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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
5  名も無き王の墳墓攻略
313/999

5-11  鍛冶の実力

―1―


 えーっと、インゴット、インゴットねぇ。扉を作成して貰うために作ったインゴットがあるけど、うーん、どうしよう。ま、成功率も上がっているし、また作ればいいか。

 魔法のリュックから高純度魔鋼を取り出す。

「そ、それわぁ」

 これなら大丈夫かな?

「これなら、とても良い物が作れそうですわぁ」

 お願いしますわぁ。


 フルールが俺から魔鋼を受け取り、そのまま四角い枠の中に入れる。もしかして、コレが炉?


――《壱の極め》――


 何のスキルだ?


――《弐の極め》――


 フルールが篭手で四角い枠の中から魔鋼を取り出す。魔鋼は溶けたのかぐにゃぐにゃとよく分からない不定形になっている。


――《参の極め》――


 フルールは鍛冶場に設置されている金床に不定形の魔鋼を乗せる。そしてそのまま手に持ったハンマーを叩き付ける。


――《肆の極め》――


 ハンマーを叩き付ける度に魔鋼が姿を変えていく。ああ、やはり俺の知っている鍛冶とは違うんだな。何だろう、魔法的な力なんだろうか?


 ヤポさんはフルールの仕事をじっと見ている。たまに「ほう」と感嘆の声を漏らしている。うーん、俺には分からないけど、何か凄いのか?


 やがて魔鋼は1本の鋭い金属の塊へと姿を変えていく。


 形が整った所でフルールが狼頭を振るう。

「ふぅ、飾りは、ここにあるのを勝手に使わせて貰いますわぁ」

 フルールの言葉にヤポさんが頷く。


 フルールは自分の作った鋭い金属の板に金属の鍔を付け、木を挟み、糸を巻く。慣れた手つきだ。


 やがて1本の剣が完成した。


 うーん、やはり、俺の知っている鍛冶とは全然別物だなぁ。と、せっかくだから完成した剣を鑑定してみようか。


【上質な遮封のロングソード】

【対象の魔素の動きを封じる力をもったロングソード】


 ほう、俺の渡した素材が良かったのか上質って付いているな。にしても魔素の動きを封じる、ねぇ。相手の魔法を封じる的な感じなんだろうか。ダナンが使っていた銀の糸に付いていたのは遮断だったよな。微妙に効果が違うのかな。


「どう? 天才的な腕前でしょう?」

 フルールが得意気な顔をしている。殴りたい笑顔ってヤツだね。うーん、フルール的には自分の実力を示せたつもりなんだろうけど、俺にはこれが凄いのか、そうじゃないのか、さっぱりわからないんだよなぁ。


「ランさんが雇っている鍛冶士は中々の腕前のようだ。私たちの鍛冶ギルドでも上位に入ると思いますよ」

「な、な、な、何ですってぇ!」

 ヤポさんの言葉にフルールは不満げだ。そりゃまぁ、さっきドヤ顔をしたばかりなのに、上位に入る程度扱いじゃあなぁ。まぁ、つまり、フルールは結構凄いけど、それはあくまで普通に凄いってレベルって感じか。ま、フルール、頑張ろうぜ。この世界、レベルとかあるんだからさ、鍛冶も鍛えれば凄くなるって。


「ま、まぁ、いいですわぁ。ランさん、どうぞ!」

 フルールがロングソードを俺に渡してくる。いや、要らないんですけど。だって、俺、剣とか使わないし……。これ、今からインゴットに戻したら駄目ですかねぇ。さすがに怒られるかな。


