4-38 焼肉定食
―1―
ゆーらゆーら。
ゆーらゆーら。
ゆーら、ゆーら。
ゆーらッ!
って、暇だよ。お腹空いたよ。
これってさ、揺れてるけど、ロケットが移動する気配ってないな。何だろう、不思議な力が働いているんだろうか。俺の常識だと、碇も降ろさずに漂っていたら流されて大変なことになるような気がするんだよな。ま、気にしたら負けか。
夜が明けた頃、一隻の船がこちらへと近寄ってきた。やっとか、やっとか! このまま遭難して餓死するかと思ったぜ。
「皆、待たせた。すまぬ」
船にはミカンだけではなく、元将軍、元宰相(もちろんコラスではない方だ)の姿も見える。おー、お偉いさん方も来てるんじゃん。
じゃ、行きますか!
俺たちは向こうの船に乗り換え、そのまま出発する。あれ、でも、このロケットもどき、どうしよう? 意外と便利そう、というか解体して素材として使えないかな。うーん、そんなことを考える俺は貧乏性か? このロケット、謎の力で、このままここに残るなら、後でなんとか回収しよう、そうしよう。何か使い道があるかもしれないからね。
船に揺られてホーシアへ逆戻り。はぁ、しかしまぁ、大変なことになったなぁ。ホント、お腹が空いちゃったよ。
そのまま元宰相さんの家に案内される。えーっと、ご飯ですかね。
そして元宰相の家の中を進んだ先は、期待通り食堂だった。お、食堂じゃん。食事じゃん。
「まずは食事にしましょうかな」
元宰相さんが席に着く。
「食べてる場合じゃないと思うんだぜ」
キョウのおっちゃんが腕を組み、苛々したように口を開く。あー、キョウのおっちゃんからしたら、帝国に関わることだもんな、焦るわな。
「落ち着きなさい、若いの。落ち着いて食べるものでも食べなければ、良い考えも出ぬと思うぞ」
言葉と共に元将軍も席に着く。
「……うむ」
ミカンも静かに席へ着く。
「わかった」
ジョアンも椅子を引き、ちょこんと席へ座る。
そして、14型が食卓に並べられた椅子を引き、叩き壊そうとする。ちょ、やめてー。そんなことをしなくても俺は普通に座れるから、乱暴はやめてー。
「ふぅ、マスターは椅子を壊して貰うのが趣味かと思っていたのですが、私の勘違いで良かったです」
どんな趣味だよ! もうね、突っ込むの疲れるからまともに行動してください。
俺は14型が引いてくれた椅子へ内側に丸くなるような体勢で乗っかる。
「ふむ、星獣様も座られました。帝国の方……」
元宰相の言葉にキョウのおっちゃんがドカっと乱暴に座る。
「わーたよ、分かったんだぜ。食事にしよう、それから考えるんだぜ」
「それがよいでしょう。では、一応、ミカン殿から簡単には聞いていますが、もう一度説明をして貰っても良いでしょうかな?」
あー、ミカンって脳筋だもんね。上手く説明できていたか不安だもんね。
―2―
食事が始まる。
「俺が説明するんだぜ」
もしゃもしゃ。
「宰相だったコラスの目的は『空舞う聖院』の力を手に入れることだったんだぜ」
もしゃもしゃ。
「『空舞う聖院』を動かすには新王のリーンの力が必要だったんだぜ。俺はコラスが用意していた候補者ってのは偽物だったんだと思うんだぜ」
もしゃもしゃ。あ、14型さん、そっちにある、お肉の焼いたのをとっていただけませんか? 今の俺は魚よりも肉派なんですよー。焼肉定食お願いしまーす。
「コラスは『空舞う聖院』の破壊の力を使って神になるのが目的らしいんだぜ。まぁ、力で世界を征服したいってところが妥当だと思うんだぜ」
もしゃもしゃ。
「その破壊の力は海の水を一瞬で消し去るほどの力なんだぜ。それに近い力を持った空飛ぶ船が23隻あったのも確認したんだぜ」
もしゃもしゃ。って、お、キョウのおっちゃん、あの状況で空飛ぶ船の数をちゃんと数えていたのか、さすがだな。
「そして、まずは帝国に宣戦布告する予定らしいんだぜ」
「なら、このホーシアは、まずは安心といったところですか」
元宰相の言葉にキョウのおっちゃんが怒りの視線を送る。
「そんな場合か! 遅いか早いかの違いでしかないと思うんだぜ!」
「それでも私たちには時間が作れますからな」
元将軍がそんなことを言う。
「ふん。新王リーンを蹂躙し、その意志を無視して従わせる予定らしいんだぜ。コラスは予備を作らせるとかほざいていたんだぜ」
その言葉に元将軍が席を立ち、食卓を思いっきり叩き付けた。
「その言葉、嘘じゃなかろうな?」
キョウのおっちゃんと元将軍がにらみ合う。ふーん、もしゃもしゃ。もしゃがりっ。あ痛っ、なんだ? サラダの中に骨? いや、これ貝殻か――が入っていたぞ。シーフードサラダか。油断したなぁ、歯が欠けるかと思ったよー。
「落ち着いて席に座って食事したらどうなんだぜ」
キョウのおっちゃんの言葉に元将軍が座り直す。もしゃもしゃ。うーん、食事は流通が回復したからか、大分良い物に変わっているけどさ、それでもコラスんとこの方が豪華だったなぁ。
「素直に『空舞う聖院』の力は脅威だと思うんだぜ。だから、俺は1つの提案をしたいんだぜ」
キョウのおっちゃんが座ったまま、皆を見る。うん、俺はそんなことより焼き肉定食が食べたい。いやね、俺の住んでいた所の近所に安くて美味い定食屋さんがあったんだよね。あー、あそこの焼き肉定食、好きだったなぁ。はぁ、もう一度食べたい。
「新王リーンを殺すべきだと思うんだぜ」
ぶふぉ。
俺のキョウのおっちゃんの提案に食べていた物を吐きそうになった。
おっそろしいなぁ。
10月30日以下を追加
うん、俺はそんなことより焼き肉定食が食べたい。いやね、俺の住んでいた所の近所に安くて美味い定食屋さんがあったんだよね。あー、あそこの焼き肉定食、好きだったなぁ。はぁ、もう一度食べたい。