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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
355/999

5-51  お断りです

―1―


 さあて、何はともあれ、冒険者ギルドだよね。


 石壁によって別けられた道を歩いて行く。道幅は結構広いね。竜馬車の仲間みたいなのを引っ張っている商人風の人も見える。ほー、何処と交易しているのかな? 砂漠を渡るのは大変だよね、それを行ってでも得られる物があるってことなのかなぁ。


 結構、人が居るな。猿みたいな獣人や猫人族、それに蜥蜴人か。帝都で見かけた羽の生えた人は見かけないな。帝都ではオークやゴブリンも見たんだけど、こっちには居ない――神国が近いから居ないのか?


 左の道を少し進むとさらに分かれ道が現れた。左は、と。あー、謎の植物が植えられた見るからに畑ぽいモノが――うむ、あちらではないな。にしても畑かぁ。城壁の外は荒れ果てた荒野なのに、中は水も流れて緑もあって、さらに畑か……。中と外で天国と地獄って感じだな。


 じゃ、普通に右の道を進みますか。


 辺りをキョロキョロと見回しながら歩いていると大きな白い建物が見えてきた。お、アレが、この迷宮都市の冒険者ギルドだね。帝都の冒険者ギルドも大きかったが、この迷宮都市も大きいな。外から見ると4階建てって感じかな。


 さあ、頑張るぞー。にしても1人って久しぶりだなぁ。14型も居ない、1人って凄い久しぶりだよね。スイロウの里で頑張ってた頃を思い出すよ。


「にゃあ」

 俺が物思いにふけっていると頭の上の羽猫が自分も居るぞとでもアピールするかのように鳴く。あー、はいはい、お前が居たね。でも、お前ってば頭数に入っていないからなぁ。ペット枠だよね。


 さ、冒険者ギルドに入りますかね。




―2―


「お帰りなさいませ、リ・カイン冒険者ギルドへ!」

 冒険者ギルドに入るとすぐに大きな声の挨拶が飛んで来た。うお、お帰りなさいって、俺、初めて来たんだけどなぁ。

 奥には帝都と同じようカウンターと複数の窓口が見える。挨拶をしてきたのは手前側にいる猫人族のお姉さんかな? 笑顔がさわやかだね。

「リ・カイン冒険者ギルドは初めて……って、ひっ!」

 猫人族のお姉さんが尻尾を立てて驚き、こちらを見ている。


『初めてこちらへ来たのだが』

 俺が天啓を飛ばすと猫人族のお姉さんは手で顔を隠し、伏せながら後ずさりし始めた。

「しょ、しょうしょうおまちを……」

 そして、そのままカウンター奥へと走って行った。他の窓口に座っている色々な種族のお姉さん方も俺が視線を向けると顔を逸らしていく。えーっと、俺、何か悪いことしたかなぁ。


『すまぬが……』

 俺が天啓を飛ばすと、皆さん、びくんと体を震わせ、「もうしばらくお待ちください」と機械のように同じ言葉を繰り返していた。えーっと、どうなっているんだ、これ。


 何を聞いても答えてくれないので、仕方なく、そのまま待つことにする。


 冒険者ギルドの入り口でしばらく待っていると、冒険者の集団がやって来た。おー、一仕事終えて戻ってきたのかな? 使い古した皮の鎧に剣や槍、杖を持った人も見えるね。杖の人は魔法使いぽい。そう言えば帝都だと魔法使いを余り見なかったけど、こっちでは普通に居るんだね。神国が近いからなのかな?


「お、おい、ギルドの中に魔獣が居るぞ!」

「知ってますよ、アレ、ジャイアントクロウラーですよ。西の方の森とかに良く居るって聞いたことがあります」

「お前、物知りだなぁ」


 何やら冒険者の集団が騒がしい。普通に中へ入ってくればいいのにさ。冒険者の集団はしばらく騒いだ後、満足したのか、冒険者ギルドの中へと入ってくる。そして俺を視界に入れないよう遠回りしてカウンターへと向かっていった。む、俺が魔獣ぽいからって、そこまで大げさに避けなくてもいいと思うんだけどな。


 さらに入り口でぼーっと待っていると、最初に挨拶をしてきた猫人族のお姉さんがカウンター奥から戻り、ゆっくりとこちらへと歩いてきた。


「ランさまで……お間違いないですよね?」

 先程のさわやかな笑顔が嘘のように引きつっている。いやいや、何故に疑問系?

『ああ、Dランク冒険者のランだ』

 俺の天啓を受け、猫人族のお姉さんの尻尾がぴーんと大きく立ち上がる。尻尾に神経でも通っているのかな? にしても俺の情報がこの冒険者ギルドにも届いているんだな。ギルド間ってどうやって情報を共有しているんだろう。


「間違いが無くて良かったです」

 猫人族のお姉さんが大きく息を吐き、そしてこちらを見る。お、キリッとして見えるね。

「いらっしゃいませ、ラン様。リ・カイン冒険者ギルドへの本日のご用件をお伺いしてもよろしいですか?」




―3―


 用件ねぇ。別に何か大きな目的があるわけじゃないんだが……。あ、そうだ!

『八大迷宮の一つがここにあると聞いた。挑戦したいのだが、情報を貰えないだろうか?』

 俺の天啓に猫人族のお姉さんが首を横に振る。

「申し訳ありません。迷宮都市にある八大迷宮『名も無き王の墳墓』への挑戦および情報の公開はCランク以上の冒険者に限定させて貰っています」

 え? ランク制限があるの? マジで?

「実力が伴わない方が挑戦し、命を落とさないようにするための処置になります。ご了承ください」

 そ、そうか。というか、そんなにも難易度が高いの? こう見えても、俺ってば八大迷宮は3つ攻略しているんだぜ!

 ま、ルールを破れと騒いでも迷惑を掛けるだけだろうし、素直にクエストを受けてGPを溜めてランクを上げますか……とほほ。


『ならば何かクエストを受けたいのだが』

 俺の天啓に猫人族のお姉さんがまたも首を横に振る。

「申し訳ありません。小迷宮『試練の迷宮』を攻略していない方にクエストをお出しすることは出来ません」

 え? 何それ。ここってばそういうルールがあるの?


『ならば、その試練の迷宮に挑戦したいのだが』

 俺の天啓に猫人族のお姉さんが首を横に振る。もうね、首を横に振りすぎてもげちゃうんじゃ無いかって勢いだよ!

「申し訳ありません。本日は時間も時間の為、受け付けは終了しております」

 受付にも時間があるのかよ! う、うーん、ま、まぁ、確かにもう夜になろうかって時間だもんな。仕方ないか。


『では、明日来させて貰う』

 俺の天啓に猫人族のお姉さんが首を横に振る。えー、駄目なの?

「申し訳ありません。『試練の迷宮』の受け付けは、最短で明後日になります」

 ああ、良かった。お断りされるわけじゃ無いんだね。にしても明後日かぁ。一日空くんだね。仕方ない、我が家に戻ってのんびり熟練度上げでもしようかな。あ、この迷宮都市を見て回るのもいいね。うん、そうだ、そうしよう。


『わかった。では、また日を改めて来るとしよう』

 俺の天啓を受け、受付のお姉さんがお辞儀をする。はぁ、このままだと、冒険者ギルドで何も出来ないな。仕方ない、帰りますか。


「リ・カイン冒険者ギルドのご利用ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」


 はーい、また来ます。


 俺が冒険者ギルドを出ると、後ろで大きく息を吐く音が聞こえた。


 さあて、まずは転移のチェックが出来る場所を探しますかねー。

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