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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
358/999

5-54  剣聖と会話

―1―


――[アクアポンド]――


 家の裏になるべく深めの池を作る。これで飲み水は大丈夫かなぁ。


「マスター、お客様なのです」

 うお、びっくりした。14型さん、急に後ろから声をかけるのは勘弁して下さい。お客様って、えーっと、ああ、キョウのおっちゃんか。


 じゃ、戻りますか。


 14型の案内で食堂へ行くとキョウのおっちゃんが他のお客と離れ、1人飯を食べていた。

「おー、ランの旦那だぜ」

 キョウのおっちゃんがこちらに気付き手を振る。おー、キョウのおっちゃんなんだぜ。


「ランさん、朝飯まだだったよな。作っておいたよ」

 ポンさんが俺の特等席にご飯を並べてくれる。今日は茶色い葉っぱを揚げた物と焼いた肉に謎ソースを掛けた物か。朝から肉か、肉ねぇ。ホント、食材に困っているんだな。

 俺が特等席へと歩いているとキョウのおっちゃんもついて来た。


「ランの旦那、飯を食いながらでいいから聞いて欲しいんだぜ」


 もしゃもしゃ。はい、了解であります。


「この間、ナリンから帝城に使者が来たらしいんだぜ。すげぇ褒められて驚いたらしいんだぜ」

 へー。そうなんだ。って、あー、そっか、赤竜討伐か。そんなこともあったね。

「それで登録されている貴族の指輪を調べたら今は使われていないってことで帝城は慌てたらしいんだぜ」

 そこでキョウのおっちゃんがため息を吐く。

「いや、悪いのは俺なんだけどよ、旦那は予想外過ぎるんだぜ」

 あ、何かすいません。

「まぁ、それでアレだぜ。ランの旦那、ゼンラ帝が指輪の主に興味を持って召喚がかかってるんだぜ」

 へ? 何で?

「それで、その指輪の主を探してこいって命令が俺に下りて来たって訳なんだぜ」

 あー、そうなんだ。キョウのおっちゃん、今回も使いっ走りで大変だね。ま、でもさ、今回は最初から行方が分かっているから楽だよね。

「で、ランの旦那、どうするんだぜ?」

 面倒なのでお断りです。いやいや、だってさ、国のトップと会って、何をすればいいのか分からないじゃん。もうね、無理です。


『すまないが……』

 俺の言葉をキョウのおっちゃんが手で止める。

「ああ、分かっているんだぜ。ランの旦那ならそう言うと思ったんだぜ。まぁ、後は俺の方で上手くやっておくんだぜ」

 すまないねぇ。


 キョウのおっちゃんが手を振ってる。

「ま、ランの旦那は好きにやってるのが一番なんだぜ」

 あ、はい。で、でもですよ、俺、そこまで好きにやってるつもりは無いんだけどな。一応、周りの意見は聞いてるじゃん。あ、そう言えば……。


『キョウ殿、これを』

 俺はテーブルの上に壊れた隷属の腕輪と穴の開いた木彫り人形を置く。

「ランの旦那、こいつは!」

『魔人族と魔族が残した物だ』

「馬鹿な貴族のせいで帝都から盗まれた隷属の腕輪……、それに魔族人形だと! ランの旦那、助かるんだぜ」

 ああ、持っていってください。俺が持っていても仕方ないからね。

「ランの旦那には返しきれないくらい恩が溜まっていくんだぜ」

 いや、まぁ、何だ。キョウのおっちゃんには色々と助けて貰ってるしな。


 あ、そうだ、ジョアンのことも伝えておくか。

『剣聖の孫、ジョアンが神国の姫の騎士になると離れた』

 俺の天啓にキョウのおっちゃんが驚き、テーブルに拳を叩き付ける。ちょ、周囲のお客さんが驚いているじゃん。どったの?

「あの小僧! 何てことをするんだぜ!」

 あ、やっぱり不味かったのか?

