2-17 散策
―1―
魔法のことも聞けた。猫馬車も分かった。
さて。今日はこれからどうしようかな。流石に今からクエストを受けるって気持ちにもならないし、うーむ。
クエストを受けずに里の外を少し散策してみようかな。下手にクエストを受けて完遂出来なかったときが怖いしね。森ゴブリン達の退治を受けて、森ゴブリンが見つからなかった、とか目も当てられないし……うん、まずは下見か。
ということで里の外へ。本日、二度目ですね。
苔むした石畳の道を外れ、森の中へ。
しばらく歩くと一匹のホーンドラットと遭遇。まぁ、雑魚ですな。
――《スパイラルチャージ》――
槍がうなりを上げ螺旋を描きホーンドラットを削り飛ばす。瞬殺です。ただ、コレ、威力が大きすぎるのか死骸がズタボロです。素材として役に立ちそうにありません。ま、まぁ、熟練度を上げたと思えば、ね。スパイラルチャージ一回ごとに熟練度が8も増えているし。
目につくホーンドラットを槍スキルで蹴散らしながら進む。森ゴブリンには遭遇しない。うーん、意外とレアなのか? 小迷宮の森ゴブリンの巣にしか生息していない、遭遇しにくいってのはありそうな気がする。MSP稼ぎもしたいから魔晶石ポイントが手に入る敵を倒したいんですよねぇ。
浮遊スキルのレベル2までに必要なMSPは20になっていた。最高レベルがいくつか分からないけれど最低2にあげないと次のスキル、転移の習得も出来ないし、うーむ。
里からそれほど離れたつもりは無かったのだが、森の中に蜘蛛の巣が増えてくる。森だけあって虫が非常に多いんです。俺ってば虫はあんまり好きじゃないんですよねぇ。ホント、困ります。まぁ、今は自分が虫ですがッ!
そのまま気にせずに進む。蜘蛛の巣の規模が大きくなってきた。うん? これ人でも絡み取られそう。まるで自分が作る魔法糸みたいだ。
と、その時、木の上から糸が飛んでくる。うお?
糸は身体に絡みつきこちらの動きを封じる。俺が動けなくなったのを確認したのか、木の上から大きな、5、60センチはあろうかという蜘蛛が降りてくる。ちょ、ちょ、ちょ、これもしかして食われそうな感じなのか。
蜘蛛が大きな口を開けて迫ってくる。
――《糸を吐く》――
俺は魔法糸を放出。手近な木にくっつけ無理矢理移動する。
――《浮遊》――
浮遊スキルを使い大きな木の枝の上に登る。相手の糸は絡みついたままだ。自身の魔法糸を使い、ショルダーバッグから鉄のナイフを取り出す。外からナイフで絡みついた糸を切っていく。ふぅ、普段と逆だ、やられる側に回るとは!
俺は蜘蛛をにらみつける。さあ、反撃の時間だ。
お尻から出した糸にぶら下がっている大きな蜘蛛。
――《糸を吐く》――
大きな蜘蛛目掛けて魔法糸を飛ばす。蜘蛛は魔法糸に絡み取られ、そのまま地面へと落下する。
俺は木の上から蜘蛛へと飛びかかりスキルを発動する。
――《スパイラルチャージ》――
槍がうなりを上げ蜘蛛へと突き刺さり、そのまま柄が折れた。へ? はぁ? 壊れた? え? 何で? 俺、武器ってこれくらいしかないよ、え、どうしよう。
技の威力に武器が耐えられなかったんだろうか……。
蜘蛛の動きは封じたままだが、折れた槍は刺さったままだ。仕方ない。
魔法糸の先に鉄のナイフをくっつけ、振り回す。振り回された鉄のナイフが蜘蛛の身体をちょっとずつ切り裂いていく。少し時間はかかったが、なんとか蜘蛛を殺しきることが出来たようだ。
蜘蛛の身体を持って帰る気にはならなかったので、魔石だけを取り出す。
蜘蛛の経験値は36ポイント、MSPも1増えていた。アレ? これ意外と美味しい敵なんじゃね? よし、クエストに蜘蛛退治がないかを確認して、明日は蜘蛛退治に乗り込むとしよう……が、今日はもう帰ろう。
はぁ、武器を買わないと……。
―2―
里に帰り、そのまま鍛冶屋へ。
『すまない、槍が折れてしまったのだが』
「な、なんだと!?」
犬人族のホワイトさんが奥から出てくる。うーむ、いつ見ても犬の頭って言うのはインパクトがあるなぁ。ちなみにホワイトさんはドーベルマンみたいな感じです。それもあってか最初の時にコボルトを想像したんですよね。
「ちょっと見せてみろ」
ホワイトさんに折れた槍を渡す。
「お前、手入れとかしてたか?」
へ? 手入れ? 何のこと?
「はぁ……。お前な、武具は大事に使え。特に武器なんてお前の命と一緒なんだぞ!」
う、何故か武器は壊れない物だと思い込んでいた。そうだよね、壊れない物なんてないよね。
「自分で手入れが難しいなら、せめて俺のとこに持ってこい。タダってワケにはいかないが、格安で手入れしてやる」
『そうさせて貰おう』
「馬鹿野郎、そうさせて貰おう、じゃねえよ。少しは真面目に考えやがれ」
う、すいません。
『ち、ちなみに新しい武器が欲しいのだが、柄の部分も鉄製の槍はあるだろうか?』
「柄も鉄製か……重くなりすぎて余り実用的じゃねえな。それなら杖武器の方が良いくらいだな」
うーん、柄も使って戦うわけじゃないし、そんなものなのかなぁ。壊れた時用に数を持った方が良いのかな。
『ちなみに一番安い槍だと何になるのだろうか?』
「ホーンドラットの角を使ったホーンドラットスピアだな。1280円だ。投げ槍として大量購入をする冒険者もいるな」
なるほど。角の使い道ってこんなところに……。
「壊れにくい槍を探しているなら真銀の槍にリペアなんかの魔法を付与してもらうのが一番だな。ただまぁ、金額は恐ろしいことになるがな」
出ました、魔法付与。真銀ってアレか、ミスリルとかそんな感じの物か!? リペアって単語からすると自動修復ぽい感じがする。
『ちなみにお値段は……』
「まぁ、安くても5242880円くらいはするんじゃねえかな」
はい、無理。小金貨128枚とか頭おかしい。しかも安くてもって、安くてもって。500万は無いなぁ。ソレ、ちょっと良い車買うようなもんじゃん。ローンでも組めないと無理です。
『すまない、今回も鉄の槍を貰えるだろうか』
「はいよ、毎度あり」
今回も銀貨3枚を取られた。手持ちに銀貨が無かったので小金貨を渡してお釣りを貰った形です。ああ、小金貨の枚数が増えるのすっごい楽しみだったのに……。
とぼとぼと宿に帰ることにします。
4月23日修正
そうさして貰おう → そうさせて貰おう
6月2日修正
誤字修正