4-4 ギルド長
―1―
ヨハンさんの案内で船舶ギルドへ。町中も結構発展している感じだよね。何でも、このキャラの町は神国風になっているとか。帝国領なのに神国風でいいのか、とか気にしたら駄目なんでしょうか。
海に面した白い建物に到着する。建物と隣接するように大きな船が止まっているのが見える。建物の近くには竜馬車も――竜馬車もあるのか。
そのまま、建物の中へ。入ってすぐの受付には髭を生やした筋肉のおじちゃんが居た。いやいや、受付ってお姉さんじゃないの? 何で、こんな筋肉ダルマな人なの? おかしいよね、絶対におかしいよね。
髭の筋肉ダルマが俺を見て、何かおかしかったのか目元を揉み、もう一度俺を見る。
「おい、ヨハン!」
呼ばれたヨハンも俺を見る。そして手を叩く。
「ああ、ランさんだ」
うむす。じゃ、というわけでギルドに入るぜ。
何かを言いたそうに震えている筋肉ダルマを無視して、俺たちはギルドの中へ。
「こっちだよ」
はいはい、案内お願いします。
ヨハンさんの案内で奥へ。どんどん奥へ。えーっと、これ、このまま進んでも大丈夫? 何というか、部外者が入ったら不味い場所じゃないのか? ま、まぁ、ヨハンさんを信じて進むか。
「ランさん、ここがギルド長の部屋だよ」
って、ギルド長の部屋に案内されちゃった。これって、大丈夫なのか? いきなり、アポ無しで来ちゃったけど大丈夫なのか?
「じゃ、入るよ」
そう言って、ヨハンさんはノックもせずにドアを開ける。おいおい、本当に大丈夫?
その瞬間、大きな怒鳴り声が響いた。
「駄目だ、駄目だ、船はだせない!」
「何を言っているんだぜ、俺は船を借りるだけでもって言っているんだぜ」
あれ? この声?
「それでも駄目だ!」
うん? ううん? 何処かで聞いたことのなる声だな。
「ギルド長ー」
ヨハンさんが空気を読まずに中へ入る。え、あの、怒鳴り声、聞こえていたよね? なんなのこの人、なんなの?
失礼しまーす。俺とジョアン、14型も釣られて部屋の中へ。中に居たのは……。
「旦那、旦那じゃないか、待ってたんだぜ」
予想通りキョウのおっちゃんだった。あ、キョウのおっちゃんの方が先についたのね。
―2―
「旦那、このギルド長は話にならないんだぜ。俺は外に出て待ってるんだぜ」
そう言って、キョウのおっちゃんは部屋を出て行く。あ、ああ、そうなんだ。
「何だね、君たちは」
ギルド長はお洒落すぎる高そうな服に身を包んだガリガリの神経質そうな男だった。ギルド長は筋肉じゃないんだ。
「おい! 何で魔獣がギルドの中に! モースのヤツは何をやっているんだ!」
魔獣がギルドの中に侵入するとか、危ないよね。
「ギルド長、魔獣じゃなくて、ランさんたちだよ」
ギルド長が何を言っているんだって顔をする。
『ああ、自分がランだ。ギルド長、よろしく頼む』
俺はとりあえず一歩出て挨拶をする。まずは何事も挨拶からだよね。
「な、何だ、この魔獣は」
ギルド長の言葉にジョアンと14型が、俺の前に出る。
「ランは話の分かる、力ある魔獣だ」
「マスターが名乗っているのに、応えないとは、何て無礼なのです」
二人の迫力にギルド長が一歩下がる。そ、そうだね。
「わかった、わかった! それで何の用だ! それとヨハン! お前に頼んだ用事は終わったのか!」
あんまり騒ぎすぎると脳の血管、やっちゃうよ。
「ギルド長、頼まれていた確認なら、その魔獣をランさんたちが倒したよ」
ヨハンさんが説明をしてくれる。あ、そうだ。
『こう見えても自分はDランクの冒険者だ』
俺は一応、ギルド長に見えるようにステータスプレート(銀)を取り出した。これを見れば少しは理解してくれるかな。
「な、なんだと。う、うむ。間違いなく冒険者のようだが、魔獣が冒険者だとは……むむむ」
見間違いじゃないよ。
「で、その魔獣冒険者が何の用だ!」
ギルド長は怒鳴りながら長く伸ばした髭をいじっている。
『ホーシアに向かうための船を出して欲しい』
俺の天啓にギルド長が大きなため息を吐く。
「お前らもそれか! 今、海は魔獣が大発生して無理だ!」
そっかー。
『力になってくれそうな人に心当たりは無いだろうか?』
「ふざけたことを言うな!」
俺の天啓にギルド長が怒り出す。
「船を管理している、このギルドを無視するような、そんな輩がいてたまるか!」
あ、そうなんだ。そういうのも管理しているのね。
「でもファットなら」
ヨハンさんが、思わずって感じでぽろりと漏らす。ファット? アレ? ついさっき、そんな名前を聞いたような。
「その名前を出すな! 海賊ごっこに明け暮れているような不愉快な連中だ! 普通に船が出せている時は、こちらに被害が無く、ショー代わりになると見逃してやっていたら調子に乗って!」
最後のは独り言かな。
「もういい、お前たちも出て行け!」
俺たちは怒鳴り散らすギルド長に追い払われるようにギルドの外へ。う、うーん。
「旦那、どうだったんだぜ?」
外ではキョウのおっちゃんが待っていた。う、うーん。
「あのギルド長は話にならないんだぜ」
だよねー。
「旦那、宿をとっているんだぜ」
そう言ってキョウのおっちゃんが歩き出す。
「旦那、換金したお金を持ってきたんだぜ。それと、小僧、お前が頼んでいた加工が済んだ盾も持ってきたんだぜ」
俺たちはキョウのおっちゃんに案内されるままにキャラの港町を歩いて行く。
「後は宿についてからなんだぜ」
う、うむ。
そして、何故かついてくるヨハンさん。なんで、ついてくるんだ?
2018年8月31日修正
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