「不味い、不味いんだぜ。帝国と神国は敵対しているんだぜ。その帝国のお偉いさんの孫が敵国に仕官するなんて前代未聞なんだぜ!」

 ジョアン、余り考えてない感じだったもんなぁ。まぁ、でもさ、

『キョウ殿、帝国と神国の架け橋が出来たと思えば』

 俺の天啓にキョウのおっちゃんが腕を組み考え込む。


「わーったぜ。そっちはランの旦那に任せるんだぜ。こっちはこっちで俺が何とかするんだぜ」

 了解なんだぜ。まぁ、でもさ、これで二つの国が仲良しになったらいいよね。


 そして、キョウのおっちゃんはそのまま帰っていった。

「あ、ランさん、さっきの人、お代が……」

『すまない、ポン殿、キョウ殿は永久無料で頼む』

 俺の天啓にポンさんが頭を掻いている。ま、そんな毎日食べに来るわけじゃ無いし、いいよね。




―2―


――[ハイスピード]――


 風の衣を纏い、帝都を駆け抜けていく。この後、迷宮都市も見て回るつもりだからね。急がないと。


 ほどなく西と東を隔てている壁に到着する。俺は胸元につり下げている指輪を見せ、東側に入る。

 さあ、剣聖様のトコロに行ってきますか。ま、すでにジョアン自身が話しているだろうし、余計なお世話かもしれないけどさ。


 家の場所は分かっているからね。しゅたたたっっと。


 すぐに塀に囲まれた豪邸を発見。ホント、いい家に住んでいるよな。さあ、行きますか。


――《飛翔》――


 《飛翔》スキルを使い塀の上に上がる。しゅたっとな。こっちは裏庭だね。中々の広さに池と背の低い木が見える。そして庭のベンチに座ったメイドさん。この世界だとメイドは神国の格好だったよな? 何で帝都のお偉いさんである剣聖様のメイドが神国風の格好をしているんだろうな。

 そしてその座ったメイドさんの膝に頭を乗せて耳かきをして貰っているのが剣聖のお爺ちゃんだね。ホント、いい身分だよなぁ。


 さてと。じゃ、お邪魔しますか。


 塀から裏庭へ飛び降りる。


――《浮遊》――


 《浮遊》スキルを使い着地する。


 じゃ、剣聖のお爺ちゃんに挨拶しますかね。


「ふむ、今回は最初の時と同じ格好じゃな」

 剣聖のお爺ちゃんが片眼を開きこちらを見る。膝枕状態で格好付けても締まらないからね。

 剣聖のお爺ちゃんが喋ったことで、メイドさんがこちらに気付き、驚き立ち上がろうとする。それをお爺ちゃんがお尻をなでて止める。

「あれは知ってる魔獣じゃから、驚かんで良い」

 俺はお爺ちゃんのナチュラルな行動にびっくりするよ。


『あなたの孫のジョアンのことだが、よろしいか』

 俺の天啓を受け、剣聖のお爺ちゃんが起き上がる。

「そ、それでは私は着替えてきます」

 メイドさんが慌てたように屋敷の中へと消えていく。剣聖のお爺ちゃんが手を振っている。ああ、驚かせてすいません。


「孫がどうしたのかな?」

『知っているかもしれないが、ジョアンが神国のお姫さまに仕えることを決めた』

 お爺ちゃんが頭を掻いている。

「ふむ。なぜ、それを伝えに来たのかのう」

 いや、何故ってなんとなくだけど。キョウのおっちゃんに伝えた流れで、そのまま伝えた方がいいかなぁって思いついただけなんだけどさ。


「孫を斬らねばならんか……」

 へ? いやいやいや、なんでそうなるんだよ。

『その時は、自分が防ごう』

 俺の天啓にお爺ちゃんが大きな声を上げて笑う。


「ほうほう、それは頼もしい。孫を守ってやってくれ」

 言われなくてもだよ。


『自分の用件はそれだけだ。では』

 じゃ、これで帝都の用事は済んだし、迷宮都市に行きますか!


――《転移》――


 剣聖のお爺ちゃんの裏庭から迷宮都市まで《転移》する。まぁ、あのお爺ちゃんなら、俺がいきなり空高く飛んでいっても驚きはしないだろう。

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