2-16 魔法
―1―
そうだ、魔法のことを聞いてみよう。猫馬車のコトも分かったし、次は魔法だ。
今日はギルドにちびっ娘が居たな。うん、丁度良いね。
里の中へ。
露店の前を歩いていると美味しそうな食べ物がちらほらと……そういえば外食ってしてなかったなぁ。
よし買ってみよう。
やはり気になるのは何かの串焼き。前回、食べたときの味が忘れられないんですよね。
「お、芋虫のあんちゃん、これに興味があるのかい?」
露店のあんちゃんが声をかけてくる。このお兄さんも普人族に見えるけど、商売関係に携わっているのは普人族しかいないのかな。
『うむ。ちなみに何の肉だろうか?』
あんちゃんのにやりとした顔。
「こいつはな、グリーンヴァイパーの肉さ」
ま、マジですか。グリーンヴァイパーって蛇ですよね、蛇のことですよね! そうか蛇の肉か。そういえば蛇の肉って鶏肉みたいな味がするって聞いたことある。そうか……。
ま、いっか。
『貰おうか。幾らになる?』
「まいど、二つで640円でどうです?」
あ、これ値切れそうな感じだ。だが値切らない! 俺は値切らないぞー。
『ではそれを貰おうか』
え? 良いの? って言葉が露店のあんちゃんの顔に出ている。いいんです。
「芋虫のあんちゃん、ちゃんと食べられるのか?」
ははは、任せたまえ。
串を受け取る。
串ごと肉を口の中へ、そのまま歯に引っかけて思いっきり引っ張る。口の中に残った肉をガジガジと食べちゃいます。うん、ウマーイ。ああ、でもホント、タレが、タレが欲しいんです。こういった素材を活かした風味も良いんですが、タレが、タレが欲しい。
「あんた、豪快に食べるねぇ。気に入ったよ、もう一本おまけしとくよ」
お、ありがたい。
もう一本、串焼きを受け取り、冒険者ギルドへ。
―2―
「虫、どひた?」
ギルドの中には、ちゃんとちびっ娘が居た。ちびっ娘以外、他の冒険者達の姿は見えない。みんな、自分の冒険に出ていったんだな!
ちびっ娘は口をもぐもぐとさせている。あー、食事中でしたか、すいません。
『む、食事中か。待たせて貰おう』
「わかった。すぐ食べる」
ちびっ娘の食事が終わるのをぼーっと待っている。ちびっ娘はちっこい身体で子リスみたいに頬を膨らませて一生懸命に食事をしている。
「待たせた」
ちびっ娘は食事が終わってすぐに声をかけてきた。
『ふむ。魔法について教えて欲しいのだが、良いだろうか?』
「銀貨1枚」
ちびっ娘の返事はあっさりとしたものだった。アレ? というか字幕が円に変換されてない。な、なんでだ?
まぁいいや。情報料はしっかり取るのね。カウンターに銀貨を一枚置く。
「確かに」
ちびっ娘が銀貨を受け取る。
「虫。知っているか? この世界、そう『世界』には8個の属性がある」
世界……ねぇ。
「始まりの『火』、『水』、『木』、『金』、『土』、『風』、『闇』、そして終わりの『光』」
なんだか自分の居た世界の五行とか四大元素とかと同じような感じだな。
「魔法は必ずそのどれかの属性を持ってる」
ちびっ娘が饒舌だ。
「『火』と『水』、『木』と『金』、『土』と『風』、『闇』と『光』、相反する属性は習得することが出来ない」
うん? 水の魔法を覚えたら火の魔法は使えないってこと? だとすると俺は水と風を持っているから火と土は使えないってことか。
「虫は魔法使えるか?」
俺は頷く。
「今、出せるか?」
――[アイスボール]――
氷の塊を一つ空中に浮かべる。
『先程、属性は8個と言ったが、これは氷の属性のように思うのだが?』
「氷という属性は無い」
ちびっ娘の否定。む。
ちびっ娘はカウンターから出、手を伸ばし、氷の塊に触れる。
「多分、水と風の複合属性」
うーん、氷って熱量を操る火と水の複合だぜ、みたいな方が中二的にはしっくりくるんだけど。水と風だと如何にもゲーム的な感じがする。にしても複合か。
「魔法は初級、中級、上級、特級の4段階がある。中級くらいの力は感じた」
意外と強い……のか?
「でも、大森林は水や風、木の属性の魔獣が多いから役に立たない」
属性の相性ですね、分かります。無効化とか吸収とかされちゃうんですよねー、わ、か、り、ま、すッ!
「逆に火や金は重宝する」
まぁ、森だし、火か。
「魔法はイメージ大事」
あー、それは分かるかも。最初に習得したときも出来そうって思いから出来るようになったわけだし。
「イメージ出来ないのは呪文に頼る」
うん? よくわからない。呪文を唱えたら発動出来るってこと?
「想像できないのも、見えれば想像しやすくなる。言葉と結びつければ更に想像しやすくなる」
なるほど。なんとなく意味が分かった。想像できる、理解出来ているなら呪文詠唱なぞ必要無いわけだ。
『ちなみにクリーンの魔法は何属性になるのだろうか?』
「水」
水かぁ。もうすでに持っている属性で良かったと思うべきか。
「水の魔法を使っているうちに発現すると思う。まずは水を使い続けるべき」
発現って、閃くってことか。ピコーンと豆電球が頭に灯るまで水魔法、使ってみますかッ! クリーンの魔法は欲しいもんね。
ん? そういえば俺、水の魔法、使えないじゃん。どうしようか。
『ところで水魔法というと何があるだろうか?』
「有名なのは『サモンアクア』、『クリーン』、『ヒールウォーター』、『ウォーターボール』など」
ふむふむ。サモンアクアはシロネさんに見せて貰ったことがあるし、想像しやすいな。まずはそれが発現するように頑張って想像してみますか。
「だいたい、5120円だとこれくらい。他に教えられそうなことも余り無いし、これで終了」
ちびっ娘の終了宣言。うん、かなり助かった。ちびっこく見えてもギルドの受付をやっているだけあってちゃんと知識を持っているんだなぁ。
2月17日修正
だいたい、銀貨1枚だとこれくらい → だいたい、5120円だとこれくらい
6月2日修正
誤字修正