3-112 世界の壁第二隔壁
―1―
休憩大事。俺一人だと、黙々進んでしまうから、休憩のことを忘れてしまう――仲間が居るとそういうことも気付かせてくれるね。
うん、大事大事。
14型が食事の用意を始める。階段に寄りかかって食事か……。学校とかを思い出すな。
メイドセットからフライパンを取り出し、魚を焼き始める。いや、火はどうしているんだよ。なんでフライパンがじゅうじゅう言い始めているんだよ。だから火はどうしているんだ、おかしいだろ。こ、これも14型の謎力だと言うのか……。
そのまま3匹の魚を焼き上げ、取り出した謎野菜を盛って完成である。小っこい羽猫は謎野菜だけをもしゃもしゃと食している。じゃ、食事にしますか。
焼けた魚をサイドアーム・ナラカで直接掴み、そのまま口に入れる。もしゃもしゃ、ばりばり。もしゃもしゃ……。
うん。
うん、うん。
熱い!
熱い、熱い。口の中が焼けそうだ。なんだ、コレ。外側はキレイな焼き色だけど、中がマグマみたいになっているぞ。14型、何をしやがったんだ。
謎の焼き魚にキョウのおっちゃんの箸がのびる。ヤバイッ!
『待て!』
俺の天啓にキョウのおっちゃんの箸が止まる。
「どうしたんだぜ?」
そのまま食べるのは危険だッ!
『切り分けながら、ゆっくり冷まして食べるといい』
14型の謎調理の犠牲になるのは俺一人で充分だぜ!
はぁはぁ、焼け死ぬかと思った。
食事が終わり、そのまま休憩をする。
『他の八大迷宮もこんな感じなのか?』
俺の天啓にキョウのおっちゃんが首をかしげる。
「他ってのが、どうかは分からないが、ここの迷宮は変わっていると思うんだぜ」
だよなー。世界樹も大きかったし、凄く広かった。大って付くのは伊達じゃないよね。小迷宮も大きい気がするけど、八大迷宮を探索した後では、ああ、小だったんだって感じになるもんね。
「ぼ、僕も……」
あー、ジョアンよ、疲れているなら無理に話に参加しようとしなくても良いぞ。
「こんな感じの迷宮は北にもあるって聞いているんだぜ」
ほー、北にもあるのか。
「あっちは海ばかりだから、海の中にあるらしいんだぜ」
ほー、海の中か。そっちも、そのうち攻略に行きたいなぁ。
「さ、そろそろ休憩は終わりなんだぜ。出発するんだぜ」
あ、はい。そうだな、ちゃちゃっと登り切っちゃいますか。
―2―
つづら折りになった階段を上り続けると頂上が見えてきた。や、やっと終わりか。単調さに死ぬかと思ったんだぜ。これ天井があるから、転移も使えないしさ、戻るのも、また来るのも、大変だな。うーん、考えたくないなぁ。
頂上に登り切ると、そこは吹き抜けになっていた。
登り切った先自体は左右に壁のある小さな部屋のような造りだ。しかし、目の前、俺の見ている先は吹き抜けになった大きな空間が広がっていた。
そんな、くりぬかれた大きな吹き抜けの真ん中に塔が立っている。今まで上ってきた分が、全部、吹き抜けになっているのか? これ、落ちたら確実に死ぬな。
と、中央の塔に渡る方法が無いぞ? これ、どうやって塔に渡るんだ?
「旦那、これを見て欲しいんだぜ」
キョウのおっちゃんが呼んでいる方を見ると、壁に横線が引かれていた。ん? なんだコレ。横線は縦に8本あるな。
「旦那、この線の横は、スイッチになっているみたいなんだぜ」
見ると線の横にはエレベーターにあるような四角いボタンが付いている。うん、それは俺も気付いたんだよ。が、それも気になるけど、もっと気になるモノが……。
この頂上部分の横壁には左側に横線とスイッチが、そして右側の壁には隠し扉って線がのびていた。これ、俺だから気付いたけどさ、世界樹の外に出る部分にあった隠し扉と同じ感じだよね。
俺は隠し扉に近づき調べてみる。うーん、壁にスイッチのたぐいは見えないな。世界樹の時みたいに順番にスイッチを押すとかではないのか……。
「旦那、そっちには何もないんだぜ?」
キョウのおっちゃんでも気付かないような隠し扉か。うーん、やはり反対側の横線が、この隠し扉を開けるためのスイッチなのかな。
よし、押してみよう!
『キョウ殿、そちらのスイッチを押してみよう』
俺の天啓にキョウのおっちゃんが頷く。
「わかったんだぜ。で、どれから押すんだぜ」
そこはキョウのおっちゃんの勘に任せるんだぜ。
「上から順番に押してみるんだぜ」
キョウのおっちゃんが一番上のスイッチを押すと、大きな音が、何かを放出するかのような大きな音が聞こえてきた。うん? ま、まさか!
俺は慌てて吹き抜けへと走る。
音は吹き抜けの下の方から聞こえる。これは間違いない!
『このまま待つぞ』
しばらく待っていると、下の方に水が溜まっているのが見えた。水かさはどんどん増えていく。長い時間をかけて水が吹き抜け一杯に溜まる。
なるほど、縦に8個のスイッチ……、これ、どう考えても水位を調節するスイッチだよね。もしかして水位を調節しながら迷宮を探索しろってコトなのか?
ゲームではよくある仕組みだけどさ、現実だと、大掛かりでダイナミックな動きは感動するけどさ、凄い時間が掛かってやってられないんですが……。
「旦那、危ない!」
キョウのおっちゃんの声。え? 考え事をしていて……。
「僕が!」
ジョアンが大盾を構えて俺の前に立つ。
俺の立っている場所まで増えた水の中から何かが口を出し、そこから水の球を飛ばしていた。
ジョアンが水の球を大盾で防ぐ。でも、危険感知が働かなかったってことは、そこまで驚異じゃなかったってことだよね。でも、ありがとさんなんだぜ!
さあて、ここでやっと魔獣との戦闘か。
9月8日修正
「旦那、この線、スイッチになっているみたいなんだぜ」 → 「旦那、この線の横はスイッチになっているみたいなんだぜ」 見ると線の横にはエレベーターにあるような四角いボタンが付いている。