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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
2  世界樹攻略
33/999

2-26 試験

-1-


 家を出る。外の光景に俺は息を呑む。

「どうだ? 驚いたかい? 大陸の人は大抵驚くからな、あんたも驚くと思ったぜ」

 家の外は大きな木の上だった。な、んだと? 

 大きな木の枝と枝には複数の木の板の橋が渡してあり、その板の上には沢山の家が建っていた。

 うわ、これこそエルフの里って感じです。

「スイロウの里は結界で魔獣などの悪意ある存在から守られているのは知っているよな?」

 知らないです。そうなの?

「結界の無いフウロウの里は木の上に住むことで魔獣から逃れているって訳だ」

 結界ってのは魔獣が入ろうとすると死滅するとかそんなんだろうか。

「こっちだ」

 木の橋を歩き、着いたそこには枝から枝へ紐で結びつけられた木のゴンドラがあった。

「族長の家へは、こっちのゴンドラからの移動だな」

 木で出来たゴンドラは紐にぶら下がっているだけの代物で、大きく揺れたら振り落とされそうだった。こんなゴンドラで移動ですか……。高所恐怖症なら発狂しそうな施設だな。

 俺とイーラさんはゴンドラに乗り込む。レバーを動かすと滑車が転がりゴンドラが動いていく。あー、滑車を作るくらいの技術はあるのかー。

 こちらのゴンドラの移動に合わせて向こう側からゴンドラがやってくる。これが交互に動くことで移動を可能にしているようだ。


「着いたぜ。族長の家だ」

 ゴンドラを降りてすぐが族長の家だった。丸みを帯び、木で出来た大きな家。

 族長の家に入る。


「おお、イーラ。後ろに居るのが例の彼か」

 現れたのは年若い青年だった。青白い顔にとがった耳、間違いなく森人族だ。

「ああ、そうだ。星獣様のランさんだ」

『星獣の氷嵐の主と言う。よろしく頼む』

 目の前の彼が族長……なんだろうなぁ。

「うんうん、無事、目が覚めたようで良かった。私はこのフウロウの里の族長をしているサガ・シルバー・フウロウ。よろしく」

 サガさんか――塔でも登るのだろうか。これも、いきもののサガか……。

「と、族長さんよ、すまねぇが、ランさんに『弓士』の試験を受けさせてやって欲しい」

「なるほど。病み上がりだと思いますが、大丈夫かな?」

 大丈夫かどうか、それは試験の内容次第です。


「それじゃあ、俺は行くぜ。ランさん、大変だと思うが……いや、そうだな、また会えるのを楽しみにしているぜ、またな」

 ごつい両刃の斧を背負ったイーラさんは、そう言って手を振りながら去って行った。おっし、頑張りますか。




―2―


「さて、試験の内容です。一次試験は弓の適性を確認します」

 ほう?

「まずはこれを」

 族長さんは弓と8本の矢を持ってきてくれた。

「では、外に出ましょうか」

 族長さんと俺は家を出る。

「あそこに的があるのが見えますかな?」

 族長が遠く離れた一点に向けて指さす。視力の悪い自分だとぼやけてしか見えないが、的のような物があるように見える。ここからだと大体、30メートルくらいだろうか。

「この弓と矢を使って、あの的に5本当てることが出来れば一次試験は突破になります」

 手渡された弓は木で出来た簡素な造りだ。余り大きくなく距離も威力も出そうに無い。矢も自作の矢よりは綺麗に作られているが(やじり )もなく木を削って尖らせただけの物に何かの矢羽が付いた簡単な物だ。

 これで半分以上を命中させろと言いますか。まぁ、当ててやりますがね。

「では、どうぞ」


 俺は弓を構える。握りを持ち、矢を乗せ、伸ばした魔法糸で弦を引っ張る。遠くにぼんやりと見える的を射界に捉え放つ。


 ひゅんと放たれた矢は的を大きく外し、風に吹かれ何処かへと飛んでいく。ふむ、距離は充分届くか。しかし意外と風があるな。


 二射目。今度は的の近くの枝に当たり、刺さることもなく弾き返って地上に落ちていった。この弓、ホント威力無いね。まぁ、これで大体感覚はつかめたかな。


 三射目。矢は軽い弧を描き、的に命中する。なんというか、当てただけだなぁ。


 四射目。先程よりも弧は更に緩やかになり、的へ飛ぶ。そのまま的に深く刺さった。うむ、これくらい威力が出れば良い感じだな。


 5、6、7射目と危なげなく的に命中。これにて試験はクリアである。楽勝、楽勝。世界樹に住んでいた時に弓矢の練習をしていたのが良かったね。あの時の酷い造りの弓矢と比べたら、この程度の弓矢でも狙いやすいってものだ。

「ほう、一発で一次試験突破ですか……ランさんは優秀ですな」

 うむ、褒めてください。

「では、次の試験を出さないといけませんね」

 簡単なのだと良いなぁ。

「次の試験は、今、手に持っている初心者用の弓を使ってホーンドラットを3匹狩る、ですな。それが突破出来れば『弓士』のクラスをあなたに授けましょう」

 へ? ホーンドラット程度で良いの? ま、まぁ、最初のクラスを得る程度の試験が難しくてもしょうが無いのか。

「今、あなたが持っている弓は差し上げます。後はこの矢筒と30本の矢も差し上げます。それでは頑張ってきてください」

 お、矢と矢筒も貰えるのはラッキーだな。

『ちなみに期日は?』

「一週間以内でお願いします」

 えーっと、こちらの一週間は8日間だったな。なんというか、余裕過ぎる試験だなぁ。

『では、さっそく狩ってこよう』


 さあ、今日中にでも終わらせますか。



【初心者の弓】

【初心者に支給される弓。小さく飛距離も威力も弱い簡素な弓】


【木の矢】

【木で作られた簡素な矢。威力は望めないが軽く入手し易いのが魅力である】


【初心者の矢筒】

【初心者用の矢筒。余り多くの矢は入らない。木の矢なら30本程度、鉄の矢なら10本程度】

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