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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
4  空舞う聖院攻略
276/999

4-34 空舞う聖院制御室

―1―


「何を見てるんだヨ」

 あ、すいません。ちょっと魔石核って単語が気になって、ホントすいません。

「この新しい王様の面倒は俺が見ているから、安心して戦うんだヨ」

 あ、はい。お願いします。


 じゃ、戦いますかッ!


 俺は2つの槍を携え駆け出す。とりあえず数を減らさないとな。後6人も同時に相手するのは危険だしね。

「ラン! 3つは僕が耐える!」

 マジかよ、ジョアン、行けるのか? って、ことはミカンが1つ、キョウのおっちゃんが1つ、俺が1つか。

「仕方ないですね。そこの頼りなさそうな中年のフォローは私が行います」

「いや、俺、まだそこまでの年じゃ無いんだぜ、ひどいんだぜ」

 14型がどれだけ戦えるかわからないけれど、まぁ戦闘(バトル)メイドって名乗っているくらいだから足手まといにはならないでしょう、うん、多分大丈夫だ。


「にゃあ?」

 はいはい、お前は怪我をしないようにちゃんと頭の上で縮こまっていろよ。


 迫る魔石兵。俺の右の視界に赤い点が灯る。それをなぞるように、筋繊維が触手のように絡みつき肥大化した左拳が迫る。勝負だぜ!


――《スパイラルチャージ》――


 サイドアーム・アマラに持たせた真紅が赤い螺旋の唸りをあげて巨人の左拳を迎え撃つ。俺の真紅は最高なんだぜ!

 真紅が魔石兵の左拳を抉り砕き貫く。筋繊維がほぐれ弾け飛んでいく。これで終わりじゃないぜ!

「おおう、罪の無い兵士の左腕を破壊するなんて酷いですなぁ」

 罪の無いって、襲ってきた時点で敵じゃないのか? それとも黙って殺されろ、とでも言うのか?

 宰相の言葉に俺以外の動きが止まる。ん? どういうことだ?


「どういうことなんだぜ!」

 キョウのおっちゃんが叫ぶ。


「ふむふむ。あなた方は反逆者、つまり、こちらが正しいのですな。兵を殺せば罪として残るってことですなぁ」

 へ? あー、そうか。罪に問われるから、反抗するのって気が引けるなぁって状況なのか。うーん、それって気にするべきことなのか? だってさ、それは、ただ殺されろってことじゃん、死ぬよりは戦うべきなんじゃないかなぁ。


「おいおい、それはつまんねえヨ」

 コウさんの言葉に俺はそちらへと振り返る。

「お嬢ちゃん、出番だヨ。ちゃんと出来るよナ?」

 コウさんが少女の背中を軽く押している。それに頷く猫耳少女。


「王が命じます。元宰相である反逆者のコラス・ツチーチを討ちなさい」

 コラス・ツチーチ? ああ、宰相の名前か。変わった名前だよね。

「はい、よく出来たヨ」

 コウさんが猫耳少女を褒めている。


「嬢ちゃん、いや、新国王よく言ったんだぜ! これで罪に問われるのはお前らの方なんだぜ!」

 なるほど。この世界だと、そういった建前って大事なんだな。


「コウ・コウよ。お前というヤツは……。いいでしょう、私の実験兵が全てを砕いてくれますよ」

 宰相の言葉と共に動きの止まっていた魔石兵たちが動き出す。俺が砕いた左腕もゆっくりと再生を始めている。


「そいつらを殺して解放してやりナ」

 コウさんの言葉、ま、そういうことだと思ったよ。実験兵、言われたままに動く、そうだよなぁ。なんつうか、これって嫌な役回りじゃんかよ。


 再生を続ける左腕を残し、もう一方の右腕が迫る。俺の視界に赤い点が灯る。


――《百花繚乱》――


 サイドアーム・ナラカに持たせた潮の長銛から、高速の突きが放たれる。俺の突きと拳がぶつかり合う。突きの連打と拳の勢いが拮抗する。さすがに真紅じゃないと打ち砕けないか……。


 けどね!


