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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
318/999

5-16  赤竜の襲撃

―1―


 レッドドラゴンは口の赤い光を集めながら、こちらへと滑空してくる。そして放たれるブレス。

 レッドドラゴンの口から赤い風が渦巻きこちらへと迫る。え? 風? レッドドラゴンなのに風? あー、そうか、この世界だと赤が風の色だったな。って、考えている場合かッ! どうする、どうする。

 ウォーターミラーで跳ね返せるか? いや、魔法ぽくないしなぁ……。よしッ!


『ジョアン、下がれ』

 俺の天啓を受け、竜馬車から飛び出したジョアンが後ろへ下がる。


――[アイスウォール]――


 氷の壁を張る。水は風に弱いみたいだけどさ、氷は風と水の複合属性だから、何とかなるか?

 生まれた赤い渦巻きによって氷の壁が砕け散る。えーいッ!


――[アイスウォール]――

――[アイスウォール]――

――[アイスウォール]――


 これならどうよ、アイスウォール3連!


 赤い渦が一つ目、二つ目の氷壁を壊し、三つ目にて止まる。うーん、属性の関係か殆ど防げなかったか。それでも他に方法が無いからなぁ。


『14型』

 俺は14型からコンポジットボウを受け取る。相手は空高くを舞っているからね、弓で攻撃するしかないよな。あー、くそ弓技を上げておけば良かったな。今からでも上げておくか?


 コンポジットボウに硬木の矢を番え放つ。矢は狙い違わずドラゴンへと飛び、そのまま跳ね返された。へ? あー、風か! 飛び道具無効の竜とか卑怯じゃないかよッ! どうする、どうする?


 って、方法は1つしかないよな!


 真紅妃頼むぜ。サイドアーム・ナラカに持たせていた真紅妃を自分の手に持ち直す。行くぞ。


――《飛翔撃》――


 飛翔の力によって空高く、赤竜よりも高く高く、空へと舞い上がり、そのまま光る三角錐となって巨大な――ビルくらいはあろうかという赤竜へ迫る。こちらの攻撃に気付いた赤竜が体を動かし回避しようとする。は、そんな巨体で俺の攻撃がかわせるかよ!

 竜の背中に真紅妃が突き刺さる。そのまま捻り、赤竜の鱗を弾き砕き肉を抉る。そして貫いた反動で後方へと跳ぶ。まだまだ終わらないぜ!


 後方へ跳んだ俺へと赤竜が顔を向け、そのまま口に光を集めていく。


――《飛翔》――


 俺は高速で空を飛ぶ。空を飛べるのはお前だけじゃないんだぜ!


 赤竜の口から放たれたブレスを回避し、そのまま頭の後ろへ回り込む。喰らえッ!


――《スパイラルチャージ》――


 赤と紫の螺旋が赤竜の鱗を削る。鱗を削り吹き飛ばし、肉に到達するか、というところで振り払われる。かったいなぁ。いや、もしかして属性の問題か? 真紅妃は風の属性がメインだし、この赤竜も風属性……ああ、もうね。真銀の槍が完成していれば、もっと有利に戦えていたのか。一応、効果があるのは真紅妃が取り込んでいた火属性の御陰か?


 さあ、本当にどうしよう。


 スカートから覗いている真紅妃の蜘蛛足がわしゃわしゃと動く。え? どったの? ま、まさか赤竜の上で召喚しろ、と? よし、やってみるか!


 赤竜が鋭い爪を振りかざし、こちらへと飛びかかってくる。体が大きいのに俊敏だなぁ、こんなちっぽけな芋虫を狙うなんて器用だね。俺は《飛翔》スキルで赤竜の爪と爪の間をすり抜ける。そのまま大きく旋回し、赤竜の背後へ。赤竜が大きく羽ばたきこちらへ振り向こうとする。


 こっちの方が早いぜ。空中戦なんてやってられるかよッ!


――《真紅妃召喚》――


 手に持っていた真紅妃が蜘蛛へと姿を変え、超巨大な赤竜の背中へ飛び乗る。巨大な蜘蛛が赤竜の背中を走り、首根っこを押さえ込む。そのまま鋭い牙で噛みつき、鋼鉄の足を叩き付ける。

 赤竜が大きな叫び声を上げる。そして、そのまま墜落した。


 地面に落ちた赤竜は大きく身をよじり、真紅妃を吹き飛ばす。

「お、おい巨大な蜘蛛の魔獣まで……もう終わりだ」

「何で、タイラントスパイダーがこんな所に? 見た目ほど強敵ではないが、赤竜と一緒なんて無理だろ」

 俺も赤竜と真紅妃を追い地面に降り立つ。おい、リンガーさんよ、真紅妃を見た目ほど強敵じゃないと言ったな? 俺は聞こえてるぜ。ということで後で真紅妃さんが個人稽古をつけてくれると思いますよ。って、そんな場合か。

「ら、ラン! あれは?」

『自分が召喚した真紅妃だ。仲間だから大丈夫だ』

 俺の天啓にジョアンが頷く。そのまま赤竜と戦っている真紅妃に加勢するため、駆けていく。こっちの2人は……使い物になりそうにないな。うーん、俺と同格の冒険者のはずなんだけどなぁ。Dランクっていうとクィーン・ビーやウッドゴーレム、海底洞窟で戦った虎くらいは倒せるランクってことだよな――うん? も、もしかして意外とたいしたことがないランクか。でも、真銀の剣を持ったグレイさんとか、もっと強かった気がするよな。うーむ。


『14型』

 俺は14型からコンポジットボウを受け取る。真紅妃とジョアンが前衛として戦っているからね、武器のない俺が行っても邪魔になるだけだからな――弓で攻撃するしかないか。普通の矢なら弾かれたけど、《チャージアロー》はどうかな?


