表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
4  空舞う聖院攻略
249/999

4-9  イーグル

―1―


 洞窟の中を船が動いていく。うーん、どうやって操作しているんだろう。ファットは何か台座をちょこちょこと触っているけど、アレで操舵しているのかな? ゲーム機のコントローラーみたいな感じなのか?


 洞窟を抜けると、そこは海だった。いやまぁ、そうなんだろうけどさ。


 で、俺は何をするべきなのかな。


「あんたらはホーシアへ行きたい」

 ああ、その予定だな。

「俺様らは魔獣が増えて困っている」

 あ、そうなの?

「その原因の足無しイカを一緒に倒す」

 へぇ、それが原因なのか。にしても足が無い烏賊って……、それは烏賊と言えるのか?

「増えた魔獣が減ってホーシアまで行ける、お互い最高だよな!」

 あ、そういう予定だったんですね。


 船が高速で進んでいく。船内から見る外の風景がどんどんと流れていく。まぁ、海しか無い訳ですが。


「で、ファットさんはよー、魔獣が沢山で抜ける自信が無いから俺たちに手伝わせる、そういうことなんだぜ」

 船が海の上を動き出すのに合わせたのか、急にキョウのおっちゃんがそんなことを言い出した。そんな煽らなくても。

「な、なにおぅ!」

 キョウのおっちゃんの言葉にファットが叫ぶ。ほらほら。ちょ、ちょ、ちょっと険悪なムードになってきてるじゃん。


 俺が前に出ようとするのをキョウのおっちゃんが手で止める。

「旦那、ちょっと待って欲しいんだぜ」

 むう。ま、まぁ、キョウのおっちゃんにはキョウのおっちゃんの考えがあるだろうから待ちますか。

「船に自信があるなら、魔獣の群れを抜けてもいいと思うんだぜ」

 キョウのおっちゃんがニヤリと笑う。


 ……。


 少しの沈黙の後、ファットが口を開いた。

「ふふん、お前のたくらみはわかった!」

 得意気なファット。いや、あのさ、たくらみって……。

「俺様のネウシス号なら魔獣が多くても回避なんて余裕よ! けどよ、今後もあるから魔獣退治は手伝って貰うぜ!」

 今後か。ホーシアからの帰りも船だろうからな。船が通れるようになって困ることはないか――まぁ、俺の場合は転移で帰ることが出来るから必要ないんだけどね。


「魔獣退治の報酬がホーシア行き、それは変わらない。俺様の弟分の恩人でもよぉ!」

 ファットの言葉にキョウのおっちゃんが肩をすくめる。キョウのおっちゃんとしては急いでいるから面倒な魔獣退治なんてしたくない。だから、ファットを挑発して、さっさとホーシアに向かうように持っていくってやりたかったのかなぁ。




―2―


 キョウのおっちゃんが体調悪そうにフラフラしている中、しばらく船を進めていると、もう一隻の船が現れた。こっちは見るからに普通の船だな。ガレー船とか、そういう感じだね。けど、櫂が見えないな、帆だけで進む感じなのかな。あ、おっちゃん大丈夫? 船酔いか?


 新しく現れた船に合わせて、こちらの船の速度が落ちていく。何だろう、仲間の船とかなのか? こちらの船の方が速度は明らかに速かったから、無視しようと思えば出来たはずだしね。


 船と船が隣接する。

「俺様たちは、ちょっくら挨拶してくるぜ」

 ファットはそう言うと弟分の猫人族たちを引き連れて甲板へ。何だろう? せっかくだから、俺も見に行ってみるかな。


 俺もファットの後を追って甲板へ。ついてきたのは14型だけだった。ジョアンは体調が悪そうなキョウのおっちゃんの付き添いをしている。ジョアン、おっちゃんを頼むんだぜ。


 相手側の船の甲板には如何にも海賊って感じの大きな帽子をかぶったひげ面のおっさんと、その後ろにファット団と同じようなバンダナを巻いた猫人族たちが居た。

「ファーット、ようくやくお出ましかー!」

 ひげ面のおっさんが叫ぶ。うお、向こうの声がこっちまでしっかり聞こえるな。何だろう、何か声を響かせる魔法のようなモノでもあるのか?


「何だ、何だ、変わった形の船が近づいてきたと思ったら、イーグルの馬鹿じゃんよ!」

 ファットも負けじと叫ぶ。あー、あのひげ面はイーグルっていう名前なのかな? うーん、この世界にも鷲がいるのか?

「お前! 変わったって何だ、変わったって! お前の船の方がヘンテコじゃねえかよ!」

 ひげ面のイーグルが叫ぶ。

「俺様のネウシス号をヘンテコ呼ばわりだと! 羨ましいからって変なコトを言いやがってよ!」

 うーん。俺から見るとネウシス号の方が変な船って感じだな。

「う、羨ましくなんかないわい!」

 うーん、なんだコレ。


「で、何の用よ。俺様たちはこれから魔獣狩りよ!」

 ファットが腕を組み、自慢気に叫ぶ。

「ふん、ここ最近見かけなかった、変わった船を見かけたから声をかけたまでよ!」

 その言葉にファットが大きく笑う。

「はっはっは。俺様たちは海賊よ! お前らみたいな群れる海賊とは別よ! 自由気ままに好きなように動くってもんよ」

 ファットの言葉を聞いたひげ面が地団駄を踏む。

「お前が! そうやって勝手に動くからこっちは苦労してるんだろうが! 海賊にもルールがあるんだよ!」

 こっちの世界だと海賊も職業なのかな?

「組合を無視しやがって!」

 海賊組合があるのかー。こっちの海賊は進んでるなぁ。


「で、改めて聞くがよ、イーグルさんよー、何の用なんだ?」

 ファットのドスを利かせた声。低音が渋いね。


「お前も組合に入れ。正直、迷惑なんだよ!」

 その言葉にファットは再度大きく笑う。

「毎度、毎度、同じようなことをよ! これから、俺様たちが魔獣発生の原因を取り除いてやるからよ、お前らはありがたくその後にちまちまとした仕事をしてな!」

「な、なんだとぅ!」

 イーグルがわなわなと震えている。

「お前ら、向こうの用件は終わったみたいだ。戻るぜ」

 ファットが甲板を後にする。うんじゃ、観戦も終わったし、俺たちも船の中に戻りますか。


「さあて、無駄な邪魔が入ったがよ、魔獣の住み処はもう少しだ。行くぜ」

 ファットはこちらを見てニヤリと笑う。


 うーむ、ついに魔獣戦か。海の上で戦うとか考えたくないなぁ。どうやって戦うんだ? うーむ。

9月27日修正

誤字修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