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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
3  世界の壁攻略
205/999

3-89  帝都へ

―1―


 目が覚めた。


 戦いはどうなった? ヤツは? 白髪少女は? ここは?


 んはっ!


 俺は覚醒した頭で周囲を見回す。屋根付きの竜馬車か……。ジョアンの竜馬車だな。


 竜馬車の中には負傷した蟻人族の2人が居た。おうおう、狭いからギュウギュウに押し詰められた感じなんだぜ。っと、うっし、とりあえずヒールレインを使っておくか。


――[ヒールレイン]――


 蟻人族の2人の傷が癒えていく。これでそのうち、目覚めるだろう。ま、俺は負傷ではなく、MPの枯渇による気絶だからな。竜馬車に押し込められているが、この2人とは違うんだぜ。

 と、そのMPを確認しておこう。


 うお? 最大MPが101まで上昇している。何だコレ? ウォーターミラーを使った影響か? ま、まぁ、これで更に魔法が使いやすくなったか。


 外は……夜か。どうやら、皆は野営をしているみたいだな。竜馬車を囲むように皆が寝ている。と言っても見張り役の誰かは起きているよな? 誰が起きているのかな?


「む。ジジジ、ラン、目が覚めたか」

 お、ソード・アハトさんか。

「俺も居るんだぜ」

 に、キョウのおっちゃんっと。


『あの後……』

「ああ、説明するんだぜ」

 小さく燃えている焚き火の傍らでキョウのおっちゃんが語り出す。俺も竜馬車から降り、キョウのおっちゃんの側へ。

「まずはすまない。ジジジ、女魔族には逃げられた」

 そっかー。まぁ、それに関しては仕方ないよね。

「追いかけてくれた剣の旦那が戻ってきたんで、今は帝都への帰路の途中なんだぜ」

 うん? えーっと、俺が気絶してから余り時間は経ってないのかな? キョウのおっちゃんの言い回し分かりにくいんだぜ。

「夜も遅いから、危機は去ったと、焦らずに野営を開始したんだぜ」

 ま、急ぐ要因が消えたもんね。と、そうだ。

『鎧姿の者を倒した時に木彫りの何かが落ちたように見えたのだが』

 そうそう、アレ、気になったんだよね。

「ああ、傷の入った木彫りの人形が落ちてたんだぜ。何かの魔法具に見えたけど、魔力が消えているようだったから捨ててきたんだぜ」

 ちょ、マジかぁ。出来れば鑑定したかったなぁ。

「む、キョウ殿」

 ん? どったのソード・アハトさんよ。

「なんだぜ」

 ん?

「ふむ、ジジジ、分かった」

 何が分かったんだぜ? ま、木彫りの人形は残念だけど、ま、別にそこまで固執するものでも無さそうだし、気にしないことにしよう。


 それよりも、これからのコトだよね。どうなるの? どうするの? また戦場に戻るのか?

「とりあえず、俺たちは帝都に戻るんだぜ」

 まぁ、ちょっと休憩したいよね。

「うむ、ジジジ、私はこの後、この件をゼンラ帝に報告する予定だ。皆はそのまま前線部隊が戻るまで待つことになるだろう」

 お、さすがに戦場に戻らなくてもいいのね。それはラッキーだ。

「剣の旦那、魔族のことは話すにしても、まだ、あの鎧のことは報告しないで欲しいんだぜ」

 ん?

「ふむ。ジジジ、分かった。キョウ殿が、そう言うのならば、そのようにしておこう」

 え? 分かっちゃうんだ。キョウのおっちゃんって、ソード・アハトさんにお願いできるほど偉いの? 元奴隷なのに? それともさっきの戦いで通じ合う何かがあったのか? むぅ。怪しいなぁ。


「さあ、疲れているランの旦那はまだ休んでいていいんだぜ。後は俺たちで見張りをするんだぜ」

 むう。なんだか、厄介払いされている気がするなぁ。まぁ、いいけどさ。この世界、聞きたがりは嫌われるらしいからね。それに俺にとって、気にはなっても、重要な内容ではなさそうだしね。気にしたら負けだもんね。


