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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
2  世界樹攻略
31/999

2-24 復讐を誓う

-1-


 夢を見ていた。俺が芋虫になって異世界に行って冒険者になって……そして殺された。ああ、夢だった。夢で良かった。悪夢だな。そうだ、今日は俺の誕生日で、昨日買ったケーキが冷蔵庫に入れたままだった。あのケーキはどんな形だったかな……。


 う、う……夢、夢だったんだ。アレは全て悪い夢だったんだ。


 ああ、分かっているさ。分かっているよッ! ああ……。


「お、どうやら気付いたみたいだな」

 声に導かれ、ゆっくりと目を開ける。光がまぶしい……。


 ここは……?


「よお、どうだ? 喋れるか? ってお前さんは念話スキルで喋るんだったな」

『あ、ああ……』

「大丈夫そうだな」

 大丈夫? アレが大丈夫かよッ!

「うん? どうした? ここが何処か気になるのか? ここはフウロウの里だぜ」

 フウロウの里……? フウロウの里だとッ!

『あ、ああ……、あの、あ……』

「落ち着け、お前は生きているし、助かったんだ」

 助かった……? 助かったッ!? そ、そうだ。

『グ、グレイ殿は? 一緒に居た護衛の……』

「グレイが居たのか……。いや、見なかったぜ」

『そうか……』

 グレイさんの死体は――無かったのか。あの状態で生きているとは思えない……。まさかあの後、魔獣に喰われて……くそっ、弔うことも出来なかったのか。

「で、教えて貰っても良いか?」

 俺は改めて目の前の人物を見る。赤いバンダナで短めの髪を立たせている。背中に大きな両刃の斧を持った歴戦の戦士風の人物。

「何があったんだ?」

『魔人族の男に、エンヴィー・ウィズダムという魔人族の……』

 う、なんだ……、目眩がする。念話を使うのが辛い。

「お、おい、どうした? 大丈夫か?」

『あ、ああ、猫馬車の御者と商人に扮した……魔、魔人……族が……』

 俺はそこで気を失った。




―2―


 覚醒する。う、頭が重い。

「起きたか。1時間ほど気絶してたぞ、大丈夫か?」

『ああ』

 まだ頭が重い気もする。大丈夫……か?

「大丈夫そうだな。お、そうだ、自己紹介がまだだったな。俺はイーラ。アクスフィーバーというクランのサブリーダーをしている。お前さんのことはウーラから聞いてるよ」

 ああ、ウーラさんのクランの人だったのか。どうりで斧を持っているわけだ。

「猫馬車の御者に扮した魔人族に襲われたってことで間違いないか」

『あ、ああ』

 一緒に乗っていた商人風の男が魔人族だったんだが、訂正をするつもりはない。

「やはりそうか……。ところで奴らから何か聞いていないか? 奴らのアジトにつながるような事を。何でもいいんだ」

 確か、崖のアジトとか言っていたな。だが俺はソレを教えるつもりは無い。

「魔人族は人を騙り、惑わし、裏切り、人から盗む。人の世に災いしかもたらさない種族だ。見つけ次第殺すしかないっ!」

 魔人ってついているから何らかの特殊な種族かと思ったけど、この口ぶりからするとただの詐欺師、盗賊集団な訳ね。そりゃあ、殺すしかないよなー。


 そ、そういえば、俺の荷物は? 俺のステータスプレート(黒)は?

 俺は辺りを見回す。俺は木のベッドに寝かされていたようだ。布団などは掛けられていない。周りに何もないシンプルな木で作られた部屋。当然、俺の荷物はない。鉄の槍も買ったばかりの切断のナイフも、何もかもがッ!

『すまない、荷物を知らないだろうか?』

「ああー。現場には何も無かった。腹を切り裂かれたあんたが居ただけだ」

 はははは。何も無かった、無かっただとッ! せっかく貯めたお金も、武器も、何もかもがッ! これからどうしろと? 何も無くなった状態でッ!


「落ち着け、そして受け取りな」

 イーラさんから手渡されたのは――1枚のステータスプレートだった。

「さすがに、ステータスプレート無しは不便だろ」

『いいのか?』

「ウーラから聞いてるぜ。初めの三つのクエストを終えているんだろう? その報酬だったものだ。お前が正当な権利を持ったステータスプレートだよ。と言っても初心者用の銅だがな」

 銅色のステータスプレートに触れる。文字が浮かび上がる。


【ステータスプレート(銅)認証完了】


 そして浮かび上がるステータス。




 名前:氷嵐の主


 所持金   :0

 ギルドランク:G

 GP    :25/100

 MSP   :2


 種族:ディアクロウラー 種族レベル:2

 種族 EXP 1036/2000


 クラス:なし

 クラスEXP 0/-


 HP: 40/ 100

 SP:  5/ 810

 MP:  8/  11


 筋力補正:4

 体力補正:2

 敏捷補正:8

 器用補正:1

 精神補正:1


 所持スキル : 中級鑑定(叡智のモノクル) 糸を吐く:熟練度8121

         念話:熟練度2576 毒耐性:熟練度2400

 クラススキル: 槍技:熟練度1232 スパイラルチャージ:熟練度384

         払い突き:熟練度24

 サブスキル1: 浮遊3:熟練度120 転移:熟練度40

 所持属性: 水:熟練度344 風:熟練度342

 所持魔法: アイスニードル:熟練度100 アイスボール:熟練度584

       アクアポンド :熟練度2



 は、はは、はははは。なんだコレ? なんだコレ?

 MPの最大値11? 11って何だ? 飛翔のスキルツリーも消えてる。習得したものは消えていないがツリー自体は消えているとか、はははは。


 絶望的だな。絶望的状況だな。は、は、は、はー。いいぜ、いいよ。やってやろうじゃねえか、何故生き延びたのか分からないけれど、生き延びたんだ。生き残ったんだッ!


 お金も無い、武器も無い、MPも無い、スキルツリーも消えた。

 で? だから、どうした?

 負けてたまるかよッ!!


 魔人族のエンヴィー・ウィズダムッ! 首を洗って待っていろッ! 俺を殺しきれなかったことを後悔させてやる。必ず、必ずだッ! グレイさんの仇を取る、この俺の手でッ!!


 俺は復讐を誓った。

2020年12月12日誤字修正

通りで斧を → どうりで斧を

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 意味のある弱体化だといいなぁ… この先強くなっても、でも前のが強かったよなぁって考えが浮かぶようじゃあ主人公として役不足になってしまう…
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