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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
348/999

5-45  戦闘狂の宴

―1―


――《変身》――


 叡智のモノクルを除いた、全ての装備が外れ、地面へと散らばっていく。そして、生まれた無数の魔法糸が俺を包み、大きな繭へと作り替えていく。


 そして、


 孵る。



 右目、視界に表示される青い縦長のメーター。以前よりもメーターが少し長くなっている。《変身》スキルを使えば使うだけ、効果時間が延びるか……。


「ほう、何をやるつもりだい?」

 ブラックプリズムの声が聞こえる。こちらの変身が終わるまで待ってくれるようだな。


 俺は体を動かし、手を伸ばし、繭を内側から裂く。繭の中から外に手をかけ、そのまま体を引きずり出す。うん、今回も《限界突破(リミットブレイク)》の後遺症が出ないようだ。俺の体が作り替えられた副産物だろうね。


 と、今は全裸に近い格好だからすぐに何か服を着ないと。


――《魔法糸》――


 大量の魔法糸を紡ぎ、簡易的な服を作る。そして、この時の為に準備したスキルをッ!


――《換装1》――


 《換装》スキルを使いてぶくろに指を通す。


――《換装2》――


 《換装》スキルを使い緑の長靴(フェザーブーツ)を履く。


――《換装3》――


 そして、もう一度《換装》スキルを使い赤竜の鱗衣を装備する。うん、ぴったりだ。そして、落ちていた夜のクロークをマントのように羽織る。真紅妃と真銀の槍を拾っていると女神セラの白竜輪がするすると体を上がってきた。うーん、全部を一斉に換装出来ると便利なんだけどなぁ。今度、スキルレベルを上げておこう。

 地面に落ちていた指輪も拾い、芋虫形態の時と同じように首からかける。いや、まぁ、この形態で指輪をするのはねぇ、うん。


「な、ラン、その姿はどうしたのじゃ!」

 あー、姫さまが居たか。これが俺の奥の手ですよ。

「その姿が、あんたの奥の手ってわけかい? 魔獣から人型とは逆に弱くなってないといいんだが、ねっ!」

 その言葉と共にブラックプリズムが戦斧を地面へと、砂地へと叩き付ける。その瞬間、ブラックプリズムの体がゆらゆらと揺れる黒い靄のようなものに覆われていく。

「さあ、戦おうじゃないかっ! 命をかけた心躍る戦いの宴よっ!」

 ブラックプリズムが片手に戦斧を構え叫ぶ。


「ラン、わらわも戦うのじゃ!」

 姫さまが白い腕輪を光らせる。

「わらわは呼びかける、浄化する白き光の力……」

 俺の右の赤い瞳が白い魔素の流れを捉える。白い腕輪――『白の光環』からぽつぽつと小さな玉のような白い魔素が生まれ、姫さまへと流れていく。

「でるのじゃっ! 光の刃、レイブレード」

 姫さまの手から光り輝く剣が生まれる。

「さあ、行くのじゃ!」




―2―


 ブラックプリズムがにやりと笑う。

「喰らいなっ! 始原魔法が1つ! プリズムレインボウ」

 ブラックプリズムの戦斧を持っていない、自由な方の手からキラキラと輝く水晶が幾つも生まれ、空を飛び、俺たちの周囲をクルクルと回る。やばい、次の行動が予想出来る。俺の赤い瞳が周囲を回っている水晶と水晶の間に見えない線がのびているのを見破る。


「姫さまッ! 水晶を壊せッ!」

 俺は叫び、真紅妃と真銀の槍を構える。


――[エルウィンドウェポン]――


 真紅妃が俺の腕からのびた巨大な竜巻と化す。


――[エルアシッドウェポン]――


 真銀の槍が酸の噴出する槍と化す。


 真紅妃、頼む。俺の思いに応え真紅妃がわしゃわしゃと動く。


 俺は竜巻と化した真紅妃を投擲する。竜巻が周囲の水晶を砕きブラックプリズムへと飛ぶ。迫る真紅妃に気付いたブラックプリズムがとっさに戦斧を構える。真紅妃と戦斧がぶつかり、耳障りな音が周囲へと広がる。

