5-12 もうすこし
―1―
ヤポさんの案内でフルールと共に鍛冶ギルドの外へ。ま、用件も終わったしね。では、《転移》で戻りますか。あ、でも炉って《転移》で持って帰っても大丈夫なのか?
『転移で……』
俺の天啓にフルールが狼頭を傾げている。あ、転移では通じないか。えーっと、何て説明するべきか。
『あのびゅーんとした移動を使っても大丈夫だろうか?』
俺の天啓に狼頭が大喜びである。
「ぜひ、ぜひ、それが良いですわぁ」
いや、あのね、その炉が《転移》を使っても大丈夫なのかを聞きたかったんですけどね。そんな高額のアイテムがさ、《転移》を使ったから壊れた、なんてなったら、俺は結構ショックですよ。
ま、その時はその時か!
――《転移》――
《転移》を使い自宅へ。自宅前へと着地すると、そのまますぐにフルールが走り出した。慌ててどうしたの?
ま、俺はゆっくりと我が家へ帰りますか。
「マスター、お帰りなさいませ。私を置いての外出、楽しかったですか?」
えーっと、よく分からなかったです。
そのまま14型がお皿にのった焼き魚と何かのスープを押しつけてくる。あ、そう言えばお腹が空いていたね。では、遠慮無くいただくとしますか。
もしゃもしゃ。
こ、これは……、まったく味が変わっていない! 素材を殺した調理方法だ!
駄目じゃん。
うーん、14型に料理をさせること自体が無駄だったのか? 14型ってロボットだもんなぁ、成長しないのかもしれない。いやでもさ、成長しなくても学習はするよね、するよね。はぁ、仲間になってくれそうな料理人を探した方が早そうだ。
もしゃもしゃ。
―2―
しばらくするとフルールがやって来た。
「変質の炉は無事、着床しましたわぁ。後は火を大きくしていくだけですわ」
よく分からないんだが、炉ってそういうもんなの? う、うーん。俺の異能言語理解スキルがおかしいのか?
「ではランさん、今後の話しですわぁ」
今後?
「このフルール、ランさんと契約しました。ランさんは、どういった方向で進むつもりですのん?」
どういった方向?
「このままランさん専属で鍛冶を行う方向、それとも販売を考えて色々な物を作っていく方向、その2つですわ」
あ、そうか。そういうのもあるのか。そう言えば、フルールは俺と契約したワケだけど、俺は給料とかを支払った方がいいのか?
「ランさん専属の場合、ランさんの望むままに鍛冶をさせていただきますわぁ。販売も考えているようなら、色々な鍛冶を行うから経験を積めて嬉しいですし、お金にもなりますわぁ。ただ、状況によってはランさんの要望にお応えできないこともあると思いますわ」
なるほど。
「もちろん、もちろん、出来る限りランさんは優先しますわぁ」
うーん、これ、フルール的には販売をやりたいってコトだよなぁ。まぁ、俺もそれで良しにするか。やりたい方向でやって貰った方がフルールも伸びるだろうしね。
『分かった、販売も行う方向でやろう』
俺の天啓にフルールが牙を見せながら嬉しそうに笑う。14型は俺の後ろで静かに控えていた。
「では、素材と売り子をよろしくですわぁ」
売り子? いや、まぁ、素材の調達は分かりますよ。で、売り子? 売り子だと! ま、まさか、ここで販売もやるのか? 俺はてっきり何処かに作った武器を卸すのかと思ったんだけど、ここで売るのかよッ!
売り子、売り子ねぇ。俺は思わず14型の方を見てしまう。
「ま、ま、ま、マスター、戦闘メイドの私に、そのような、そのような仕事を任せようなどと考えていませんよね。そのような浅はかな考えはしてないですよね?」
うーん。まぁ、さすがにここまで否定されたら、14型を売り子にすることは出来ないか。しかしなぁ、他に売り子が出来そうな知り合いなんて居ないしなぁ。
ま、ゆっくり考えますか。
それにこれで当初の目的だった真銀の槍の作成と扉作成が出来るんだからね。本当に遠回りだったなぁ。
『それはそれとして、フルール、とりあえず真銀の槍と扉を作って欲しいのだが』
俺の天啓にフルールがぽんと手を叩く。
「さっそくのお仕事ですわぁ。ところで素材は何処です?」
あ、そうか。素材ね。そう言えば魔鋼、使っちゃったなぁ。もう一個、大きい方の球体が残っているから、それを使えばいいか。
俺は魔法のウェストポーチXLから巨大な球体の残骸と真銀の斧を取り出す。俺がそれらを取り出すのをフルールが大きく目を見開いてみている。
『これを素材として頼みたい』
「ちょっと、ランさん、さすがに作り直しは無理ですわぁ。誰かに頼んでインゴットにして貰ってきて欲しいわ」
む。駄目なの? こういうのを炉にどぼんと入れて、さあ、作りましょうってワケには行かないのか。武器の作成を見たからこそ思うんだけど、不思議な力でパパッと出来そうなのになぁ。
仕方ない。奥の手を使うか。
『分かった、インゴット作成はこちらで何とかしよう』




