3-119 世界の壁内壁
―1―
キョウのおっちゃんと共に室内を調べる。円の中には入らないようにしないとね。にしても、水流を操るか。コレ、アレだ、そういったアイテムを使ってダンジョンを攻略していく的なギミックがあるんじゃね? でも、今まで探索した中では、そういった水流を操作しないと先に進めなさそうな場所なんて無かったよね。うーん、違うか。
俺とキョウのおっちゃんが調べている間、ジョアンは宝箱の蓋を持って何やら振り回している。どったの?
「旦那、とても隠し通路があるとは思えないんだぜ」
確かにな。
あ、そう言えば!
『キョウ殿、戻るぞ』
俺の天啓にキョウのおっちゃんがこちらを見る。
「どうしたんだぜ?」
いいから、いいから。とりあえず戻ろうぜ!
キョウのおっちゃん、ジョアン、14型と共に来た道を戻る。ジョアンは宝箱の蓋が気に入ったのか背負って持っていくようだった。ま、まぁ、何を持っていくかは勝手だからね。
狭い通路を抜け、台座のある地下室へ。
じゃ、転送を……いや、転送を使わずに戻った方がいいか。転送することによって何かの仕組みが動く可能性もあるもんな。
『このまま階段を上がるぞ』
「旦那、また上るのはキツいんだぜ」
長いからな。またこの道をこのまま上るのって、キツいよね。それでも上らないと。確認したいことがあるから仕方ないんだぜ。
「ふん、僕ならこれくらい!」
よし、ジョアンの許可も得たし、上りますか。
黙々と階段を上っていく。8階層分上るんだもんね、キツいよね。俺もキツい。
時間をかけ、階段を上り頂上へ。うん、頂上に変化はないな。ここで一度休憩するか? いや、先に進むべきだな。
油断すると落っこちそうな金属の橋を渡っていく。これ、怖いね。
橋を渡り、隠し扉の線が延びていた場所へと戻る。って、何も起きていない。てっきり、隠し扉が開いていると思ったんだけどなぁ。せっかく時間をかけて長い道のりを戻ってきたのに――うーん、勘が外れた?
いや、まだだ調べてみよう。
「旦那、壁にこびりついて何をやっているんだぜ」
いや、こびりついてって何さ。ちょっと調べているだけだよ。
『ここに隠し扉があるのだ。てっきり、先程の魔獣を倒したことで開いたと思ったんだが……』
キョウのおっちゃんが壁に近寄ってくる。
「俺も調べてみるんだぜ」
キョウのおっちゃんと二人で調べる。
しばらく色々やっていると隠し扉が勝手に開いた。壁に線が入り、機械的に上へと上がっていく。何で開いた? 時間差? うーん、まぁ、開いて良かったと言うべきか。
じゃ、壁の先に進みますか。結果おーらい、おーらい。
―2―
壁の中は代わり映えのしない普通の通路だった。周りは石壁か……。コレ、吹き抜け部分を回り込むように進んでいるのか?
またも長い通路。はぁ、ホント歩かせるね。
コレさ、コレならさ、頂上で休憩しても良かったよね。いや、でも、あちらで休憩していると壁が開いたのを見逃したかもしれないし――ま、今更か。
長い通路を歩いていると背後で大きな音がした。と、閉じ込められた? ま、どっちにしろ進むしかないから関係無いか。
進もう、進もう。さあ、進もう。
黙々進もう。
ある程度、進むと光が見えてきた。へ、もしかして外に出るのか。
そして、光の先へ。
そこは壁の外だった。広がる、一面の雪景色。えーっと、確か、永久凍土だったかな。魔族が住んでいる地なんだよね。ほー、こっちも冒険してみたいなぁ。ああ、ここが、こんな無茶苦茶高い場所じゃなければ、ね!
壁の向こう側に出たが、結局、降りることが出来る場所があるでなし、あるのは上る階段だけだった。壁を削って作られたかのような剥き出しの階段を上がっていく。落ちたら雪が受け止めてくれるかなぁ。でも、コレ、地上まで目がくらむような高さがあるし、死んじゃうかな。
せっかく向こう側に出ても階段を上がるだけとか、ホント、階段が好きな迷宮だよ。
そういえば、ここに来た理由って、魔族が世界の壁を越えてきている方法を調べに来たんだよな。となると、この通路を抜けてきたのかな? いや、でも、隠し通路の扉は閉まってたワケだし、通り抜けは出来ないか。それに、こんな高所まで上がる方法なんて余りないだろうし、別の方法かなぁ。あ、でも、空を飛べるなら、いくらでも方法があるのか?
そんなことを考えていたからか、バッサバッサと羽音が聞こえてきた。
現れたのは鷹の頭に猫科の下半身を持った魔獣、グリフォン。ここで、グリフォンかよ! 更に青い翼を持ったカラスのような魔獣も現れる。
ここで、戦闘か。
9月13日修正
こべ → こび