4-21 ギルドへ
―1―
いざ、冒険者ギルドへ。確か隣の船だったよね。隣の船ってどういうことなんだろうなぁ。
教えて貰った道順を進んでいくと船の縁に出た。そして視線の先、向こう側にも、もう一隻の巨大な船が。おー、なるほど、そういうことか。
ふむ、船と船に桟橋が渡してあるね。こういう感じで繋がっているのか。これを伝って隣の船に移動するんだな。
しばらく歩いていると平屋の大きな建物が見えてきた。あれが冒険者ギルドかな? にしても、道を歩いている人を見ないなぁ。魔獣による海路の封鎖と何か関係があるのかな?
そのまま平屋の大きな建物の冒険者ギルドへ。こんちはーっす。って、アレ、何だ、この感覚?
冒険者ギルドの中に入った瞬間、ゾクリと背筋に悪寒が走る。ぬぬぬ。
正面には眼鏡をかけた女性。他に人はいないな。ふむ、気にしても仕方ないしね、まずは正面の女性に話しかけてみますか。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件ですか?」
って、うお、普通に話しかけられたぞ。いや、これは、実は俺と見せかけて14型に話しかけたパターンだな。
俺は、横を見る。うむ、誰もいないな。そして後ろを見る。うむ、14型しかいないな。そして上を見る。見えないけど羽猫が頭の上に乗っかっているな。
「Dランク冒険者のランさまですよね?」
え? 俺、本当に俺? 何という意外な展開。にしても、俺の名前を知っているのはどういうことだ?
「心配されなくても帝都の冒険者ギルドから、お話は伺っていますよ」
ほー、そうなのか。って、あれ、でも、どうやって情報が帝都からこっちに来ているんだ? それに何で、俺がそのランだって分かるんだ? むむむ。悩む前に聞いてみよう。
『すまない、聞いても良いだろうか?』
他に冒険者の姿も見えないし、聞いてみてもいいよね。
「ええ、どうぞ」
眼鏡をつけた女性が眼鏡の位置を直しながら柔らかい口調で応えてくれる。うん? 眼鏡をつけ慣れてないのかな?
『どうやって帝都から情報を得たのだろうか? それと何故、自分が、そのランだと分かったのだろうか?』
教えて貰えるなら教えて欲しいよね。
「まず最初の質問ですが、それは冒険者ギルドの秘密です――と言いたいところですが、誰でも知っていることですのでお答えします。空をですね、飛んで情報を伝達する使い魔が各冒険者ギルド間を飛び交っているのです」
ほー。そんな便利なモノがあるのか。でも、あの嵐の海を飛び越えてくることが出来るほどなのかなぁ。それとも遠回りした? うーん、分からないな。
「もう一つは、この初級鑑定の魔眼が答えですね」
眼鏡の女性が自身の眼鏡を指差す。ほー、それ、何かのマジックアイテムなの?
「ここで私が冒険者ギルドに来た人物を鑑定をして正体を確認しているのです」
ほー。初級鑑定の魔眼って名前から想像するに初級鑑定の効果があるのかな? ちょっと気になるなぁ。えーっと、その眼鏡を俺が鑑定したら駄目かな?