 って、またあのギュウギュウ詰めの竜馬車に戻れと。勘弁してください。俺、ここで寝るよ。


『分かった。お言葉に甘えて休むとする』


――《魔法糸》――


 魔法糸を木の枝に飛ばす。そして、そのまま枝の上に。枝の上に上がるために使った魔法糸を体と木の枝に結びつける。よし、準備終了。じゃ、寝ますか。


 お休みなさい。


「相変わらず、ランの旦那はよくわからないんだぜ」




―2―


 竜馬車に揺られ帝都へ。朝になってから気付いたのだが、竜馬車の屋根の上には金と銀のグリフォンが結びつけられていた。おうおう、あの自重を支えて潰れないのか。この竜馬車の屋根は丈夫だね。でも、そんないつ潰れるか分からないモノの中で寝るのは怖いので、何だったら魔法のウェストポーチXLの中に入れてもあげてもいいんですよ。善意ですよ。どうですか?

 ちなみに竜馬車の荷台の中には、現在、俺一人である。負傷していた蟻人族の2人は、俺のヒールレインが効いたのか、元気になったので外を歩いている。


『あのグリフォンはどうするのだ?』

 俺は竜馬車の御者台にいるジョアンに話しかける。

「金の方は俺達が倒したからな、貰おうと思っているぜ」

 構わないよな? と、そう答えたのは横を併走しているイーラさんだった。うん、そうだね。金はあげるよ。

「ま、まだ決まっていない。決めるのはラン、お前だ」

 ジョアンの言葉に元気がない。うーむ、今回、余り活躍出来なかったからしょげているのかな。盾を貫通した負傷によって、後方待機させていたもんなぁ。いやまぁ、でもさ、アレは敵との相性が悪かっただけだってばさ。

『ちなみにグリフォンの素材から、何か作れるのか?』

「む、むう」

 ジョアンは答えたいが答えを知らなくて困っている感じだ。

「それだったら鎧になるんだぜ」

 横からキョウのおっちゃんがフォローしてくれる。へぇ。鎧なのか。にしても倒した魔獣から装備品が作られるとか、なんだろう。えころじぃ?

「特に、この銀色のなんて綺麗な鎧になると思うんだぜ」

 ふむ。鎧かぁ。この体型だと鎧が装備出来ないからなぁ。うーん、俺には必要無いか。売っちゃう? と、そうだ!

『その鎧、今、ジョアンが装備している鎧とどちらが上なのだ?』

「そりゃあ、グリフォンメイルの方だと思うんだぜ」

 ふむ。

「真銀を使って加工したリングの上にグリフォンの皮と羽を付けて作られた鎧は風属性に強い抵抗を持ち、魔法と相性が良い上質な防具なんだぜ」

 ふむ、細かい解説をありがとう。キョウのおっちゃんは相変わらず物知りだなぁ。このまま、俺の横で解説役をやってくれないか。

「ランの旦那、小僧の為に作ってやるのか?」

『ああ』

 そうなんだぜ。それで防御力を上げて、盾役をやって貰えば、パーティ全体の戦力の底上げになるからね。

「ぼ、僕はいらない」

 ジョアンが慌てて断ってくる。そうは言うがな、盾役が硬くならないとパーティの生存率は落ちるんだぜ?

『ふむ。ジョアン、パーティを組んでいる者同士だ。お前の力が全体の力となる』

「でも、旦那よ。小僧の装備は一式なんだぜ。鎧部分だけ替わると不格好なんだぜ」

 あー、フルプレートだもんね。まぁ、でもさ、そこは我慢して貰うってコトで。

「小僧、ランの旦那の好意、受け取っておくんだぜ。それにランの旦那にアレを渡せば交換ってコトで済むんだぜ」

「でも、アレを倒したのだってランが」

 うん? 何のこと? 2人でひそひそ話とか止めて欲しいなぁ。同じパーティの仲間じゃん。仲間外れは良くないと思います。

「まぁまぁ、ランの旦那。もう少しのお楽しみってコトなんだぜ」

 むう。


 そんなやりとりをしながらも俺たちは帝都に帰り着いたのだった、なんだぜ。

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