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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
4  空舞う聖院攻略
257/999

4-16 王位継承

―1―


「この国の王が隠れられたのは知ってるかね」

 うん、隠れた? どっかに逃げちゃったのか?

「おいおい、帝都では、ホーシアの王が亡くなったなんて聞いてないんだぜ」

 え? 死んだってコト? 隠れたって、そんな意味だったの?

「そうか、やはり伝わっておらぬか」

 そうだよ。

「体調が悪くて寝込んでいたってのは伝わっていたんだぜ」

 ほー、そうなのか。

「そこで話が止まっておるのか」

 止まっておるのだ。


「体調を崩された王は後継者候補を探し、二人の候補者が集まった。しかし、そこで魔獣によってホーシアが封鎖されたのよ」

 ふむ。候補者が集まったって、子どもが居なかったのかな? それとも血筋で継承していく訳じゃないのかな、どうなんでしょ。


「子どもはどうなったんだぜ?」

 キョウのおっちゃんの言葉にお爺ちゃんは首を横に振る。

「王に子どもはいない」

 居なかったのか。うん? でもキョウのおっちゃんの聞き方がおかしいな? 後で確認してみようかな。

「で、後継者候補ってことか、予想外なんだぜ」

 キョウのおっちゃんの思惑が外れたのかな。何か焦ってるぽかったもんなぁ、もしかして、王様の体調が悪いことを知っていたから焦っていたのかな。


「候補者の一人は、この国の将軍だった者の孫娘だ」

 ふむ。将軍自身ではなく、孫娘なのか。子どもではなく、孫、しかも女の子――この国は女王とか『有り』な国なんだな。


「もう一人が、今の宰相が連れてきた男よ」

 うん? ここで今の宰相が出てくるのか。

「今、宰相をしている男はな、王が体調を崩される前から、姑息な手段で取り入り我が物顔で権力を振るっていたのよ」

 おうおう典型的な悪者って感じがしてきたぞ。

「そして王が隠れられると、わしを宰相の地位から引きずり下ろし、自身が成り代わったのよ」

 あー、この人、権力争いに負けたのか。

「……んだぜ」

 キョウのおっちゃんが腕を組み考え込んでいる。口の中で言葉を飲み込んでいるのか、字幕に全て表示されないな。


 つまりまとめると、王様の生前に小ずるい男がやって来て王に取り入った。その頃から王が体調を崩し始める。子どものいない王様は後継者候補を集めた。後継者候補は将軍の孫娘と小ずるい男の連れてきた男の二人。そして王様が亡くなった。王様が無くなった後、小ずるい男は宰相の地位を奪い、今に至るって感じかなぁ。


 で、それを知って俺はどうすればいいんだ?




―2―


「すまないが、今の宰相の居場所が分かるなら教えて欲しいんだぜ」

 キョウのおっちゃんの言葉にお爺ちゃんが冷たいため息を吐く。

「ウドゥン帝国は、そちらにつく、と」

 キョウのおっちゃんは首を横に振る。

「俺は会ってみるだけなんだぜ」

 キョウのおっちゃんの目的が読めないなぁ。八大迷宮の『空舞う聖院』を攻略するって話じゃないの? 何か攻略するためには手続きがいるから、こんな話になっているのかなぁ。

「ふむ、わかったよ。場所はそこに居る、うちの者に聞くといい」

「わかったんだぜ」

 キョウのおっちゃんはそう言うと、部屋の隅に控えていた猫人族の女性の元へ。そのまますぐに場所の確認の話に入ったようだ。うーん、俺ってば蚊帳の外。まぁ、キョロキョロと部屋の中を見回しているジョアンも、俺の後ろで全く動かない14型も蚊帳の外なんだけどさ。


『ちょっとよろしいか?』

 とりあえずお爺ちゃんに天啓を飛ばしてみる。

「ほっ、ほうほう。これはこれは」

 うん、どったの?

「てっきり、威圧のために魔獣を連れてきたのかと思えば、星獣様でしたか」

 そうなのだ、星獣様なのだ。って、この人には星獣様が通じるんだね。

「して、星獣様は、この老いぼれに何の用かね?」

 おうさ。


『何故、将軍の孫娘が候補者なのだ? 将軍自身や将軍の子では駄目なのか?』

 俺の天啓にお爺ちゃんがニヤリと笑う。む。

「ほうほう。気になりますかな」

 なりますとも。

「まず、将軍、いや元将軍ですな――には継承権がないのですよ」

 そうなのか。

「そして、将軍の子は、将軍が勘当した身、今更、家には戻れませぬ」

 ふむふむ。

「それに将軍の子も王にはなれませぬ。候補者には血筋が大事なのですよ」

 ううん? どういうこと? 元将軍の子の嫁が王家の人だったってこと?


「この国にある『空舞う聖院』が攻略済みだということはご存じかな?」

 いえ、知りません。今初めて知りました。って、攻略済みだったのかよ! お、俺が全ての迷宮を攻略する野望が……そうか、そうか。

「王は、その攻略者の血筋なのですよ」

 ふむふむ。

「王の血に連なる者だけが『空舞う聖院』を起動することが出来る。そして、それこそが王たる資格なのですよ」

 ふむふむ……む? 起動する?

「候補者の二人は両方とも、起動することが出来ましたでな、だから、候補者なのですよ」

 ふむぅ。結局、王は血筋で選ばれるってコトなのね。


『大体分かった。かたじけない』

 俺の天啓にお爺ちゃんが微笑む。

「いえいえ、お力になれたのなら幸いです」

 何だろう、俺に対して随分と柔らかい対応な気がする。

「しかし、この歳になって、また星獣様に会えるとは……嬉しいものです」

 む? また? 他の星獣様っていうと、俺の頭の上に居る羽猫の親、神獣のファーさんか、それとも闘技場で戦った狼、フェンリルか。それとも俺の知らない星獣か。


「旦那、場所はわかったんだぜ。すぐに行くんだぜ」

 えー、もう出発するの? ここで一泊させて貰うとか、ゆっくりしてもいい気がするんだけどなぁ。


「では、俺たちは行くんだぜ。元宰相殿、お邪魔したんだぜ」

 そう言うとキョウのおっちゃんはずかずかと歩いて行く。ちょっと待ってくださいな。


『では、自分も行くとしよう。宰相殿、お話かたじけない、それでは!』

 俺はお爺ちゃんに天啓を飛ばし、キョウのおっちゃんの後を追う。


 さーって、次は今の宰相の家か。

10月5日誤字修正

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