『ちなみに、その鑑定で何が分かるのだろうか?』
眼鏡の女性が手を眼鏡にかけ、そのまま外す。
「お名前と――そうですね、悪意と言いますか、そういったモノを見ることが出来ます」
ふーん。俺の中級鑑定とそんなに変わらないね。結構、微妙な効果だなぁ。違いは悪意か――でもさ、悪意って言われても、そんなあやふやなモノで大丈夫なのかなぁ。いやだってさ、悪意なく人を殺せる狂人みたいなのが乱入してきた時は予防できないわけじゃん。うーん、まだ何か隠されてるような気がするなぁ。ま、これ以上は俺が知ったところで何の役にも立たないか。うん、ただの興味だし、これ以上は無理に聞く必要もないね。
そうそう、本題、本題。
『すまない、コレを』
俺は魔法のリュックから取り出したステータスプレート(金)と自身が首から下げていたステータスプレート(銀)を外し、そのまま眼鏡の女性に渡す。
「これは?」
『銀から金へ更新したいのだが、頼めるだろうか』
そうそう、これが用件なのです。
「分かりました。ではこちらで処理を行います。ただ――事前に伝えておきますが、元のステータスプレートは処理の関係上お返しすることは出来ません。それでもよろしいですか?」
む。そうなの? 銀も確保しておこうかなぁって思っていたんだけど無理なのか。駄目ですって言っても切り替えて貰えないだけだしなぁ。仕方ない、お願いします。
眼鏡のお姉さんが奥に消える。ふむ。
……。
……遅いなぁ。
暇に飽かせて冒険者ギルドの中を見る。帝都のスカイさんとこの冒険者ギルドよりは大きいけどスイロウの里やフウキョウの里にあった冒険者ギルドほどは大きくないな。やっぱり、あの眼鏡の女性が一人で切り盛りしているのかな? いやまぁ、さすがにそれは無いか。いやでもさ、余り繁盛している感じじゃないしあり得るか? うーん、寂れているのは空舞う聖院が攻略済みなコトと関係あるのかな?
お、ここにも依頼の紙が貼ってある。どんな依頼があるかなー。Cランクのシーサーペント討伐とかあるな。他には船の護衛が中心か。何だろう、全体的に難易度が高い気がする。難易度が高いのに冒険者の姿が見えないってことは、未解決のクエストが増えるってコトだよね。うーむ、これ、大丈夫なんだろうか?
そんなことを考えていると眼鏡だった女性が戻ってきた。
「処理は終わりました」
俺はステータスプレート(金)を受け取る。金色に輝く最高に素敵なステータスプレートだぜぃ。
『もし分かるならだが、銀との違いを教えて貰っても良いだろうか?』
そうそう。何も違いがないなら変える必要って無かったもんね。
「ええ、わかりました」
さすがギルド職員、ちゃんと知っているんだね。
「まずサブクラスのスキルの劣化がなくなり、レベルも上昇するようになります」
うお、マジですか。それだけでも大きなアドバンテージだよね。
「補正値もそのクラスだった時の半分が補正されます」
補正値も増えるのか! 半分でも増えるのは嬉しいよね。でもさ、この補正ってのがどれだけ効果があるのか微妙なんだよなぁ。あくまで補正だもんね。
「二つ目のサブスキルを有効化出来ます」
ついに来た! これでやっと獲得だけして効果の分からなかった換装スキルの確認出来る。取得は出来たけどいじることが出来なかったからなぁ。よし、この後すぐに確認しよう!
「大きな違いはそれくらいですね」
うむ、これは大きいな。でも、コレだとさ、まだまだ上のステータスプレートが有りそうな感じだよなぁ。
「本日は他にご用件はありますか?」
うーん、予定の詰まっている今、クエストを受けるのは得策じゃないし、他の用事はないかなぁ。
『いや、以上だ。かたじけない』
と、ギルドを出る前に換装スキルを確認しておこう!
サブスキル :換装ツリー
換装 LV0(0/10)
パージLV0(0/10)換装LV8
分身 LV0(0/800)パージLV8
全射出LV0(0/800)分身LV1
うーん、謎だ。何を換装するのかも分からなければ何をパージするんだ? パージって瞬時に装備品を外す感じなのかな。何だろう、ロボぽい感じだよね。いや、でもさ、俺はロボットじゃないしなぁ。うん、俺は人型ロボットじゃないよ。これからロボットが出てくる? 無い無い、さすがにそれはない。ないよね? うーん、試しに換装のスキル取ってみる? いや、でも、うーん。もうちょっとだけ考えよう。