――《集中》――


 集中して狙いを定める。鱗のない場所を……翼の付け根か。


――《チャージアロー》――


 硬木の矢に光が集まっていく。


 赤竜が巨大な爪をなぎ払う。ジョアンがそれを宝櫃の盾で受ける。盾ごと大きく後ろに飛ばされるが、それでも耐えきる。そして、その動きが止まった爪に真紅妃が鋼鉄の足を叩き付ける。その瞬間、真紅妃の足が紫に発光する。もしかして属性攻撃を――火属性の攻撃を行っているのか? 真紅妃さん、意外と器用ですね。


 最大まで溜まった光の矢を放つ。矢が赤竜が纏っている風の障壁にあたり、勢いを弱めながらも突き抜け、そして、そのまま翼の根元に刺さる。う、うーん、チャージした割には効いてないね。チャージしたことによって攻撃が通るようにはなるみたいだけどさ、コレ、無理じゃね? 何本、何百本チャージしろって話だよね。それ以前に矢の本数が足りないよ。


 赤竜が右腕を持ち上げる。その状態のままジョアンに顔を向け、噛みついてくる。何度も何度も、ゆっくりと前進しながら噛みつき攻撃を繰り返す。捌ききれなくなったジョアンが巨大な赤竜の口へ。ジョアンはとっさに宝櫃の盾をつっかえ棒代わりに使い噛みつかれるのを防ぐ。しかし、赤竜はそのまま恐ろしい力で宝櫃の盾をかみ砕こうとする。ああ、宝櫃の盾がギリギリと嫌な音を立てている。これ、ヤバイじゃん!


 真紅妃がジョアンに体当たりをし、ジョアンが赤竜の口から吹き飛ばされる。そして、真紅妃がそのまま赤竜に、赤竜の巨大な顎に挟まれる。巨大な蜘蛛を咥えた赤竜が右腕をさらに高く持ち上げる。お、おい、真紅妃、大丈夫かよ!


「ら、ラン……ま、魔法が」

 真紅妃の体当たりで盾ごと吹き飛ばされたジョアンがヨロヨロと立ち上がる。


 視界が真っ赤に染まる。何だ? 何の魔法が?


 赤竜の右腕から風が生まれ、地面の石畳を剥がしながら巨大なうねりを作っていく。ま、まさか竜巻でも起こしているのか? そんな魔法有りかよ! って、以前なら思ったかもね。その魔法、白髪少女と戦った時に見たからなぁ。風の上位魔法トルネードだよね。前回は防ぐのにすっごい苦労したんだよな。でも今の俺にはッ!


――[ウォーターミラー]――


 俺に魔法は効かないぜ!


 水の鏡が巨大なうねりを上げた風の暴力を跳ね返す。もうね、カーンってな感じで跳ね返してくれましたよ。う、うーん、ウォーターミラーの魔法、強すぎないか? さすがは100近いMP消費ってコトか。


 真紅妃がかみ砕かれ、光の粒となって元の槍の形状に戻り、赤竜の口から落ちる。だ、大丈夫なのか?

「ら、ラン」

 あ、ああ、分かってる。いや、分かってないけどさ。


 立ち上がったジョアンはゆっくりとだが、赤竜へと歩いて行く。風属性の真紅妃だと硬い鱗が邪魔すぎるし、矢は……あ! 属性、矢、そうだッ!


 俺は魔法の真銀の矢をコンポジットボウに番える。


――[アシッドウェポン]――


 魔法の真銀の矢が黄色い酸液に覆われる。相変わらず毒々しいな。


 狙えッ!


 ジョアンが何度も吹き飛ばされながらも盾で巨大な竜の攻撃を防ぎ、注意を逸らしてくれている。


 一撃で致命傷になるような、脆い場所を……ッ!


 酸液に覆われた魔法の真銀の矢を放つ。矢が赤竜の左目を貫通し、光となって消える。やったか?


 赤竜が大きく叫び、巨体を大きく振るわせる。ジョアン、逃げろ、潰されるぞ!


 転げ回っていた赤竜が左目を手で押さえ、立ち上がる。ああ、ダメージにはなったけど、さすがに一撃とはいかないか。いや、いいさ、何度でもやってやるッ!

 赤竜は殺意の篭もった恐ろしい眼で――残った右目でこちらを見る。そのまま翼をはためかせ、空へ。む、空中戦か?


 そして、そのまま飛んでいった。


 に、逃げたのかぁ。はぁ、効果的な武器が無い状態はキツいなぁ。キツかったぁ。あ、ジョアン、ボロボロじゃん。


――[ヒールレイン]――

――[ヒールレイン]――


 ジョアンへと癒やしの雨を降らす。2回くらい掛けておけば大丈夫だよな。はぁ、真紅妃も酷い状態だ。自己修復能力があるって言っても当分は使えそうにないなぁ。まぁ、無理はさせられないよね。今度、美味しい魔石をご馳走します……多分。

 弓技は習得しておこう。MSP温存とかぬるいことを言うのは無しで。もっと効果的なスキルがあったかもしれないわけだしさ。ああ、《限界突破(リミットブレイク)》を使わなくて済んだのだけは僥倖か。アレは俺の中で永久封印スキルの1つだからな。


 はぁ、疲れた。

12月5日修正

地面に着地する → 地面に降り立つ

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