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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
3  世界の壁攻略
219/999

3-103 世界の壁第一隔壁

―1―


 来た道を戻る。お、倒した骨は残ったままなんだね。迷宮に吸収されるとか、そういう不思議システムはさすがにないか。こういうとこはさすがに現実的だよな。

 散らばっているボロボロの木製の弓と矢を見る。荒い造りのそれらは、とてもではないが実用に耐えるものでない。こんだけおんぼろだとさ、売ることも出来ないし、見るからにゴミだって分かるんだけどさ、何だか勿体ない気がするんだよなぁ。俺てば、この世界で弓を使い始めた時は木の矢だったワケじゃないですか。それを思うと、意外と使えるんじゃね? とか思ってしまうわけですよ。まぁ、矢筒に入らないから回収しないけどさ。でも、勿体ないよなぁ。


 うん、貧乏性です。


 ぺったん、ぺったんと歩いて帰ります。うーむ、この【フェザーブーツ】の履き心地――なかなか良い感じだな。今まで素足だったことを思えばすんばらしい歩き心地だ。これならガラス片を踏んでも怪我しないんだぜ。というか、俺の足に合う靴があったことに驚きなんだぜ。


 ……。


 なんだか、キョウのおっちゃんの喋り口調ってついつい真似しちゃうよな。気をつけねば! このままだと俺の個性がなくなる。俺の個性がキョウのおっちゃんに浸食されちゃうんだぜ。


 そんな馬鹿なことを考えている内に外壁へ。じゃあ、階段を上りますか。


 階段を上りきると外壁に沿った通路に出た。右も左も壁沿いに歩けるね。どっちに行きましょうか。困った時のキョウのおっちゃん。おっちゃんー、助けてーなんだぜ。

「どちらに行くにしても、結局全部まわることになると思うから好きにすればいいと思うんだぜ」

 あ、はい。なるほど、そういう考えもあるか。うーん、となるとどっちに進んでも同じか。じゃ、まぁ、左から進みますか。左、西側ですな。


 西側を黙々と進んでいるとまたも壁の中への入り口が見えてきた。このまま進むべきか、中に入るべきか……って、そうだ!

『このまま空を飛んで頂上まで行ってはどうだろうか?』

 俺ってば、飛翔スキルがあるんだから、空を飛んで上まで行っちゃえばいいじゃん。空を飛べなくても魔法糸を飛ばして、それを使って上っていけば……世界樹の時と同じだよね。いけるいける。これって正しいスキルの使い方だよね。俺は、何をお利口に正攻法で攻略しようとしていたんだ。これぞ俺すげえぇぇぇだ。

「ランの旦那。旦那が飛べる芋虫だってのは見せて貰ったんだぜ。でもよ、この『世界の壁』では止めといた方がいいと思うんだぜ」

 えー、何でさ。ないすあいであだと思うんだけどな。

「ランの旦那は、この迷宮が、どうやって魔族の進入を、防いでいるか、考えた方がいいと思うんだぜ」

 むぅ。

「上には見えない壁があって、触れたものに大怪我を負わすそうなんだぜ」

 えー。世界樹にはなかったのになぁ。こっちはそういう不正対策があるというのか! あ、でも、今って魔族が侵入できるんだよね。ってことは、その機能、動いてないんじゃね?

『魔族が……』

「旦那、試すのは勝手だぜ。それで大怪我しても、俺は知らないんだぜ」

 キョウのおっちゃんが俺の言葉にかぶせてくる。む。むむむ。確かになぁ。試してみてやっぱり壁がありました、死にました、じゃあ、洒落にならないよなぁ。


 はぁ、地道に攻略するか。




―2―


 とりあえず中に入ってみることにした。いや、だってさ、外壁の道ってさ、先が見えないくらいに長いんだよ。これで、何日もかけて進んで、ただ壁の端っこまで道が続いているだけでしたって、なった時が洒落にならないもん。とりあえず入れるところは入っておこうってことで。