 俺にはもう一方のサイドアームがあるんだぜ! 胴ががら空きなんだぜ!


 サイドアーム・アマラに持たせた真紅が魔石兵の胸についている脈打つ魔石を打ち砕く――いや、真紅が魔石を喰らう。魔石を喰われた魔石兵は歪な雄叫びを上げ崩壊していく。体が崩れ、肉の塊となっていく。

「これは酷い。さすがは魔獣、人の心が無いようですなぁ。それとも後ろの誰かが動かしているのですかな?」

 はいはい、まず一人だよ。さて、次は誰の手助けに行くべきか?


 ジョアンは3方から迫る拳を2つの盾で上手く受け流しながらしのいでいる。うん、ジョアンの方はもう少し持ちそうだな。ミカンは――うん、あっちは普通に勝てそうだ。で、キョウのおっちゃんは、と。


 その瞬間、14型が巨大な拳に殴られ吹き飛んでいた。ちょ、お前、フォローするんじゃなかったのかよ!

「なかなか、やるようですね」

 14型は空中でひらり、姿勢を整え着地する。そのまま――全く汚れていないのに――メイド服を叩いて、軽くほこりを払っているかのような真似をしていた。あー、格好から入るタイプなんですね。


 仕方ない、14型とキョウのおっちゃんをフォローするか。キョウのおっちゃんが必死に魔石兵の攻撃をかいくぐって、攻撃をしているけれど、いかんせん決定力が足りない。


「おーい、そこの芋虫魔獣は気付いたようだけどヨ、その兵士、胸の魔石が弱点だヨ」

 はーい、だよね。見るからに弱点だもん。

「コウ・コウ! またも余計なことを!」

 おうおう、元宰相さんよ、頭の血管が切れそうですぜ。

「宰相の旦那ー、いや、今は元ですナ! コラスの旦那、これはもう勝負決まったと思うんだヨ」

「勝手なことを!」


――《スパイラルチャージ》――


 赤の螺旋を描いた真紅がキョウのおっちゃんに迫っていた拳を打ち砕く。

「旦那、助かったんだぜ!」

 そこへキョウのおっちゃんが走る。走りながら手に持った瓶から何かの液体垂らし、ダガーへ塗りつける。そして、そのまま魔石兵の胸元、脈打つ魔石へとダガーを突き立てる。ダガーが魔石に刺さった瞬間、キョウのおっちゃんはダガーを手放し、魔石兵を蹴りつけて大きく後方へと飛ぶ。

 そして、それを追うように刺さったダガーが魔石と共に爆発する。おうおう、さっきの液体は爆発物だったのか?

 魔石を失った魔石兵が肉の塊へと崩れていく。よし、これで残り4! えーっと、他のメンバーは、と。


 ミカンを見れば、ちょうどこちらへ振り向いていたところだった。刀を鞘にしまうカチンという音が鳴り、それに合わせて魔石兵の魔石が砕け散る。や、やるねぇ。うん、これで残り3だね。


 ジョアンも魔石兵達の少ない隙を見逃さず光の剣を造り1体の魔石を打ち砕いていた。おー、やるじゃん。これで残り2だね。で、14型さんは?


「何ですか? 私の顔に何かついているのですか?」

 俺の後ろに控えていた。いや、あの、たたかい……うん、気にしたら負けだね。


 俺たちはジョアンと合流する。これで4対2だぜ。あー、でも元宰相を入れたら3か。これはもう、俺たちの勝ちじゃん。というかだね、弱点が剥き出しの時点で駄目だと思うんだよな。元宰相さんよ、途中で気付かなかったのかい? お前の敗因はそこなんだぜ!

10月24日修正

脱字修正

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