3-107 世界の壁外壁
―1―
焚き火跡の先は、またも階段だった。階段、階段。ここは階段地獄か。ちょっと、うん、うんざりするなぁ。
そして長い階段を上った先はまたも壁の中への入り口になっていた。中と外を交互に出入りして上っていく感じなのかなぁ。まぁ、他に道もないし壁の中に入りますか。
薄暗い壁の中へ。まずは……っと。
――《ライト》――
小っこい羽猫が光り輝く。うん、小っこい羽猫、役に立っているぞ。
今度の通路は、端の方を水が流れているんだな。この水が何かのギミックに……ないか。
黙々と通路を進んでいると前方からうっすらと青い半透明な塊がふわふわと漂っていた。何だ、アレ?
「ゴースト系みたいなんだぜ」
何だ、何だよ。ゴーストって何だよ! そんな存在も居るのか?
『死者が霊となっているのか?』
俺の天啓にキョウのおっちゃんが不思議そうな顔をする。うん? 天啓が通じていない?
「霧が意識を持ったような存在なんだぜ。魔石を持たず、剣などの直接的な攻撃が効かない強敵なんだぜ」
ゴースト系って名前だけど、別に幽霊ってワケじゃないのね。にしても物理無効系か。どうやって倒すんだろう。とりあえず真紅で突いてみるか。
ふわふわと漂う霧の塊を真紅で一突きすると、その謎の物体は耳障りな悲鳴を上げて消えた。へ? もしかして死んだ? い、一撃だと。
強敵って嘘じゃん。余裕じゃん。しかも一撃とか……。
「旦那の、その武器はなんなんだぜ」
なんなん、って聞かれても……。魔獣武器? 魔石を食べて成長する武器? って感じだよなぁ。
そのまま通路を進むと何度か霧の塊が現れたが、どれも真紅の一撃で消えていった。楽勝じゃん。
そして、またも階段。うげぇ、もう上るの面倒なんですけど。はぁ、でも頑張って上がりますか。
階段を上がる途中も霧の塊が現れる――それらも真紅の一撃で消していく。何だ、コレ。モグラ叩きか何かか。壁をすり抜けたり、階段の床下から現れたりするが、どれも線が見えて事前に分かっている俺からすると、一撃だもん、全然脅威じゃない。
「こいつらの攻撃は受けることも防ぐことも出来ない、厄介な攻撃なんだが、旦那が居ると楽でいいんだぜ」
はいはい、俺に任せてくださいね。
―2―
階段を上りきると、またも一本道の通路が続いていた。うーん、単調。
通路を進むと透明なゼリーに包まれた骸骨達が現れる。おお、2度目だね。でも、こいつらも雑魚なんだよなぁ。さっきはキョウのおっちゃんが投げた短剣で倒したし、今度は鋼の槍で貫いてみるか。真紅で貫くのは何かあった時が怖いからね。
後ろに控えた14型から鋼の槍を受け取り、スケルトンゼリーの魔石を貫いてみる。鋼の槍はゼリーをあっさりと貫通し、スケルトンの魔石を砕く。そのままばしゃんとゼリーが弾け、骨が転がる。うわ、楽勝過ぎる。これ、苦戦する要素がないぞ。
何だろうね、全体的に敵が弱すぎる。
もっともっと、俺が駆け出しだった時に戦っていたら苦戦したのかなぁ。
スケルトンゼリーを破壊し、通路を進むと、またも外壁の外に出た。うーん、中と外を行き来するのはいいんだが、一本道で宝箱も無いとは……モチベーションが下がるなぁ。
そして階段。うわ、またか。またかまたかまたかまたか! げんなりする。
この体型だと階段を上がるのがキツいんだよ!
ああ、もうね! 飛翔で一気に駆け上がってやろうか!
はぁ、まぁ、ここしか道がないし、上がりますか。これで行き止まりだったらテンションが一気に下がりそうです。
階段を上がっている途中に横のジョアンを見る。ジョアンは無言だ。そういえば、ここに来てから余り喋らないな――もしかして、喋るのもキツいほど疲れているのか? 重さを感じないスキルがあるとはいえ、重量のある鎧を装備して、ずーっと階段を上がっているんだもんな、そりゃあ、疲れるよな。それでも文句を言ったり、足を止めたりしないのは立派だよなぁ。
よし!
『うーむ、足が動かぬ。この体型だからな、階段の上りがキツいのだ』
俺は皆に天啓を授ける。まぁ、飽きてはいるけれど、そこまで疲れて無いんだけどね。
「な、なんだ。ランはだらしないな!」
そういったジョアンは息が上がっている気がするけどね。
「旦那、へばったんですかい。それなら次に、休めるような踊り場があれば――そこで休むんだぜ」
『うむ、そうしよう』
しばらく階段を上っていると踊り場が見えてきた。よし、あそこで休憩だ。
見えた踊り場まで一気に駆け上がり、丸くなる。
『もう動けぬ』
「では、旦那。ちょっと休憩するんだぜ」
キョウのおっちゃん、ジョアンが座り込み休憩する。ジョアンよ、息が上がっているようだな。ゆっくり休憩するといいぞ!
にしても、そろそろ中間地点みたいなの、ないかなぁ。転移で帝都に戻るのはいつでも出来るけどさ、またここまで上ってくるのが地獄過ぎる。
はぁ、そろそろ変化が欲しいなぁ。
2020年12月13日誤字修正
中間地点みないなの → 中間地点みたいなの