3-113 世界の壁第二隔壁
―1―
髭と鱗のある魚のような魔獣が口を出して水弾を飛ばしてくる。それら、次々と飛んでくる当たると痛そうな水弾をジョアンが大盾で防ぐ。やるじゃん。
と、ここは俺の出番だな!
俺は14型からコンポジットボウを受け取り鉄の矢を番える。喰らえ!
放たれる鉄の矢。ああ、水の中だから回収は難しいか。ちょっと残念だな。と、そんなことを考えていた俺の前で、鱗魚が水の中に潜った。え? 水に刺さる鉄の矢。ちょ、え? 鉄の矢はそのまま水の中へと消えていく。ちょ、おま、え? 水の中に潜って回避するとか有りかよ!
俺は次の鉄の矢を番える。よし、次は水ごと吹き飛ばしてやる!
――《集中》――
次はタイミングを間違えないぜ!
――《チャージアロー》――
鉄の矢に光が集まる。潜ろうがお構いなしだ!
鱗魚が口を出し、水弾を飛ばしてくる。次々と飛んでくる水弾をジョアンの大盾が防ぐ。ナイス! 次はこっちだ!
こちらが矢を放とうとした瞬間に、またも水に潜ろうとする鱗魚。そこへ煌めく光が飛ぶ。なんだ?
「今なんだぜ!」
キョウのおっちゃんか! 小さな丸い鉄の塊が鱗魚に当たり、鱗魚が空中へと跳ねる。
今だ!
コンポジットボウから放たれた光り輝く鉄の矢が、空中に跳ねた鱗魚を貫く。どうだッ!
鱗魚は水へと落ち、そのまま周囲の水を赤く染めながら沈んでいく。アレ? これ素材や魔石の回収が出来ないんじゃね?
「旦那、次なんだぜ!」
キョウのおっちゃんが叫ぶ。次々と顔を出す鱗魚達。12、3はいるのか? それらが一斉に口を開く。おいおい、1匹じゃなかったのかよ!
「僕が!」
大盾を構え前にでるジョアン。急ぎ、ジョアンの後ろに隠れる俺とキョウのおっちゃん。無数の鱗魚から飛んでくる水弾をジョアンが大盾によって耐える。ちょ、洒落にならない。……いや、全員が口を出している今がチャンスか?
ガツンガツンと大盾に水弾が当たっている音が何度も何度も響く。
俺は急ぎコンポジットボウから真紅に持ち替える。
『14型!』
背後に控えていた14型から2本の鋼の槍も受け取る。3槍流だぜ!
――《飛翔》――
そのまま空中へと舞い上がる。行くぜ!
――《スピアバースト》――
赤い光となった真紅と共に水へと突っ込む。舞い上がる水しぶき。そして走る赤い衝撃波。吹き飛ぶ鱗魚達。
――《浮遊》――
急ぎ浮遊を使い空中に浮かび、水の中に沈むのを防ぐ。うん、この体で泳げるか分からないからね。
――《飛翔》――
そのまま再度、飛翔を使い、吹き飛んだ鱗魚達を真紅と鋼の槍で貫いていく。そして、そのまま空を駆け、キョウのおっちゃん達の元へ。
高速戦闘だ!
『大量だな』
真紅と鋼の槍には無数の鱗魚が刺さっていた。見ると鋼の槍で貫いた鱗魚達はまだ息があった。真紅の方は絶命しているな。うーむ、これも武器の差だろうか。
「何をやったんだぜ? 魚もどきが吹き飛んだのとそれが次々と消えていったのしか見えなかったんだぜ」
あー、飛翔って高速移動だもんね。普通の人だと目で追うのが難しいって感じなのかな? こ、これは、俺もいよいよもってチートキャラ化してきたか?
