう、こんな所に居られるか、俺は勝手に進むとか、言い出さないんですね。意外です。


「わし、1人、もう無理」

 この侍、駄目だ。




―2―


 とりあえず右側の道を進んでみる。扉を開けると、そこは――やはり石造りの通路だった。不思議と明るいけどさ、閉塞感があるなぁ。これだけ明るいならライトは必要無いな。明るい? あれ? そう言えば羽猫が居ないぞ? そうだよ、さっきの森でも居なかったじゃん。はぐれたのか? うーん、大丈夫だろうか。


 通路を進むとすぐに右への分かれ道が現れた。その先にも左への道や右への道が見える。うーん、どうしよう。まずはまっすぐ進むか。まっすぐなら元の場所に戻るのも簡単だしね。


 進めば進むほど、多くの分かれ道が現れる。うーん、広いな。と、そこで俺は足を止めた。目の前から魔獣が来る。

「お、おい、芋虫さんよ、どうした」

『魔獣が来る!』

 俺の天啓に2人が武器を構え戦闘態勢に入る。


 現れたのは巨大な蜘蛛、タイラントスパイダーだった。これは、初心者向けとしては強すぎないですかね。


「わしが行く!」

 侍の人が駆け、巨大蜘蛛の足下に滑り込み、手に持ったシャムシールで、その足を切断する。ん?

「私が命じる、全てを燃やす紫の火よ、鋭い針となって敵を穿て、ファイアニードル!」

 魔法使いのお姉さんから3本の紫の炎矢が飛び、巨大蜘蛛を貫く。その攻撃によって巨大蜘蛛は消滅した。ん? んん?


 えーっと、弱すぎないか? 俺、タイラントスパイダーと戦ったことがあるけどさ、生半可な武器では攻撃が通らないくらいに足は硬かったと思うし、魔法一発で倒せるような魔獣じゃなかったと思うんだけどなぁ。ま、まぁ、いっか。気にしたら負けだよね。この迷宮用にカスタマイズされた魔獣なのかもしれないしね。


 さらに進むと扉が見えてきた。罠も見えない普通の扉だったので、そのまま開ける。すると、そこは――最初の部屋だった。うん?


 向こうに見えるのは開かれた扉だよな? 右から進んで、左から出てきた?


 んんん? どうなっているんだ?

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