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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
3  世界の壁攻略
224/999

3-108 世界の壁外壁

―1―


 休憩を終え、出発する。はぁ、階段、階段、また階段。


 世界樹とは違い、階段の長さで心を折りに来る感じなんですね。


 階段の長さからか、キョウのおっちゃんも、ジョアンも静かだ。そりゃね、喋る元気もなくなっちゃうよね。14型は変わらず元気みたいだけどさ。と、小っこい羽猫が俺の頭から降り、階段にぐでーっと横たわる。もしかして疲れたアピールか? 俺の頭の上で殆ど楽をしていた小っこい羽猫よ、何故、お前まで疲れたアピールをしているのだ。この小っこい羽猫は演技派だな!


 黙々と階段を上がる。


 もくもく。


 もくもく。


 黙々と階段を上がり続けていると何もない垂直の壁が見えてきた。も、も、も、もしかして行き止まりですか。ここまで来て行き止まりですか。俺の心を折りに来ていますか。


 そして、その行き止まりの前には小さな人影があった。うん? 誰か居るのか? まだ距離があるから詳しくは分からないけどさ、人だよね、魔獣じゃないよね。人かぁ、人だよなぁ。

 そりゃあ、解放されている迷宮なんだからさ、俺たち以外のメンバーが居てもおかしくないよな。俺たちが必ず最初に迷宮に入って、最初に攻略出来る訳じゃないよな……当然か。


 階段を上り、人影に近づく。胸当てを付けた冒険者の女の子かな? 何だろう、女の子が不思議な儀式を繰り返している。女の子の前に小さな木が生まれ、それを刈り取る作業を黙々と繰り返している。いや、ホント、何の儀式だ? これ、関わり合いにならない方がよい感じじゃないか? 大丈夫か?

「旦那……」

 キョウのおっちゃんがささやくような小さな声で話しかけてくる。ああ、注意した方がいいってことだよね。


 ある程度まで近くに寄ると、女の子がこちらへと振り返った。気付かれた?


 俺の後ろからガシャガシャンと響く金属鎧の音――ジョアンか……。そりゃそうだよね、こんな金属鎧の目立つ音がしていたら気付くよね。気付かない方がおかしいよね。

 俺がジョアンを見、キョウのおっちゃんが小さなため息を吐いてジョアンを見る。

「な、何だ!」

 いや、何でもないよ。まぁ、下手にこそこそと近寄ったりしたら、相手に要らぬ用心をさせてしまうかもしれないからね。逆にこれで良かったのかもしれないね。


 女の子が木を刈り取る作業を止める。それに合わせて木が生えてこなくなった。


 向こうは腕を組んで、こちらが上がってくるのを待つようだ。ふむ。いきなり襲いかかられるってことは無さそうだね。


 じゃ、そこまで黙々と階段を上がりますか。




―2―


「んんー。もしかして水が消えましたか」

 女の子が話しかけてくる。


 銀の長い髪を後ろで縛り、そこから尖った耳が覗いていた。服装は橙色のマントに赤い胸当て、腰には木で装飾された剣を吊している。そんな女の子? だった。

 もしかして森人族か?

「あんた、森人族か。帝都では珍しいんだぜ」

 そういえば、帝都で森人族を殆ど見かけないな。ナハン大森林は住人の殆どが森人族だったのにね。

「んんー」

 何だろう、この人、誰かに似ているよね。あー、シロネさんか。森人族って種族的に似たような顔になるのかな。と、そうだ。

『自分は氷嵐の主という』

 俺の天啓に、目の前の女の子が首をかしげる。

「んんー。もしかして、その武装した青いジャイアントクロウラーは星獣様ですか?」

 そそ、星獣様ですよ。うーむ、何だか懐かしい感じのやりとりだな。

「ランの旦那なんだぜ」

「ランだ!」

「マスターです」

 あ、はい。色々な呼ばれ方をしていますね。

「俺はキョウなんだぜ」

「ぼ、僕はジョアンだ!」

「……」

 そして名乗らない14型……。ま、まぁ、14型の自己紹介は必要ないから、気にするだけ無駄か。

「私はクロアですねー」

 クロアさんね。


 キョウのおっちゃんが俺に近寄り、小さな声で話しかけてくる。

「森人族は見た目と年齢が合ってないんだぜ。若く見えるからと油断していると足下を掬われるんだぜ」

 なるほど。クロアさんが100歳とか、そんな可能性もあるワケか。


「ところで、クロアさんよ、こんなところで何をしているんだぜ」

 キョウのおっちゃんの言葉にクロアさんは苦笑する。

「んんー。何をって、冒険者のすることと言えば、迷宮探索ですね」

「一人で?」

「ええ、一人ですねー」

 一人って珍しいのかな。

「昔に、ちょっとしたことがあったのですねー。それ以来、私はずっと一人ですね」

 何だろう、クロアさん一人を残して全滅したとか、そんな感じだろうか。

「すまない、嫌なことを聞いたんだぜ」

 んんー。キョウのおっちゃん、絶対に悪いと思ってないよね。

「んんー。ところで話は戻りますが、あなたたちが来たと言うことは水は消えたんですか?」

 消えたね。なるほど、クロアさんは閉じ込められていた系なのかな。

「消えているんだぜ」

 キョウのおっちゃんの言葉にクロアさんは腕を組み考え込む。

「この迷宮に住んで長くなるのです。それなら一度、戻るのも良いかもしれないですか」

 長くなるのか。迷宮に住むとか、凄いな。どうやったら、そんなことが出来るんだ?


「いや、それはちょっと待って欲しいんだぜ」

 キョウのおっちゃんが、それを止める。うん? 別に帰りたいなら帰って貰っても構わないと思うんだけど、何かあるのかな?

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