いやぁ、陸上にあげたから魔石や素材の回収も出来るね。さすがにこれを食べようとは思わないけど、持って帰れば某かのお金になるでしょ。生きていた鱗魚を殺し、魔石を回収した後、魔法のウェストポーチXLに収納する。大量大量。
にしても、結構MPの消費がキツいな。飛翔も浮遊と同じでガンガンMPを消費するからなぁ。飛翔って、効果時間が短いけど再使用時間も短いから、間に浮遊を挟めば連続使用も可能なんだよな。ただ、俺の最大MPのことを考えると2連続が限界ってとこか。飛翔は便利だけどさ、MPを残すことを考えると頼り切りには出来ないな。
さ、どうしようかな。
―2―
溜まった水を見る。うーん、で? って感じだよね。これ、普通なら木の板なんかも一緒に持ち上がって来るとかありそうじゃない? だってさ、このままだと、今ある高さまで水かさが増したってだけで、別に向こうに渡れるワケじゃないしさ。
それとも何かね、泳いで渡れ、と。えーっと、この体で泳ぐ自身がないんですけど。
「旦那、旦那なら向こうにいけると思うんだぜ」
あー、キョウのおっちゃん、それな。確かに俺なら飛翔を使って向こうに渡れるな。でも、おっちゃん達をどうするか、なんだよな。さすがに抱えて運ぶのは……。ちょっとの距離ならまだしも、結構な距離があるからさ。途中で墜落しそうだよ。
うーん。
「ロープならあるんだぜ」
キョウのおっちゃんが丈夫そうな長いロープを取り出す。お、さすがはおっちゃん! 準備がいい! 冒険者ならロープを持つのは必須だよね。てーぶるとーくなあーるぴーじでも冒険者の必須品って書いてあったもんね。ぷーろ、ぷーろ。でも、コレ、向こうまでには長さが全然、足りないよね。あ、そうだ。
――《魔法糸》――
俺は魔法糸のスキルを使い、その糸をおっちゃんのロープに結びつける。ふふふ、俺が糸を出せる芋虫で良かったな! 感謝するが良いぞ!
で、どうしよう? 俺が持って飛翔で向こうへ飛ぶのはいいよ。ここ、何か、紐を巻くような出っ張りとかないよね? 誰かに持って貰うにしても、飛翔の高速な移動だとロープが一瞬で吹っ飛びそうなんですけど、大丈夫?
「これは私が持つのが正しいようですね」
14型が名乗りを上げる。え? どうしたの14型さん。君らしくない言動だと思うんですけど。
「ふぅ、マスターの連れの方々ではマスターの飛ぶ勢いに負けて千切れ飛ぶでしょうからね。私が! 優秀な私が居たことを感謝するのです」
あ、はい。じゃあ、頼みます。
14型にロープの片方を持って貰う。
『では、行くぞ』
――《飛翔》――
俺はロープを持ち塔へと飛ぶ。ふらいんぐいもむしだ!
途中、飛翔のスキルの効果が切れたため、浮遊を使い、再使用する。うーん、MPを回復させてなかったらやばかったな。ここはMP回復用の魔素が多いんだよな。魔獣が少ないことと関係があるんだろうか。
そのまま塔へと着地し、塔の柱に結びつける。うむ、柱があって良かった。
『こちらは大丈夫だ!』
俺は向こうへと天啓を飛ばす。天啓なら届くでしょ。
俺の声が聞こえたのか張られたロープがしなる。ゆっくりとだが、ロープを伝ってキョウのおっちゃんが渡ってくるのが見える。あれ? おっちゃんだけ?
しばらくしてキョウのおっちゃんが塔に到着する。
「いや、アレなんだぜ。どっちにしろ、小僧はこれを伝って渡れるほど器用じゃないと思うんだぜ」
そっかー。って、意味ないじゃん! それに14型も渡れないじゃん。
「ああ、旦那の従者な。凄かったんだぜ。凄まじい負荷が掛かっているだろうに涼しい顔でロープを持って耐えていたんだぜ。アレを見たら、逆らったら駄目だって思ってしまうんだぜ」
あ、そんなに凄かったんだ。いやあ、これも力のパーツのおかげだろうか。も、もしかして14型って、もしかすると、凄いのか? あんなヘボっぽいのに? う、うーむ。
「旦那、とりあえず向こうの二人には待って貰って、こちらを調べようと思うんだぜ。もしかしたら、何か、合流するための手段が見つかるかもしれないんだぜ」
ま、まぁ、それしかないよなぁ。
よし、じゃあ、キョウのおっちゃんと塔を探索しますか。
9月8日追加
にしても、結構MPの消費がキツいな。飛翔も浮遊と同じでガンガンMPを消費するからなぁ。飛翔って、効果時間が短いけど再使用時間も短いから、間に浮遊を挟めば連続使用も可能なんだよな。ただ、俺の最大MPのことを考えると2連続が限界ってとこか。飛翔は便利だけどさ、MPを残すことを考えると頼り切りには出来ないな。
でも、コレ、向こうまでには長さが全然、足りないよね。あ、そうだ。
――《魔法糸》――
俺は魔法糸のスキルを使い、その糸をおっちゃんのロープに結びつける。ふふふ、俺が糸を出せる芋虫で良かったな! 感謝するが良いぞ!
途中、飛翔のスキルの効果が切れたため、浮遊を使い、再使用する。うーん、MPを回復させてなかったらやばかったな。ここはMP回復用の魔素が多いんだよな。魔獣が少ないことと関係があるんだろうか。