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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
342/999

5-39  遺跡の探索

―1―


 入り口が半分ほど砂に埋もれた謎の遺跡を降りていく。階段が砂まみれで降りにくいね。まぁ、それが無くても俺の体型だと階段の上り下りって凄くキツいんですけどね。


 階段を降りていく。うん? あら? ジョアンがついて来ていないな。


 階段の途中でしばらく待っているとジョアンがやって来た。顔色が悪くふらふらとした足取りだ。おいおい、気をつけないと階段から落ちちゃうぜ。


「ら、ラン、すまない」

 顔色の悪いジョアンと共に階段を降りる。


 にしても、ここって元々はどんな建物だったんだろうな。入り口からすぐに下へと降りる階段って、元は埋まっていなかったんだろうし、ピラミッドみたいな造りで外から上まで上がって、中を探索するって感じだったのかなぁ。


 階段を降りた先は奥に長い広間だった。何やら崩れた机や壊れた椅子などが散らばっている。手前側には左へ進む通路、奥側に右へと進む通路が見える。この広間で魔人族が生活していたのかな? 壊れているけど、ちょっと生活感あるよね。壊されているのは、ここで戦いがあったからかな? でも、その割には争った形跡がないんだよなぁ。ただ壊したって感じだ。うーん、何があったんだろうね?


 で、左と右か。どっちから行くかなぁ。


 ま、考えずに手前から進むか。


 左の道を進んでいく。

「ら、ラン、く、臭いぞ、この先から異臭がする!」

 ジョアンの顔色が更に悪くなる。確かに臭い。俺は、匂いが分かる芋虫ボディに違和感を覚えながらも、異世界だから仕方ないねと納得をするのだった。そう仕方ないのだった。


『ジョアンは最初の部屋で休んでいるといい』

 まぁ、体調が悪そうなジョアンを、この悪臭の先に進めって言うのは酷だもんな。

「で、でも!」

 俺は自分の短い手でジョアンの言葉を止める。いいんだぜ、多分、この先は正解ルートじゃないからね。


 俺は1人、異臭のする方へと歩いて行く。しかし、臭いなぁ。


 途中、無理矢理取り付けられたような木の扉がついた部屋を見つける。さっそく、中を覗いてみて、俺は後悔した。

 中には、飛び散った血と糞尿、ぐちゃぐちゃに潰された何人もの魔人族の死体があった。ああ、匂いの元はこれか。これは酷いな。

 これをやったのは姫さまたちなんだろうか? 俺の感覚からすれば、ここまでしなくてもって思うんだけどな。俺が甘いんだろうか。


 さらに通路を進む。通路の先には3箇所ほど後から扉が作られたであろう部屋があった。その部屋のどれもが嫌な異臭と血と糞尿と肉片にまみれていた。ああ、これは酷いな。


 全ての部屋で魔人族が惨殺されている。ここまで残酷に殺すって、うーん。




―2―


 最初の広間へと戻る。

「ら、ラン?」

 ジョアンが心配そうな顔でこちらに声をかけてくる。


『こちらにあったのは魔人族の死体だけだった』

「し、死体……?」

 ああ、死体だ。

「アンデッド化していない?」

 うん? ああ、そうか、この世界って死んだらアンデッド化するんだったか。まぁ、でもさ、あんだけぐちゃぐちゃになっていたら無理でしょ。

『見るも無惨な――姿だ。アンデッドになるのは無理だろう』

「姫は?」

 ジョアンは俺の天啓に静かに頷き、そう聞き返してきた。えーっと、姫さまは居なかったよ。

「にゃあっ!」

 そして何故か俺の代わりに羽猫が答える。いや、お前が答える意味がわからないから。

「そうか、居なかったのか!」

 って、通じているし! も、もしかしてジョアンさん、羽猫の言葉が分かります?


『では、右の通路を進もう』

 俺の天啓にジョアンが頷く。


 よし、次は右の通路だ!


 右の通路を進んでいく。右の通路に入ってすぐにも扉が作られている。中は……トイレかな。

「う、ここも臭い!」

 ジョアンが鼻をつまんでいる。あー、トイレだもん、臭いよね。うん? トイレ? あれ? 何だろう、何か違和感が……。ま、いいか。


 まぁ、いいさ、どんどん進もう。


 石で作られ曲がりくねった通路を進んでいく。所々、石が壊れ、そこから砂がこぼれ落ちていた。あー、この遺跡、そのうち砂で埋もれてしまうんじゃね?


 突き当たりまで進むと無数の開けられた箱が並んでいる部屋にたどり着いた。う、うーん。何も無い。空っぽの箱が並んでいるだけだな。


 せっかくの小迷宮だから魔獣や宝箱でもあるのかと期待していたら、あったのは空の箱と死体だけって、もうね。姫さまたちは居ないし、もう、どうなっているの!

 誰かが魔人族を殲滅してお宝を盗んでいったのかなぁ。何というか、これを姫さまたちがやったってのは、ちょっと想像出来ないんだよな。うーん。




―3―


 最初の広間へ戻っていると、入口側、階段上の方から話し声が聞こえてきた。


「姫さんのせいで遠回りになっちまったよ」

「わらわのせいじゃないのじゃー」

「姫、どう考えても姫が悪いです。それと、余り騒がないように、もう敵地ですよ」


 う、うーん。これはアレだ、どう考えてもあの姫さんと護衛騎士の2人だよね。えーっと、俺には丸聞こえですよ。

『ジョアン、姫たちが来る』

 俺はこっそりジョアンに天啓を飛ばす。俺の天啓にジョアンが緊張したように硬い動きで頷く。あー、ジョアンてば人見知りするタイプだったか。


 広間で待っているとのじゃーのじゃーうるさい姫さまと護衛騎士の2人が現れた。

「な、な、な、な!」

 姫さんがこちらを見てわなわなと震えている。


「ランが、ランがいるのじゃー!」

 あ、はい。ランですよ。


 予想していた通り、あの姫さまだったか。


 さあて、情報交換といきますか!

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