2-22 前日
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レッドアイの牙を持って鍛冶屋にやって来た。
「昨日の今日じゃねえか。どうしたよ」
今日も現れたのは犬頭のホワイトさんです。もしかしてこの鍛冶屋、一人で切り盛りしているのか!?
「いやいや、流石に一人じゃねえよ。奥に嫁と弟子がいるぞ」
あ、既婚者でしたか……敵ですね。
『また武器が壊れてしまった。後は剥ぎ取り用のナイフが欲しい。それと……』
「おいおい、また壊してきたのかよぅ。お前、どんな使い方してんだよ」
いやね、今回は仕方ないと思うのです。と、そうだ、コレを見て貰わないと。
『これを加工して槍に出来ないだろうか?』
俺は持ってきたレッドアイの牙を見せる。
「こいつは……タイラントスパイダーの牙か? いや違うな、似ているが別物だ。こいつをどうした?」
あれ? レッドアイって、てっきりタイラントスパイダーの名前付きだと思ったんだけど、違うのか? そういえば鑑定ではジャイアントスパイダーの亜種になっていたもんな。も、もしかして……?
『里の外の蜘蛛の巣窟で倒してきた。ふむ……タイラントスパイダーについて聞いてもよろしいか?』
「ああ。と言っても簡単なもんだが――ジャイアントスパイダーが更に大きく凶暴になった感じだ。甲殻は更に固く鉄のようだな。噂によると鉄を喰ってるかららしい。まぁ、ジャイアントスパイダーが進化した姿だとは言われているな」
うーん、特徴は似ているよね。
『目が赤く光ったり、風の魔法を使ったりは?』
「はぁ? 蜘蛛が魔法を使ってくるわけないだろうがよぅ」
え、あ、はい。うーむ。完全に別物じゃないか……。つまり、あいつはあくまでジャイアントスパイダーだったのか? とすると――タイラントスパイダーの名前付きとかは考えたくもないな。
「にしても加工のし甲斐がありそうな素材だな。槍だったな、いいぜ、やってやる。が、ちゃんと代金は貰うぞ」
そりゃ当然か。
「素材持ち込みだから、おおまけして……、それでも655360円だな」
ぐ、たけぇ。手持ちの倍じゃないか。なんで素材の持ち込みでッ! 加工だけでッ! 死骸一式の倍の値段になるだよッ! おかしいじゃないかよぅ。
『前金を置いていくので、加工をお願いする』
しぶしぶ金貨を一枚渡す。ああ、せっかく手に入った金貨が、金貨が。
「まいど。後はいつもの槍か?」
『それなんだが、もう少し上等な槍はないだろうか?』
ホワイトさんは考え込む。
「難しいな。真銀の槍は無理なんだろ? となるとフウアの里に行くか、大陸に渡るくらいしか思い浮かばねえ。この里の連中は斧か剣、弓くらいしか使わないからな」
はい、真銀の槍は無理でーす。
『いつもの槍で』
「ああ、まいど。ちなみにナイフはどうする? ナイフなら『切断のナイフ』があるぞ」
何ソレ怖い名前。
「剥ぎ取り向きのナイフだ。ここらでは冒険者の多くが持っているな。それ以上だと真銀のナイフになるな」
ちなみにおいくら万円ほどで?
「40960円ほどだな」
あら、意外とお安い。小金貨一枚ならなんとかなるな。買おう。
「まいど」
これで今の俺の残金は小金貨1枚、銀貨7枚、銅貨7枚、潰銭3枚の81304円だ。かなり減ったなぁ。お金を貯めるはずがどんどん減っていく不思議っ!
―2―
それからの数日は蜘蛛退治や森ゴブリン退治のクエストを受けながら、チマチマと日数を潰した。
森ゴブリンの巣に森ゴブリンが増えていないかをのぞきに行ったり、またレッドアイのような強敵が現れないか探してみたりくらいはしたけれど余り探索範囲は広げなかった。
タイラントスパイダーとも戦ってみたかったのだが、近くの巣はジャイアントスパイダーばかりで姿は見えなかった。やはり、レッドアイとは別種なんだろうなぁ。
そこまで危険度が高くない分、稼ぎもそこそこでしかなかったが、普通に暮らす分にはこれでも充分そうだった。
まぁ、冒険者なんて何時までも出来る仕事ではないだろうから、どこかで一発当てないと何れ生活出来なくなるんだろうね。
そして猫馬車の出発の日を迎えた。俺は女将さんに長期外出を伝えて、猫馬車の待合所に向かう――猫馬車は来ていなかった。
猫馬車は来ていなかったッ!
待合所に今日も居たキモイおっさんに聞いてみた。
「何言ってるのー? フウロウの里行きは明日だよぅ」
へ、一週間経ったよ? 一週間でしたよね? ま、まさか?
『聞いても良いだろうか? 一週間とは何日だろうか?』
おっさんは何を言っているんだという顔をしているが、それでも答えてくれる。
「一週間って言ったら8日に決まっているじゃない。火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、土曜日、風曜日、闇曜日、光曜日だよぅ」
うは、一週間を思い込みで7日だと思っていた。は、恥ずかしい。というか、魔法の属性がそのまま曜日になっているとは……。
仕方ないので転移スキルでスイロウの里に戻る。この転移のスキルだが、想像していたのと全然違っていた。はじめは何が起こったのか理解出来なかったんですよッ!
――<転移>――
俺の体は遙か上空まで放り上げられる。
俺の体が空中で一旦停止する。ここで指定の座標が選択される。チェックポイントは一個しかないので、そのまま落下が始まる。
高速で落下する。
このスキルの恐ろしいことは着地が一切考慮されていないことである。そう、このままだと地面に叩き付けられて終わりだ。
――<浮遊>――
浮遊を使い減速して着地する。ホント、転移は酷いスキルである。それでも、まぁ、便利なスキルだとは思います。
里に入り、宿に戻る。
女将さんに明日でした、と伝えて自分の部屋に。
よし、明日こそフウロウの里に出発だ。
名前:氷嵐の主
所持金 :95384
ギルドランク:G
GP :25/100
MSP :2
種族:ディアクロウラー 種族レベル:2
種族 EXP 1036/2000
クラス:なし
クラスEXP 0/-
HP: 100/ 100
SP: 810/ 810
MP:1620/1620
筋力補正:4
体力補正:2
敏捷補正:8
器用補正:1
精神補正:1
所持スキル : 中級鑑定(叡智のモノクル) 糸を吐く:熟練度8120
念話:熟練度2416
クラススキル: 槍技:熟練度1232 スパイラルチャージ:熟練度384
払い突き:熟練度24
サブスキル1: 飛翔ツリー
浮遊3:熟練度120 転移:熟練度40
浮遊 LV3(0/40)
転移 LV1(0/160)
飛翔 LV0(0/300)浮遊LV4 転移1以上
超知覚 LV0(0/100)飛翔LV1以上
所持属性: 水:熟練度344 風:熟練度342
所持魔法: アイスニードル:熟練度100 アイスボール:熟練度584
アクアポンド :熟練度2
装備品:鉄の槍 切断のナイフ 樹星のマント 麻糸のガウン 麻糸のベスト
所持品:ステータスプレート(黒) 叡智のモノクル 世界樹の葉の欠片×93
魔法のポーチ(2) 皮の背負い袋 皮の水袋 ショルダーバッグ
2月24日修正
ステータスに 『念話:熟練度2416』 を追加