3-93 従者?
―1―
「ところでよ、その後ろの神国風の格好をしたお嬢ちゃんはチャンプの知り合いか?」
うん? 誰か居ましたかね?
「まさか、あの家に住み着いていたって噂の神国の亡霊じゃないだろうな?」
振り返ると俺の後ろで得意気に腕を組んでいる14型が居た。何でふふーんって感じに得意気なんだよ。
『うむ、誰も居ないな。では、我が家を頼む』
俺はそのまま建築ギルドを後にする。
「マスター、マスター、待ってください」
さて、次は東側の冒険者ギルドに行きますかね。
そのまま東側の冒険者ギルドへ。西と東を分ける門を通る時に14型を見咎められ、色々と質問をされたが、余りにも余りな14型の態度に、これだけお馬鹿なら問題無いということで無事通して貰うことが出来た。最終的には俺を可哀相なモノでも見るような目で見られてしまった。何で、俺の方が、そんな目で見られるんだよ。
そして東側の冒険者ギルドへ。
東側の巨大な冒険者ギルドの中にも冒険者達の姿は無かった。その様子から、まだ戦場から帰ってきていないのだろうと予想ができた。さて、結果がどうなったかを聞かないとね。
「おかえなりなさい、帝都冒険者ギルドへ」
受付のお姉さんの声。うお、お帰りなさい……って、俺の事を覚えてくれているのか。
「本日はどういったご用件でしょうか?」
え、あ、ああ。えーっと。
「後ろの方は冒険者では無いようですが、新規の冒険者登録ですか?」
うお、そういえば、14型は冒険者じゃないんだよな。ステータスプレートを持っているわけでもないし、どういう扱いになるんだ? 俺のテイムしたモンスターだって訳でもないし、かといってロボな14型が冒険者になれるのか、ステータスプレートが反応するのかも分からないしなぁ。
「冒険者? ふん。私はマスターの従者になります」
えーっと、勝手に話を進めないで欲しいなぁ。一介の冒険者の俺が従者を持つとか、騎士や貴族じゃないんだからあり得ないだろ。いや、俺の知っている物語の知識で、そう思ったが、もしかして、この世界ではあり得るのか? それがあり得るのか?
「は、はぁ、ですか」
う、受付のお姉さんがどう対応したら良いかわからなくなって、笑顔が凍り付いているぞ。どうする、どうする?
更に、何故か14型が、偉そうに、受付のお姉さんを見下すような笑みを作っていた。うわぁ、この子、面倒ごとしか起こさないよ。
「い、いちおう、貴族の方向けではありますが従者登録も可能です。同じように従者登録、さ、されますか?」
受付のお姉さんの笑顔が引きつっている。それでも笑顔を崩さないのは職業意識が高いからだろうか。
『ああ、お願いしたい』
「では、ステータスプレートを用意して2番窓口へお願いします」
と、確か2番窓口はクエストの申し込み窓口だったよな。へぇ、そういった申し込みも2番窓口になるんだね。
じゃ、2番窓口に行きますか。
―2―
2番窓口でステータスプレート(銀)を渡す。俺の他には冒険者が居ないため、待たされることも無くあっさりだ。
「はい、受け取りました。では、従者登録ですね。従者の方はステータスプレートをお持ちですか?」
いえ、持ってないでーす。
「私が持てるはずがないでしょう」
14型さん、喧嘩を売るような喋り方はやめましょう。穏便に、穏便に。
「で、では、ゴホン、従者登録を行うのですが、お金のお話は済んでいますか?」
なんだ? お金? 登録するのにお金を払う必要でもあるのか?
「問題無い」
って、14型さんよ、だから、何でお前が自信満々なんだ?