 俺はすぐに真銀の槍を振り払い、周囲の水晶を壊していく。


「さすがだねっ! この魔法に気付いたかっ! が、遅いっ!」

 真紅妃と火花を散らしていたブラックプリズムの自由な方の手が何かのサインを描く。それに併せて七色の光が生まれ、水晶へと飛ぶ。水晶が光を反射し、他の水晶へ、光が次々と新しい水晶を渡っていく。


 俺たちの周囲が反射する光に覆われていく。


――[ウォーターミラー]――


 魔法なら反射でッ!


「ほう、ラン、あんたは青みたいな魔法が使えるんだねっ!」

 ブラックプリズムが戦斧を振り下ろし、真紅妃を撃ち落とす。そしてニヤリと笑う。何だ? 何で、そんな余裕が……まさかッ!


――[エルアイスウォール]――


 俺と姫さまを囲うように巨大な氷の柱を作る。そこへ七色の光が降り注ぐ。光は水鏡をすり抜け、氷の柱を打ち砕き、俺たちに降り注ぐ。ちっ、やっぱりかよ。なんとなくウォーターミラーの反射が効かないんじゃ無いかと思ったら、あんのじょうかよッ!


「始原の魔法に反射や属性は効かないよっ!」


 俺は姫さまをかばうように立つ。

「ラン、どうするつもりなのじゃ!」

 どうするもこうするも、もう方法が無いんだよッ!


――[エルヒールレイン]――


 俺はとっさに癒やしの雨を降らせる。


 そして、七色の光が俺の体に刺さっていく。鱗衣やクロークを抜け、体に刺さる。くっ、いてぇ、超いてぇッ!

 癒やしの雨が傷を癒やしていく。七色の光が体を貫き負った傷を、その側から癒やしていく。よし、回復速度の方が早いぞ。


「堪えるかよ、あれを堪えるのかよっ!」

 ブラックプリズムが戦斧を両手で持ちこちらへと駆ける。


――《魔法糸》――


 真紅妃へと《魔法糸》を飛ばし、こちらへと引っ張る。

「こいッ! 真紅妃」


――《真紅妃召喚》――


 真紅妃がこちらへと戻ってくる途中で巨大な蜘蛛へと姿を変え、ブラックプリズムの背後から襲いかかる。すぐさま、その存在に気付いたブラックプリズムが急停止し、戦斧を片手で持つ、そして開いた手を握り、真紅妃へ下から上に打ち上げる。ブラックプリズムの拳が真紅妃の顔を打ち上げ、その巨体を浮かす。


