4-23 換装発動
―1―
食事終わりです。まあまあ美味しかったよ。でも、何か足りない感じだったんだよなぁ。まあ、贅沢は言わない。タダ飯、ゴチです。
「帝都からのお客人、今夜の宿は決まってますかな?」
決まってないです。
「決まってないんだぜ」
そうなんだぜ。
「ほうほう、それなら今夜はこちらで泊まって行くと良いでしょう」
ほう、王宮に寝泊まりか。
「明日の準備もし易くなりますからね、こちらに泊まって貰った方が私たちは助かりますがね。もちろん、そちらの都合もありますから、無理強いはしませんよ」
はーい、じゃあ、お言葉に甘えまーす。
「分かったんだぜ」
キョウのおっちゃんがやれやれって感じで受け答えをする。
「分かりましたよ。では、おい! お客人を部屋に案内するんだよ」
控えていた猫人族がお辞儀をして扉の前に移動する。俺たちは案内に従い部屋を出る。
そして、そのまま個室に案内される。おお、普通の部屋だね。ベッドに……って、それしかない! いや、でもさ、ベッドの存在が凄いのか? だって、ベッドだぜ、ベッド。触ってみよう。ふかふかだ! ふかふかだよ、ふかふかだよ! 何コレ? 何かの羽でも入ってるの? 凄い! 贅沢だ!
じゃ、寝ようか。って、せっかくだから換装スキルを上げておくか。せっかくだからね!
【《換装》スキルを獲得しました】
【《換装》スキル:指定箇所の装備を入れ替えることが可能】
【最大箇所数1】
ほー。そういう感じ? ちょっと使ってみようかな。
――《箇所1》――
む、これ、どうすればいいんだ? 俺の体の部分、部分が、ぼんやりと光っている。場所を選べってコトか? とりあえず俺の小さなまん丸ハンドを選んでみますか。これで武器の入れ替えとか瞬時に出来るのかな?
手を選ぶと他の部分の光が消え、手だけが光っている状態になった。で、次はどうするんだ?
【てぶくろ】
おや、システムメッセージに『てぶくろ』が表示されてるぞ。うん? これ、もしかして選べってコトか? 決定って感じで念じるとぼんやりと光っていた手の光が消えた。ふむ……って、武器のつもりで手を選んだのに、もしかして篭手扱いか? ま、まぁ、使ってみよう。
――《換装1》――
スキルを使った瞬間、俺の手には『てぶくろ』が装備されていた。って、俺のまん丸ハンドだと装備は無理なんだって。指の部分がぷらんぷらんで、まるで手袋の指を通さずに中で拳を握ったみたいになってるじゃないか。しかも『てぶくろ』が邪魔して取り外すことも出来ない。そうだ、もう一回《換装》スキルを使ったらどうなるんだ?
俺は《換装》スキルが再度使えるようになるまでしばらく待ち、スキルを発動させる。
――《換装1》――
スキルを使った瞬間、『てぶくろ』が消え素手の状態に戻る。
うーん、これ、装備を一瞬で変えることが出来るスキルで間違いないみたいだな。早着替えのスキルだね。
で、これ使えるか? うーん、凄く微妙なスキルの予感です。使い道が無さそうだなぁ。
―2―
朝になり、俺の部屋に猫人族の召使いさんが起こしにやってくる。いや、もう起きてますから。ベッドの上の俺を見下ろすように立ったままの14型は完全に寝てますけどね。目を開けたまま寝てますけどね! ……ロボだから寝ないんじゃなかったのかよ。
「あ、あの……」
猫人族の召使いさんが申し訳なさそうに14型に話しかけている。むむ、やはり、14型がメインで俺が連れている魔獣扱いなのか? そういえば当たり前に14型と同室だったけど、そういうことなのか?
「いえ、寝てないですよ。私が寝るなんて、そんな寝る必要が無い私が? ありえないです」
はいはい。分かったから、行こうか。
猫人族の召使いさんの案内で建物の外へ。そこではすでにコウさんが待っていた。
「待ってたヨ」
手には節のついた金属の棒。何だろう、木刀みたいな感じだな?
「ん? 芋虫魔獣さんヨ、これが気になるのか?」
はい、気になります。ということで勝手に鑑定します。
【鉄鞭】
【鉄で作られた鞭】
え? これ鞭なの? 鉄の棒にしか見えないんだけど。まぁ、なんだろう段階的に節が作られてるけどさ。うーん、鑑定のミスかな。
「シシシ、これはヨ、相手に痛みを与えることに特化した武器なのヨ。体の中に浸透して中から砕くのヨ」
うひぃ、怖いなぁ。何というか、痛そうって感じの解説をありがとうございます。
そんな解説を聞いてるとキョウのおっちゃんとジョアンもやって来た。よく眠れたかね? 俺は久しぶりに文化的な最低限の睡眠を得られた気がするよ。
「旦那は準備万端なようなんだぜ」
そうなんだぜ。
「では行くヨ」
コウさんの案内で出発する。って、俺らだけなの? 兵隊とかは動かさないの?
「まずは船着き場に行くヨ」
船に乗るのか。キョウのおっちゃん大丈夫?
見るとキョウのおっちゃんは青い顔をしていた。大丈夫じゃないようですね。我慢、我慢だよ。
「候補者の子どもを攫った連中は、島をアジトにしているのヨ。そこまで船で行くヨ」
ああ、この町に居るってワケじゃないのか。
「俺たちだけで行く理由を聞きたいんだぜ」
そうだよ。
「やつらの居る島は魔獣も出るのヨ。足手まといは要らないヨ。それに少数の精鋭の方が攻め込み易いからヨ」
うーん、そうなの? そういうもんなの? って、それにさ、俺らのことを精鋭って言うけど、会ったばかりで、俺らの実力も知らないよね? 大丈夫なの?
「さ、行くヨ」
俺たちはコウさんが操る船に乗り、そのまま島へ向かう。
これさ、小型のボートみたいな船だけどコウさん一人で操縦できるんだな。何だろう、最初に魔石を、船に備え付けられた筒みたいなのに入れてたけど、アレが燃料なんだろうか? うーん、あんな魔石1個で船が動くとか、不思議過ぎるなぁ。
10月12日誤字修正
俺は再使《換装》スキルが用出来るよう → 俺は《換装》スキルが再度使えるよう