 俺がフルールの作った剣の扱いに困っているとヤポさんが話しかけてきた。

「もし良ければ、こちらで買い取りますよ」

 あ、じゃあ、お願いします。と、フルール的にはどうなんだろう? お、何故か牙を出してニヤニヤと笑っているぞ。嬉しいのか? じゃあ、売るか。

『頼む』

「そうですね、では、これでどうですか?」

 ヤポさんが指を1本立てる。うーん、わからん。銀貨1枚くらいか? ま、俺的には元手が掛かっている訳でもないし、ま、いいか。じゃ、それで。


『それでお願いする』

 俺が天啓を飛ばすと、ヤポさんは後ろに居た鍛冶作業を行っている一人に何かを頼む。そして、それからしばらくしてお金と何かの箱が運ばれてきた。


 俺が受け取ったのは金貨1枚だった。へ? き、き、金貨だと。こんな、元手の掛かっていない、ちょっとした作業で完成したロングソードが327,680円だと? 何だソレ。俺、まともに冒険者をやるのが馬鹿らしくなってくるんだけど。いいの? 本当にいいの? も、貰っちゃうよ?


「ええ、貴重な魔鋼を使ったロングソード、造りもそこまで悪くない、これならば、それくらいの価値は充分にあると思いますよ」

 こ、これは俺も鍛冶士に転職した方がいいんじゃないかなぁ。って、まぁ、お金稼ぎが目的じゃないんだから、お金儲けをしても仕方ないか。


「と、ご要望の炉も用意しましたよ」

 俺の前に置かれたのは3つの小さな金属の箱だった。箱に蓋は付いておらず、中で小さな火が燃えていた。

「そちらの鍛冶士がどのような炉を好まれるか分からないので3種類用意しましたよ」

 青光りする金属の箱、黒光りする金属の箱、白い金属の箱の3種類。これが炉? よく分からないなぁ。俺がイメージしていたモノとことごとく違うんですけど……。

「変質の炉は655,360円(金貨2枚)、鋼の炉は327,680円(金貨1枚)、見習いの炉は40,960円(小金貨1枚)ですね。説明は鍛冶士なら不要でしょう?」

 た、高えぇ。と言うかだね、お金を取るのかよ! 分けて貰うっていうからてっきりタダで譲って貰えるのかと思ったよ! それにどれがどんな効果か、わかんないよ!


 フルール、説明をお願いします。

「ランさん、絶対に変質の炉を買うのですわぁ」

 いや、だから、説明を。それに俺、14型にお金を預けているから、お金を持ってきていないぞ。やべ、困った。

『フルール、説明を。それとお前が使う物だ。半分までなら出そう』

 俺の言葉にフルールがぐっと息を飲み込む。どうしたの?

「仕方ないわぁ。旅の旅費にって、しっかり貯めたお金があって良かった」

 そうか、それで買えるな。俺の《転移》スキルでまるまる浮いたお金だもんな。にしても、くそう、ロングソードを売ったお金が一気に飛んだじゃないか。絶対にさ、これって狙って金額を出しているよな。


 で、フルール説明を。


「変質の炉は幅広い金属に対応出来るんですわ。魔法の金属などを使った上を目指す鍛冶士なら必須ですわぁ。鋼の炉は魔法を含まない金属に適しているんですわ。だから鉄とかの武器を作るのなら逆にこちらの方がいいですわぁ。出来れば2つとも欲しい所。必要無いんで見習いの炉の説明はしませんわぁ」

 はいはい、そういうことか。俺が欲しいのは真銀の槍だしな。それなら変質の炉が向いているのか。魔鋼も同じだろうし、ま、それでいいか。


『では変質の炉を頼む』

「わかりました。では、こちらの炉はすぐのお渡しで大丈夫ですか? それほどの時間は持ちませんよ?」

 うん? 良くわかんないけど、時間制限があるの? それをどうやって使うの?


 何故か、フルールがうんうんと頷いている。ま、まぁ、実際に使う人が頷いているんだ、大丈夫か。

2月5日修正

「変質の炉わぁ、幅広い金属に対応出来るの。魔法の金属などを使った上を目指す鍛冶士なら必須やね。鋼の炉は魔法を含まない金属に適しているの。だから鉄とかの武器を作るのなら逆にこちらの方がいいわぁ。出来れば2つとも欲しい所。見習いの炉は説明しなくてもいいでしょぅ?」 → 会話を修正


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