「で、では、従者志望の方はこちらのオーブの上に手をかざしてください」
と、窓口のお姉さんが丸く透明な水晶玉のようなモノを取り出す。その水晶玉の下には1枚の金属のプレートが置かれていた。あれ? あのプレートってナハン大森林の冒険者ギルドのちびっ娘が持っていたのに似ているな。
……。
周囲に沈黙が流れる。
14型が動こうとしない。って、ちょ、おい。従者登録をしたくないのか? それなら、ただ試してみたいだけだから、別に無理には頼まないけどさ。
『14型、手をかざしてくれないか?』
「マスターが言うのならば、仕方ないですね。そこまでお願いするなら、もう、ホント、仕方がないですね」
14型が渋々なんだからね、という感じで、喜々として手を水晶玉の上に乗せる。
……。
うん、この子、めんどい。
14型が水晶玉の上に手を置いても何も起こらなかった。窓口の女性も首をかしげている。
「え? 何故? 壊れた?」
しかし、何も起こらない。
「え? ちょっと動いて、動いて! 私が壊したってなったら……」
窓口の女性が慌て始める。
それ見て、14型が、如何にもな、わざとらしい大きなため息をつく。
「仕方ないですね。そのマスターのステータスプレートを貸しなさい」
窓口のお姉さんの返事も待たず、14型は窓口に手を伸ばし、俺のステータスプレート(銀)を奪い取る。
「多分……ここを、よし、これでいいでしょう」
14型が触れたステータスプレート(銀)に白い線が走る。それは見間違えたかと思うほどの一瞬だった。何をした?
そして14型はそのままステータスプレート(銀)を窓口に戻す。
「これに触れればいいのですね」
もう一度14型が水晶玉に触れると水晶玉に色とりどりの7色の光が迸った。
「こ、この光は……。ええ、はい、従者登録が完了しました。ステータスプレートはお返しします」
俺は窓口のお姉さんからステータスプレート(銀)を受け取る。うーん、14型よ、何をしたんだ?
「ラン様の従者登録は完了しております」
ニコニコと営業スマイルな窓口のお姉さん。お、立ち直ったのか。謎の機械、壊れていなくて良かったね。で、だ。
『ところで、従者登録するメリットを聞きたいのだが』
いや、ね。従者登録の意味がわかんないんだもん。本当は従者登録って何? って、聞きたいけど、それを聞くのは無知を晒すことになりそうだからね。メリットだけでも聞いておこうかと、うん。
「そうですね……。主人と従者では、装備や荷物の共有化が出来ます。装備や荷物を譲渡しなくても、盗品となることなく使うことが出来ますね。一番、分かりやすく言うと荷物持ちになって貰えると言うことでしょうか」
ふむふむ。って、え? もしかして、この世界って、勝手にモノを取ると盗品になるの? 何だろう、物に見えないタグでもついているのか? うーむ、何だか不思議な感じだな。
「従者のレベル確認に……後は永続的なパーティ効果と主人に有利な経験値の分配ですね。主人が8、従者に2の経験値が自動分配されます」
それって、従者側のメリットが薄いんじゃ……?
「その為、従者に給金を支払う必要があります」
へえ、給金ねぇ……。って、マジで? もしかして、最初のお金って、コレのことか!
「主人の方は、従者と話した金額と間違っていないかステータスプレートをご確認ください」
あ、そういう流れな訳ね。もしかして、あの水晶玉に手をかざしたのが給金の額の登録とかなのかなぁ。まぁ、よくわかんないシステムです。で、ステータスプレートを見て、従者と話した金額と合っているかを確認、違法な金額だったら従者契約を破棄できるとか、そんな感じなのかな。
お、名前の下に従者の欄が出来ている。
名前:ラン(氷嵐の主)
従者:14型 ― LV0 1DAY:0
うん? おいおい、14型ってLV0なのかよ。それに横の1DAY0って何だ?
「分かりにくいですが、レベルの横に書いてある文字で日数が決まります。1日単位での支払いの場合と7日単位の場合があるみたいですね」
えーっと、俺の場合、1日単位だとは思うんだが、0なんですけど……。
もしかして、これ、タダってコトか。14型はただ働きするって決めたってこと?
うーん。
8月17日修正
その為、従者には → その為、従者に