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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
4  空舞う聖院攻略
260/999

4-19 追跡者?

―1―


「それでいつ向かうんだぜ? 俺は今すぐでも構わないんだぜ」

 キョウのおっちゃんってば、焦ってるねぇ。体調の優れなかった王様は亡くなってしまったんだから、もう焦る必要はないと思うんだけどなぁ。

「いえいえ、そう焦る必要もないでしょう。それに私どもにも準備がありますので……そうですなぁ、明日でどうですかな? 今日の夜はこちらで晩餐を用意しますよ」

 ほう、ご飯かね。

「夜か……、分かったんだぜ。それまで勝手に行動させてもらうんだぜ」

 お、自由行動か。じゃ、俺は買い物ですね。本当なら転移でフウキョウの里にでも戻りたいんだけどさ、こんな船の上みたいな場所だと転移のチェックを出来る場所がないからなぁ。仕方ない、現地で買うしかない!


「ほうほう、そうですか。では、こちらはこちらで準備をしておきますよ」

 美味しいご飯をお願いします。

「おい! お客人が一旦、お帰りですよ。案内を」

 宰相のチョビ髭おっさんが手を叩くと一人の猫人族の女性が現れた。召使いって感じなのかな? と、そうだ、忘れないように宰相を鑑定しておこう。


【名前:コラス・ツチーチ】

【種族:普人族】


 うーん、普人族だったか。魔人族を警戒しての鑑定だったんだけど考えすぎだったかな。ま、それじゃあ、買い物に行きますか。


 猫人族の女性の案内で艦橋を降りていく。途中、部屋とかあったから、そこが晩餐会の場所かなー。うむ、楽しみだぜ。


 兵の並んでいる通路へ。兵士さんたち、立ちっぱなしかぁ、キツそうだなぁ。俺に兵士は無理そうだ。それにさ、あの道化師みたいな男に仕えるとか、俺には絶対耐えられないよ。


「あんたらもあんな宰相を守るとか大変なんだぜ」

 キョウのおっちゃんが並んでいる兵士に絡む。って、キョウのおっちゃんってば、自由だなぁ。

「私たちはあの宰相に仕えているのではなく、この国に仕えているのです!」

 お、カッコイイ台詞。

「お、おい、私語は禁止だ」

 すぐに隣の兵士が諫める。うーん、兵士の方々も大変だよね。いやぁ、でも、兵士の人たちでも、あの宰相は『無し』なんだな。



そのまま建物の外へ案内される。はぁ、うんでは、自由行動ですな。


「俺は俺で情報を集めてくるんだぜ」

 はーい、キョウのおっちゃん頼みます。


「ぼ、僕は、僕で行動させてもらう!」

 ほう、ジョアンも単独行動か。何処か行きたい場所でもあるのかな?


 じゃ、俺はお店の方に行きますか! 買い物、買い物。って、その前に夜っていつ?

「旦那、18時くらいにはここに集まるんだぜ。時間はステータスプレートを見て欲しいんだぜ」

 了解であります。と、そうだ、ステータスプレートで思い出したけど、ここに冒険者ギルドってあるのかな。そっちも探してみよう。





―2―


 買い物に向けて、うろ覚えの道を歩く。うん? 何だろう、さっきからチラチラと何かの存在が見えるぞ。俺の後ろをチラチラと何でしょうね。

「マスターでも気付きますか」

 気付きますよ。14型さんよ、俺を無能のように言うのは止めてください。

「出てきなさい! その才能もないような跡のつけ方では子どもですら騙せないのです」


 ……。


 しばらく待っていると、その子はひょっこりと現れた。

「ばれてしまったのじゃー」

 むむ、あれ? 神国のお姫さん? 護衛は? え? というか何で? 俺の予想していた人と違うんですけど。てっきりコウさんが跡をつけてきていると思ったんだけどなぁ。むうむうむう。俺の勘違いか?


「にひひひ、お主、あの時の闘技場の魔獣であろう?」

 あの時がどの時かは知りませんけどね。にしても、この子は護衛も無しに何をしているんですかねー。

「どうじゃ、わらわに仕えてみぬか?」

 神国のお姫さまは冗談ぽく、そんなことを言う。はぁ、何を言い出すかと思えば……。神国ってアレでしょ、普人族至上主義で他の種族は認めない! みたいな国なんでしょ。そんな国には行けませんよ。

「今なら、美味しいご飯もつけるのじゃー」

 な、なんだと。ご、ゴクリ。そ、それは考えるなぁ。


 って、騙されないんだからね! はぁ、まぁ、俺は買い物に向かう途中だし、このお姫さまに関わっていても面倒なことにしかならなさそうだし、ちゃっちゃと無視しちゃいますか!


 すたすたすた。


「待て、待つのじゃー」


 すたすたすた。


「せっかく、護衛を巻いて来たのじゃ、話を聞くのじゃー」


 すたすたすた。


 そのままお姫さまを無視して歩いていると、王宮に行く途中に見かけた武器と防具のお店に到着した。さ、買い物だ!

「どうしたのじゃ? おお、買い物か!」

 そうなのじゃ。って、む、結局、ここまでついてきたのか。


「お、さっきも来てた人だね、買い物かい?」

 奥から店主とおぼしき男性が現れる。はーい、そうです。でも、さっきの人だってよく分かったね。

「いやあ、あんたら見ない顔だからさ。てことは封鎖、解けたんだろ?」

 だよだよ。全部、俺のおかげさ! いやまぁ、ファット団とキョウのおっちゃんとジョアンと14型のおかげでもあるけどさ。羽猫、お前はまったく役に立ってないから除外だけどな!


「海路が魔獣に封鎖されて、物流が止まって困ってたんだよ。こんな時分だから買い物に来てくれる人もない、食料は高くなる一方だしと……いやあ、今なら安くするから、どんどん買ってくれ!」

 おっしゃ、買うぜ買うぜ! えーっと、14型さん、お財布にはどれくらいのお金がありましたかね?


「なんじゃ、ランよ、何か欲しい物があるのか? それならわらわが買ってあげるのじゃ」

 って、マジで? 何か裏があるんじゃないの?

「その代わり、お願いがあるのじゃ」

 いやあ、タダより高いモノはないパターンですか。

「何、そんなに難しいことではないのじゃ。わらわと友達になって欲しいだけなのじゃ」

 へ? うーむ。今度は仕えるではなく、そう来たか。となると、これは返事をする必要があるか。


『ふむ。自分で良ければ構わないが――そうだな、友達になるなら奢って貰うわけにはいかないな』

 お姫さまに限定して天啓を授ける。いや、何だろう、キザな言葉を周りに聞かせるのって恥ずかしいじゃん。


「むぅ」

 お姫さまが指を頬に触れさせ考え込む。


「わかったのじゃ」

 そうそう。


「これでわらわとランは友達なのじゃ」

 お姫さまが手を伸ばしてくる。これは握手……でいいんだろうか? この世界の風習が分からないからどうしたら良いのか、困ってしまうな。って、そういえば、俺って、このお姫さまに名前を名乗ったか?

 俺が固まっているとお姫さまが、そのまま俺の小さな丸い手を握ってきた。

「友達なのじゃ」

 この世界、初の友達か? うーん、こんな小さなお姫さまと友達か。


「で、あんたら、何を買ってくれるんだい?」

 あ、すいません。すぐに買う物を選びます。

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