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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
327/999

5-25  迫る赤い影

―1―


――《転移》――


 転移を使い、ジョアンと共にスイロウの里へ。そのまま門の中へ入り、クノエ魔法具店に向かう。俺の後ろをついて来ているジョアンがキョロキョロと周囲を見回していた。さあさあ、行くよ、すぐ行くよ。真銀の槍を受け取ったらすぐに山岳都市に戻るんだからね。


 クノエ魔法具店ではクノエさんがお婆ちゃん型のロボットの整備をしていた。

「あ、あれは?」

 ジョアンがクノエさんのお婆ちゃんを見て驚いている。あー、やっぱり、ロボットみたいなのって、この世界では一般的じゃないんだな。ああ、良かった、良かった。あんなのが沢山居たら……いや、別に困らないか。


 ジョアンの声でこちらに気付いたのか、クノエさんが振り返る。

「あー、ランさん。今、ちょっと、僕はね、お婆ちゃんのお手入れをしていたところなんだよー」

 あ、ああ。

「魔法の付与なら終わっているから、ちょっと取ってくるよ」

 クノエさんが奥へと消えていく。残された俺とジョアンは、ニコニコと笑いながらこちらを見ているお婆ちゃんを観察していた。いやあ、ホント、良く出来ているよね。人間みたいだ――いや、もしかするとこの世界だと人間と同じ扱いなんだろうか?


「ランさん、どうぞー。と、昨日、特別にお伝えしたように! 後3つは付与が出来るけど、更に付与する?」

 あー、そっかー。後3つって魔法付与が出来る回数か。ってコトは修復、治癒とか、そんな感じで4個の魔法が付与出来るのか。これはちょっと凄くないか。俺の真銀の槍、最高じゃないか?


 クノエさんから真銀の槍フルールカスタムを受け取る。何が変わったか鑑定してみよう。


【真銀の槍フルールカスタム+1】

【真銀によって作られた上質な槍。氷嵐の主用にカスタマイズされている。リペアの魔法が付与されている】


 ほー、こんな感じになるんだね。って、これ魔法の付与が増えたらドンドン文章が伸びていかないか? 俺が気にすることじゃないかもしれないけどさ、長い名前の魔法が4種類付与とかになると凄いことになりそうだ!


 ま、他に付与したい魔法も浮かばないし、今日のトコは追加の付与は必要無いかな。


 ということで、山岳都市に行きますか!

『クノエ殿、確かに受け取った。ではジョアン、行こう』


 さあ、次は山岳都市ミアンだな。




―2―


――《転移》――


 転移を使い山岳都市ミアンへ。


 空高く舞い上がり、ナハン大森林から遠く東へ。そのまま山岳地帯へ、岩の山へと飛んでいく。


 確かチェックしたのは山岳都市ミアンの頂上、何故か自然の木々が生い茂っている部分だったよな。


「ラン!」

 突然、ジョアンが叫ぶ。え?


 俺は周囲を見回す。落下の衝撃を防ぐ空気の壁がなくなり、何故か空中に投げ出されていた。何だ、何だ? 一体、何が起きているんだ?

「にゃあ!」

 頭の上の羽猫も鳴き叫んでいる。


 何で、こんな空高くで《転移》がッ!


 くそ、地面が遠い。


 俺の体が落下していく。いや、まて、何故だ。なんで、こんなところで? と、考えている場合か。

 見ればジョアンの体も落ちている。このままだと地面に激突して即さよならだ。どうする、どうする?


――《魔法糸》――


 魔法糸をジョアンへ飛ばす。


『掴め!』

 落下していくジョアンが空気の抵抗に耐え、何とか手を伸ばし、魔法糸を掴む。

『掴んだな!』


――《飛翔》――


 《飛翔》スキルを使い急上昇する。そのまま、体勢を整え、ゆっくりと地面へと降りていく。

 その瞬間だった。俺が、俺たちが真っ暗に、何かの影に……上か! 俺は慌てて上を見る。


 そこには一匹の、赤く、巨大な、大きく翼を広げた竜が居た。


 巨大な竜が落下してくる。それに合わせて視界が真っ赤に染まる。く、このままだと押し潰されてしまう。


『ジョアン、耐えろ!』


 俺は魔法糸を回転させ、そのままの勢いでジョアンを遠くへ、赤竜の影の外へと飛ばす。

「ら、ラン! 僕はっ!」

 これで大丈夫だよな。


 さてと、俺は……どうする?


 迫る巨体。これはアイスウォールを出してもそのまま押し潰されるか。はぁ、ジョアンを見捨てて俺だけが、そのまま《飛翔》で動けば回避出来たんだろうけどなぁ。超知覚の効果でゆっくりになった世界の中、じっくり考えることは出来るけどさ、それでも時間が無限ってワケじゃないし……うーん、本当にどうしよう。


――[アクアポンド]――


 足下に水溜まり――いや、大きな池を作る。そして、その池に体を沈める。はーい、隙間が出来ました。これで大丈夫……だよな。


 巨体が地面へと降り立つ。響く地面の音。跳ねる飛沫。俺の体へと響く衝撃。ぐ、が、池の中に沈んでやり過ごそう作戦は無理があったか……。


 池の水を伝って俺の体の中にまで衝撃が走る。


 や、やばい、意識が飛びそうだ。


 このまま、ここで赤竜に潰されて終わるとか、情けない終わりかただなぁ……って、そんな風に終わらせられるかよッ!


――《限界突破(リミットブレイク)》――


 俺の中の魔石が、体が大きく脈打つ。


――[アシッドウェポン]――


 真銀の槍が酸に覆われる。


――《W百花繚乱》――


 くらえぇぇぇ!


 俺を押し潰している巨体から――小さな隙間から赤と紫、そして黄色の輝きが放たれる。


 小さな花が、小さな花弁が開き、隙間を広げていく。池の中から真紅妃と真銀の槍が姿を現す、それに伴い赤竜の巨体が少しずつ浮き上がっていく。


――《飛翔》――


 出来た隙間から《飛翔》スキルを使い抜け出す。そして、そのまま赤竜と大きく距離を取る。はぁはぁ、いきなり必殺攻撃をしてくるんじゃないぜ、死ぬかと思ったぞ。くそっ、死ぬほど使いたくなかった《限界突破(リミットブレイク)》を使わせやがってッ! これの効果が切れる前に勝たないとヤバイし、勝っても痛みでヤバイって、もうね、何だよ、それ!


「ラン! 大丈夫か!」

 ジョアンがこちらへと駆け寄ってくる。ジョアンも無事だな。はあ、ああ、戦いに時間制限が出来たが、何とか大丈夫だよ。


 赤竜が巨体をこちらに向け、大きく鳴く。あんだけ体が大きいとさっきの攻撃はダメージになっていないか……。はぁ、こっちは時間制限があるっていうのに長期戦になりそうとか最悪だ。


 俺はサイドアーム・アマラに持たせた真紅妃とサイドアーム・ナラカに持たせた真銀の槍を構える。


 さあ、来いよ、俺が料理してやるぜ。

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