――《ライト》――


 小っこい羽猫が光り輝く。うむ、小っこい羽猫よ、俺の役に立っているぞ。

「先頭は俺が行くんだぜ」

 キョウのおっちゃんが懐から小さな懐中電灯のような物を取り出し、明かりを灯す。あ、罠の解除とかお願いします。罠自体は俺が線で見つけられるからね、問題は解除なのだよ。「ぼ、僕も居るからな!」

 はいはい、ジョアンは盾をお願いね。


 壁の中を進んでいく。うーん、罠とかはないな。


 しばらく進むと前方にジャイアントスパイダーと書かれた線が見えた。お、懐かしの蜘蛛だな。ここでも出てくるのか。

「おいでなすったんだぜ」

 おうさ。でもさ、今更、ジャイアントスパイダー程度、苦戦する要素もないよな。初めて戦った時は、その大きさにびっくりしたけどさ。今から考えると5、60センチ程度って、そんなに大きくないよね。俺の半分くらいのサイズしかないもん。この何でも、大きくなる世界では小さい方だよなぁ。


 現れた蜘蛛たちを蹴散らしていく。3本の槍で防ぎ、貫き、倒す。キョウのおっちゃんも2本の剣を上手く使い、片方の剣で攻撃を捌き、もう一つの剣で攻撃を加え倒していく。 ジョアンが視界外から飛んできた蜘蛛の糸を大盾で防ぐ。

 14型がそんな俺らの戦いをぼーっと眺めている。


 いいじゃん、いいじゃん、俺ら、良い連携だと思うよ。明かり役の小っこい羽猫に盾役のジョアン、攻撃役のおっちゃん、そして万能の俺! 14型は……まぁ、荷物持ちってことで。何だかパーティらしくなってきたよね!


 蜘蛛を倒し続けていると奥から一回り大きな蜘蛛が現れた。金属のように硬化した足をカチカチと鳴らしながらこちらへと迫ってくる。あ、これがタイラントスパイダーか……。なんだよ、レッドアイとサイズが全然違うじゃないか!

 俺は手に持った真紅を見る。お前、アレと勘違いされていたみたいだぞ。


 俺の思いを受け取ったのか真紅が軽く震える。真紅にくっついている金色に輝く蜘蛛足もわしゃわしゃと動いて応える。

『アレは自分が!』

 俺はタイラントスパイダーへと駆け出す。


 タイラントスパイダーが体を大きく持ち上げ、お尻から糸を飛ばしてくる。はん、危険感知も働かないような攻撃なぞ喰らわんよ。糸を難なく躱し、鉄蜘蛛(タイラントスパイダー)の前に。大きな鉄の足に鋼の槍を突き刺す。が、鋼の槍が弾かれる。ち、鋼の槍だと弾かれるか。


――《スパイラルチャージ》――


 真紅で鉄蜘蛛を貫く。真紅が鉄の足をものともせず貫き、鉄蜘蛛の足を吹き飛ばす。そのまま螺旋の勢いが鉄蜘蛛の体へと突き刺さり、身を螺旋へと削っていく。

 俺が鉄蜘蛛の体に抉り込んでいる真紅を引き抜くと、その巨体が崩れ落ちた。おおう、重たそうだな。にしても鋼の槍の役立たずぷりが酷い。多分、槍自体の鋭さはホワイトランスも鋼の槍も、そうは変わらないと思うんだよね。でもさ、ホワイトランスは魔法の付与が出来たからなぁ。鋼の槍だと魔法が付与出来ないんだもん。それが大きな差になっているぽい。うーん、これ、鋼の槍を使う意味があるんだろうか。ま、まぁ、弾かれない相手には手数が増えることになるし、無いよりは、ね、うん。


 では、素材を回収して進みますか。魔石、魔石、魔石を集めましょう。



【フェザーブーツ】

【魔獣エルダーアントの羽より作られた魔獣防具。金属性の力を宿しており何処でも金魔法を使うことが出来る。地形効果無視能力を持った靴】

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