――《飛翔》――


 俺は真銀の槍を片手に飛ぶ。そして魔法のウェストポーチXLにもう片方の手を入れる。


「ちっ! その武器ごと壊してやるよっ!」

 こちらに気付いたブラックプリズムがすぐに片手でなぎ払うように戦斧を振るう。俺は魔法のウェストポーチXLから金剛鞭を取り出す。


――《ゲイルスラスト》――


 なぎ払われた戦斧と金剛鞭がぶつかる。そして金剛鞭によって戦斧が弾かれ、空へと舞う。

「な、なんだとぅっ!」

 ブラックプリズムが大きく目を見開き、空に舞った戦斧を見ている。


――《スパイラルチャージ》――


 俺の手に持った真銀の槍が酸液を振りまき黄色い螺旋を描く。

「まだまだっ!」

 ブラックプリズムが叫び、螺旋を描き迫る真銀の槍に噛みつく。そして、その歯で受け止める。お、おい、そいつ酸で覆われているんだぞ。何て無茶を……、


 その瞬間、俺は下から上に蹴り上げられていた。垂直に上がっているブラックプリズムの足。な、なんだと。

「ふが、ふがのがうがっ!」

 噛み、顔を酸でぼろぼろにされながらも勝ちを宣言するブラックプリズム。


「わらわの存在を忘れてるのじゃ!」

 そこへブラックプリズムの懐へ、下から光の剣をもった姫さまが走る。姫さまが下から光の剣をブラックプリズムに突き立てる。


 ブラックプリズムが真銀の槍を吐き捨て、叫ぶ。

「まだ足りないねっ!」

 ブラックプリズムのお腹に刺さった光の剣は途中で止まっていた。そして、姫さまがどれだけ力を入れようともピクリとも動かない。そしてブラックプリズムは光の剣を握っている姫さまへと、その拳を振り下ろす。

 姫さまはとっさに剣から手を離し、くるりと周り背のマントで拳を受け流し、そのまま大きく後ろへと跳ぶ。

「さすがは魔族なのじゃ」

 ブラックプリズムの蹴りによって空へと打ち上げられた俺は空中で手を伸ばす。

「お前、ヒトモドキじゃない……混じり物かよっ!」

 真紅妃が元の槍の姿へと変わる。

「楽しませてくれるよっ!」

 俺は空中で真紅妃を握る。


――《スピアバースト》――


 真紅妃とともに俺は赤い光に包まれブラックプリズムへと迫る。

「させるかよっ!」

 ブラックプリズムが迫る真紅妃を――体をよじり回避する。そして真紅妃が地面へと刺さり、そこから赤い衝撃が広がる。赤い衝撃波がブラックプリズムを飲み込む。

「くっ、がっ!」

 ブラックプリズムが腕を交差させ衝撃波に堪える。


――[エルアイスランス]――


 俺はそのまま無数の氷の槍を生み出し、ブラックプリズムを貫き動きを封じる。


「喰らえッ!」


――[エルアイスストーム]――


 ブラックプリズムを中心に激しい氷と風の嵐が吹き荒れる。嵐は唸りを上げ――廻る。無数の氷の礫がブラックプリズムを斬り裂いていく。黒い甲冑を打ち砕き、肌を切り、吹き荒れる。


 俺は地面に刺さった真紅妃を引き抜き構える。


 氷の嵐が止んだ後には、斬り裂かれ、ずたぼろの状態になったブラックプリズムが居た。

「まだだ、まだまだあたいは戦えるよっ!」

 ブラックプリズムが叫ぶ。


――《飛翔撃》――


 俺と真紅妃が1つの光り輝く三角錐となってブラックプリズムへと飛ぶ。ああ、そうだよな、あんたなら俺の氷嵐の魔法にも堪えると思ったよ。だから、準備していたんだよッ!


 これが俺と真紅妃の必殺の一撃だッ!


 光の三角錐がブラックプリズムを貫く。そして、その反動を利用し、後方へ飛び、ブラックプリズムと距離を取る。


「ま、まさか、あたいが破れた……」

 ああ、俺の、俺たちの勝ちだッ!

「ふふふ、さすがだねぇ、さすがは星獣。今回はあたいの負けだ」

 今回?

「次に会う時が楽しみだよ」

 その言葉とともにブラックプリズムの姿が小さな黒い木彫りの人形に代わり、地面にコロンと落ちた。


 え? どういうことだ?


 俺は近寄り黒い木彫り人形を見る。その胸の辺りには大きな穴が開いていた。さっき俺が《飛翔撃》でブラックプリズムを貫いた場所と同じだ。まるでブラックプリズムが人形にでもなったかのようだ。


 ど、どういうことだ?


「ラン、勝ったのじゃな?」

 姫さまがこちらへと駆けてくる。


 ああ、そうだ。勝ったんだ。


 とりあえずは勝ったってことでいいか。うん、そうだ、考えるのは後にしよう。


 あー、疲れた。

1月7日修正

ダークプリズム → ブラックプリズム

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