2-28 弓士
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里に戻ってきました。
さすがに大きな木という目印があるのに迷いはしません。
と、里のゴンドラの前まで来ると大きなトカゲが居た。いや正確には大きなトカゲの死骸があった、だね。近くには森人族の人たちが居る。
『これは?』
「うお、誰だ!?」
念話に馴れていない人だと最初は大抵驚かれるね。
『すまない。どうしたのかと?』
「あ……ああ、ちょうど里の戦士達が狩りを終えて戻ってきたところさ。ジャイアントリザードは初めてかい?」
俺は頷く。
「ジャイアントリザードは俊敏な動きを持った大トカゲで、更に凶暴な性質を持っているんだが、肉が非常に美味しいから里では非常に人気があるんだ」
全長、4、5メートルかな。なんというか、この世界って全体的に巨大だよなぁ。
『しかし、これほどのサイズを仕留めるとは……』
「ふふふ、普通に戦えばかなりの強敵さ。でも、こいつらは寒さに弱く冷やしてやれば動きも鈍くなり簡単に狩ることが出来るんだよ」
なるほどー。コレは良いことを聞いた。今度、見かけたら氷魔法で攻撃してみよう。って、今はMPが少ないから難しいか……。
そういえば、森の食用キノコクエストの時に換金所の奥で解体していたのってコレじゃね? あの時はもっと小さかったけど合ってる気がする。
そのうち、上から大きなリフトが降りてくる。森人族の人たちは大きなリフトにジャイアントリザードを乗せる。リフトは上に上がっていく。なるほど、こうなっていたのね。
まぁ、俺はゴンドラで上に上がりましょうか。くるりと回って降りてきたゴンドラに乗って上に。
さあ、族長の家に向かいますか。
―2―
『族長殿、おられるか?』
「おりますぞ」
族長が奥の部屋から出てくる。
『これを』
俺は矢に刺したホーンドラット3匹を渡す。
「確かに、ではこちらへ」
族長は奥の部屋に案内してくれる。さっき族長が出てきた部屋だよね。
奥の部屋には黒い直方体がそびえ立っていた。って、コレ、スキルモノリスじゃないかッ!
さっそく鑑定してみる。
【クラスモノリス(弓士):基本クラスの弓士を取得出来る】
「さあ、それに触れてください」
あ、やっぱりそうなのね。なんだろう、思っていたのと違うというか……技術を得て取得って感じではないんだね。これ、試験の必要があったのか?
俺はクラスモノリスに触れる。
モノリスに文字が浮かび上がる。
【基本クラスの弓士を取得しますか? Y/N】
もちろんイエスで。
【弓士を取得しました。内容はステータスプレートをご確認ください】
ステータスプレートを見るとクラスの項目に弓士って記入されていた。
クラス:弓士LV1
クラスEXP 0/8000
クラススキル:弓技LV0(0/100) 集中LV0(0/20) 遠視LV0(0/20) 早弓LV0(0/40)
予想通り――って、次までの必要経験値8000だと!? 多すぎじゃないですか? 総経験値でもやっと2000程度を稼いだくらいだよ。レベルアップが遠いなぁ。
クラススキルに関してはスキルツリーの時のように前提スキルが無いようだ。いきなり全部のスキルを取得することが出来る。どれから振り分けるか考えてしまうね。
ステータスにも補正がかかっているようだ。
筋力補正:4(1)
体力補正:2(1)
敏捷補正:8(2)
器用補正:1(4)
精神補正:1(0)
多分だけど括弧内がプラス? される数値なのかなぁ。括弧内の数字の少なさからその数字になるって感じでは無いしね。
「クラスを得ることは出来ましたかな?」
にしても家の中、しかも真ん中にこんな黒い直方体があるとか。族長さん、生活してて不便じゃ無いのかなぁ。
「クラスについての説明は必要ですかな?」
お、説明して貰えるの? すっごい助かります。
「弓士は弓の扱いに長けたクラスですな。弓を使っての技を取得したり、命中率を上げたりが出来ます。上位クラスや派生クラスの『狩人』になることも出来ますな」
ふむふむ。
『ちなみに狩人へは?』
「少しの経験を積んだ弓士が魔獣のテイムに成功すると狩人に派生することが出来るようになります。テイムはわかりますかな?」
えーっと、魔獣を懐かせて手下にするとかペットにするとかって感じかなぁ。
「資格を得た段階で何時でもクラスを変更出来ます。ただまぁ、狩人が便利過ぎて狩人のままって人の方が多いようですな」
なるほど、またここに戻ってくる必要は無いわけだ。
『ちなみに上位クラスとは?』
「弓士を極め、弓の扱いを極めた者だけがなることが出来ます。派生と比べ条件が厳しいのでなられている方は余り居ませんな」
ふーむ。もしかしてクラスレベルMAX、スキル全習得とかなのだろうか。もしそうなら先の長い話だなぁ。
『このホーンドラットは?』
「ああ、試験のですか。弓士を得た人をお祝いする為の食材ですな。今日はちょうどジャイアントリザードも捕れたので豪華な食事でお祝いをしましょうか。あなたも是非食べていってください」
試験、試験とはいったい……うごごご。
まぁ、ご馳走してくれるというのなら遠慮無く頂こうか。ジャイアントリザードの味も気になっていたしね。
違和感なく狩りも出来るようになってきたし、この世界にも馴れてきたのかなぁ。
あんなことがあった後だって言うのにね。