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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
350/999

5ー46  戦いの後に

―1―


 空から戦斧が降ってくる。落ちてきた戦斧はそのまま砂地へと刺さった。俺はそれを赤い瞳で見つめる。


【ラビリス】

【迷宮を制覇する意志を名付けられた斧。空間を切断する能力を持つ】


 何だコレ? と相変わらず説明文が言語不自由系だねぇ。にしても空間切断か……。次元を断ち切る感じの技が使えるんだろうか。

 ま、何にせよ、これが今回の戦利品か。頑張って戦ったんだからね、何か報酬がないとやってられないもんね。ありがたくゲットしておきますか。

 俺が戦斧に手を触れようとすると空間が裂け、その中へ戦斧が消えた。へ? あれ? ええー! お、俺の戦利品が、消えた。


「ランなのじゃな? 姿が変わったがランなのじゃな?」

 姫さまがこちらへと走ってくる。そうなのじゃ、ランなのじゃ。


「ああ。《変身》スキルによって姿が変わっているが俺だ」

「おおう、ラン、何やら言葉遣いまで変わっているようなのじゃ」

 そう? 普段から、こんな感じだと思ったけどなぁ。俺は姫さまへと振り返り、そして勝手に赤い瞳が輝いた。


【セシリア・レムリアース・アースティア】

【種族:半天竜族】


 あ、姫さまの名前を勝手に読んじゃった。姫さまってセシリアって名前なんだ。そう言えば名前を聞いていなかったな。あれ? 種族が半天竜族? もしかして混血ってこと? 神国って確か普人族至上主義で、それ以外はころころしちゃうような国って聞いていたんだけどな。そのトップに連なる子が混血なの? それって有りなの?


「む。ラン、その顔はわらわの秘密に気付いたのじゃな」

 あ、勝手に鑑定しちゃってすいません。にしても秘密だったんだ。混血だから国で疎まれているとか、そんな感じなのかなぁ。

「姫さまは、混血なのか?」

 俺の言葉に姫さまが頷く。

『うむ、そうなのじゃ。それは王家の秘密なのじゃ。黙っていて貰えると嬉しいのじゃ』

 うお、脳に直接言葉が。俺の天啓とか念話と同じ感じだね。いきなりだとびっくりするなぁ。

「わかったよ」

 俺の言葉に姫さまがうんうんと満足そうに何度も頷く。

「にしても、ランのその姿には驚きなのじゃ。その姿ならわらわの国でも問題なさそうなのじゃ」

 あ、そう? でも俺が神国に行く予定はないからなぁ。

「ラン、もし神国に来ることがあれば、わらわが案内するのじゃー。ランは友達だからのぅ」

 ああ、そうだね。友達だもんな!




―2―


 とりあえず寝転がっているジョアン、赤騎士、青騎士の3人を回収する。


――[エルヒールレイン]――


 俺を含めた全員に癒やしの雨を降らす。傷を治さないとね!


 離れた所にあるエンヴィーの死体に目を向ける。にしても、これで終わりか。何だろうなぁ、エンヴィーの情報を得て、復讐するために迷宮都市へ向かっていたのにさ、その途中で目的を果たしてしまった。しかも、あっさりとね。苦しんで、苦しんで、苦しみ抜けって思っていたはずなのになぁ。

 迷宮都市に向かう目的は消えたけどさ、何か特別な目的があるワケでも無し、このまま迷宮都市にあるっていう、八大迷宮を攻略しますか。


 今は夜で、この遺跡の周囲は氷で覆われているから、朝になったら当初の予定通り、迷宮都市へ出発だね。と、俺がそんなことを考えていると羽猫がこちらへと駆けてきた。おー、お前も無事だったか。

「にゃあ!」


――《ライト》――


 羽猫が光り輝く。お、おう、これで明るくなったな。

「おおぅ、お前も無事だったのじゃな」

 姫さまが羽猫を抱え上げる。

「にゃあ」

「そうか、そうか。しかし、ちょっと眩しいのじゃ」

 会話が成り立っている……のか?


 そこで、《変身》スキルの効果が切れ、俺の体が光に包まれ、元の芋虫の姿に戻った。いや、だからさ、なんで、戻る時は一瞬なんだよ。おかしいよね、これって絶対におかしいよね。ブラックプリズムと戦った時にさ、《変身》スキルの効果が出るまで待って貰ったみたいだけどさ、その時に攻撃されていたら危なかったんじゃないか? 戻るのが一瞬なら変身するのも一瞬でいいじゃん。


「おおぅ、ランが元に戻ったのじゃ。うむ、ランはその姿の方が良いのじゃ」

 あ、はい。まぁ、俺としてもさ、こっちの方がしっくり来るくらい長い間、この姿をやっているからね、もう慣れたよ。


『姫さま、朝まで自分が見張りをしよう。姫さまはゆっくりと休むといい』

「ラン、わかったのじゃ。今日は疲れたのじゃ、ランの言葉に甘えさせて貰うのじゃ」

 姫さまが俺の天啓を受け、何か自分の体に魔法を使い(多分、クリーンの魔法かな?)すぐに寝袋のような物を取り出して、そのままその中へ入った。そして、すぐに寝息が聞こえてきた。はやっ! 寝るの超早い。いや、あの、そんな、俺を信じて無防備にさ、すぐに寝ても大丈夫なのか?


 ……。


 ま、大丈夫か。


 はぁ、終わったなぁ。


 ジョアンたちは冷える砂漠に気絶したままだけどさ、うん、多分、大丈夫だろう。この世界の人たちって何故か無駄に丈夫だしさ!


 砂竜船はブラックプリズムのカタストロフィの魔法から外れたのか、遠くで寝息を立てているな。ま、そりゃそうか。エンヴィーとしても自分の足を殺されたらたまったもんじゃないもんな。ちゃんと範囲外に逃していたって訳か。


 あ、そうだ、せっかくだから俺が壊した隷属の腕輪とブラックプリズムが残した木彫りの人形を回収しておくか。後で帝都に戻った時にキョウのおっちゃんに渡すかな。特に隷属の腕輪は帝国に3つしかない貴重品だってことだからね。帝国のお偉いさんも行方が気になっているだろうからさ。

 にしても隷属の腕輪かぁ。ブラックプリズムの言葉を信じるなら魔族と敵対している神様? みたいな存在が魔族を支配するために作ったんだよな。それが残っていて人を支配するために使われているって感じか。ま、何にせよ、こんなクソみたいな魔道具が沢山残っていないのは良いことだね。


 俺は遠くで眠っている砂竜船を見る。


 うっし、明日は上手くいけば、砂竜船を使って動けるかもしれないな。そうすれば砂漠の移動も楽になるからね。意外とあっさり迷宮都市に着けるかもしれない。


 迷宮都市か。どんなところなんだろうな。

2016年2月9日修正

天竜人 → 天竜族

2016年5月5日修正

友達もんな → 友達だもんな

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