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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
357/999

5-53  お水ですね

―1―


『どういうことだ?』

 俺の天啓を受けユエがさらに喋ろうとする。しかし、それをポンさんが止める。

「まあまあ、まずは飯を、よ」

 そうだよ。ご飯だよ!


 本日は何かの肉の揚げた物と小麦粉を溶いて焼いた物だね。さあ、食べよう。


 もしゃもしゃ。


 もしゃもしゃ。


「ランさんはよ、そんな姿なのに美味しそうに食べてくれるよな」

 もしゃもしゃ。あ、そう? まぁ、でもさ、悪いけど、美味しいかって聞かれたら、不味くないよ、普通だよって感じなんだよね。何だろう、ホッとする味って感じだよね。


 もしゃもしゃ。


「と、ところで、ら、ランさまお話を続けてもよろしいですか……?」

 ユエが、恐る恐ると言った感じでこちらへ話しかけてくる。あ、ごめんね、無視してないからね。


『どういうことだ?』

 改めて聞いてみる。

「ここが大きくなりすぎたため、商業ギルドに商会としての参加が求められているのです……」

 よーわからんけど、ギルドに従えって事かなぁ。面倒そうだから、ユエさん頼みます。

『ユエ、頼む』

「はい、頼まれました……じゃなくて!」

 ユエが尻尾を立てて手をぐるぐると振り回している。えーっと、そういう話しじゃないの?

「任されるのはいいんです! でも商業ギルドの登録には、ここの、この場所の名前が必要なんです!」

 へー、そうなんだ。

「それと私の負担が大きくなってきたので会計の子を雇いたいです……」

 あー、それはいいんじゃないかな。


「マスター、お水です」

 14型が俺の横から水を飲ませてくれる。おー、ありがとう。って、14型! いつの間に!


「名前ならラン様の名前をとって、ランとフルールのデラックス鍛冶工房で良いですわぁ」

 いや、駄目だろ。俺の名前をとってって、それになんでお前の名前が付け加わっているんだよ。それに何で、鍛冶工房なんだよッ!


 はいはい、フルールは黙ってようね。

「マスター、それならば、超カッコイイマスターと有能なメイドの部屋なんて名前が良いと思うのです」

 いや、お前ね。ホント、このポンコツ、センスがフルールと同じじゃねぇかよ。


「じゃあよ、ランさんの食べれる食堂とかよ、どうよ」

 ポンさんも同じセンスじゃねぇかよ。ここにはまともなセンスを持った人間が居ないのか! にしても、ここって鍛冶工房でもあり、食堂でもあるんだよな。


 うーん、でもさ、俺も似たようなセンスなんだよな……。例えばランのアトリエとか、いや、駄目だ。俺の名前が付いていることがまず堪えられない。恥ずかしすぎる。俺の名前が付いていない方向で決めなくては……。


『ユエ、期限は何時までだ?』

 ユエが指を3つあげる。お、肉球だ。って、3日か。余り考えている時間はないなぁ。

「3期間です……」

 ? 3期間ってどれくらい?


「マスター、お任せ下さい。学習能力の無いマスターの為に14型が調べたのです。192日なのです」

 え? え? えーっと、ユエさん? 全然、急ぎじゃないじゃん!


『よし、では次の、ポン殿の話を聞こうか』

 ユエがえーって顔でこちらを見ている。

『わかった、わかった。ユエ、名前は考えておく』

「頼みます。早い方が、こちらも色々と動き易く、手広く商売が出来るようになります……」

 考えると言ったけど、今じゃないんだぜー。


「じゃ、次は俺よ」

 はい、ポンさん、何でしょう。


「マスター、お水です」

 いや、14型さん、このタイミングでお水は要らないからね。いや、あの、無理矢理飲ませようとしないで、しないでー。


「ここを酒場として夜も営業して欲しいって意見が多いんだがよ」

『却下で』

「は、はやいです……」

 いや、だってさ、何故かお店や食堂になってるけどさ、みんな忘れているのかもしれないけどさ、ここ、俺の家なんだぜ? 酒場にして騒がれるとか勘弁ですよ。


「わかったよ。それとランさんに断りなく人を入れた、すまない」

 ポンさんが頭を下げる。いや、1人で食堂を切り盛りするとか無理だから、それは仕方ないんじゃね?

『いや、人は必要だろう。変な人間でなければ構わない』

「そう言って貰えると助かるよ」

 ま、ポンさんを無理矢理誘ったのは俺だからね。


「それで、ランさんに頼みがあるんだがよ。帝国は食材の質が悪い」

 そこでユエさんがガタッと音を立てて席を立つ。

「帝国の悪口はいけません……。何処で貴族連中に聞かれるか」

「いや、本当のことだろうがよ。土が悪いんだよ。だから、栄養が無くて、揚げるとかそういう手間を加えないと食えないんだよ。そうした栄養の無い不味い植物を食べてるから肉も不味い。俺は威張れるほど料理は上手くねえよ。でも、食えるようにするのは得意なんだよ。それでも限界があるぜ」

 なるほど。帝国の食文化ってちょっと酷いな、と思っていたけど、そういう事情があったのかな。

「で、ランさんよ。もし、何処かに知り合いがいるなら、食材の流通を頼みたいのよ」

 流通? 何処か他の国と交易して食材を増やして欲しいってことかな。いや、それ、俺に頼むようなことか? ちょっと個人の枠を超えてるよ。う、うーむ。


『わかった。考えておく』

 考えるだけは考えておくよ!


 これで一通り意見は聞いたかな?


「マスター、お水です」

 いや、14型さん、お水は要らないからね。いや、だから、無理矢理飲ませようとするんじゃねえよ。お前、何だ、それ。もしかして、俺に水を飲ませるの気に入ったのか? 止めろよ、ホント、止めろよ。


『14型、水はもういい』

 だから、なんで、そこで、えって感じで驚いた顔をするんだよ。

「帝都では綺麗な水は贅沢だと聞いたのです。要らないのですか?」

 要りません。何処で得た知識だよ。それに水なら、俺がアクアポンドで……って、もしかして水って売れるのか?


『ポン殿、水ならすぐにでも提供出来る』

「本当かい! それだけでも料理の味が変わるよ。助かるぜ」

 じゃ、後で家の裏にでもアクアポンドの魔法を使って池でも作っておきますかね。俺が戻る度に作り直せば水は綺麗になるでしょ。うんうん。


 さあ、じゃあ、今日はもう寝ますかね。はぁ、でも、久しぶりに家に帰ってきたって感じだなぁ。

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