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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
3  世界の壁攻略
198/999

3-83  別働隊

―1―


 さあ、駆けていくぜ。って、何処へ? と、そうだよな。まずは相談だ。


 俺は足を止める。

『聞きたいのだが』

 皆が足を止める。ばしゃばしゃと跳ねていた水音も止まる。さーって、考えろ。

「どうしたんだぜ」

 いやね、行き先を決めずに徘徊するのも違うと思うんだよね。

『皆に聞きたい。もし、別働隊、いや、向こうからすると本隊だな――の潜んでいそうな場所の予想はつくだろうか?』

 相談大事。皆で考えれば答えも出る出る。


「ほんとうにそんなのいるのかなー」

 お、エクシディオン君は居ないと思うのかね。

「僕はランさんの言うように本隊は別にあると思っています」

 おー、ウーラさんは俺と同じ考えか。でも、どこに本隊が居るかが重要なんだよね。

「俺らは、帝国は余り詳しくないからなぁ」

 エクシディオン君も「そーそー」とか言っているんですけど。いやいや、詳しくないなりに考えようよ。

『先程の魔獣達が陽動、本隊が別に居るとして、目的は帝都の襲撃か?』

「ああ、それで間違いないと思うぜ」

 うんうん、じゃないとグリフォンとか飛んでこないもんね。

「今回の襲撃の裏には魔族がいる可能性――あるんだぜ」

 突然、どうしたんだキョウのおっちゃん。魔族? 魔人族じゃないの? 言い間違い?


 ん?


 何だろう、3兄弟が凄い驚いてるぞ。

「それは本当ですか?」

「マジだぜ。そういったこともあるから、ゼンラ帝は蟻人族を出撃させたんだぜ」

 ほー。言い間違いではなく、本当に魔族が居るのか。ってことは、あのレッドカノンみたいなのが居るってコトか。いや、もしかして、そのモノがいる可能性もあるのか? となるとリベンジか。ああ、リベンジか。うん、今度こそ勝ってやるぜッ!

「魔獣が活性化しているから可能性は高いんだぜ。『女王の黎明』でも活性化した魔獣を確認したんだぜ」

 うん? 活性化? 魔獣の活性化とか初めて聞くな。というか、魔族って魔獣を活性化させるようなことが出来るのか? 活性化すると名前付き(ネームドモンスター)になるのか? よくわかんないなぁ。ん? そういえば活性化って単語自体は何処かで聞いた覚えがあるなぁ。むう。


「これは本気にならないとやばそうだな」

「だねー」

「ええ、僕も少し簡単に見ているところがありました」

 考え込んでいる俺の横では3兄弟が気合いを入れ直していた。って、何だよ、何だよ。最初から本気でやってくださいよ。舐めプは駄目なんだぜ。




―2―


『本隊が帝都に向かうとして、通りそうなルートは?』


「はーい」

 エクシディオン君が元気に手を挙げる。あ、こっちでも意見を述べる時は挙手なのね、とつまらないことに感心してしまった。

「たぶん、空をとんでいったと思いまーす」

 いや、それは無いだろ。空を飛んでいたら普通に気付くだろ。いや、でも、帝都が空を飛ぶグリフォンに襲撃を受けたしなぁ、有りなのか?

「いや、それは無いと思うんだぜ。さすがに動き出した軍が見逃すはずがないんだぜ」

 ですよねー。

「なら陸路か? でもよ、それこそバレバレなんじゃないか?」

 イーラさんの言うとおりだと思うぜ。


「帝都の近くで人が通らなそうな、目立たない場所があれば、そこを通ると思うんだぜ」

 いや、まぁ、そりゃそうだろうよ。でも、そんな都合の良い場所があるのか?


 キョウのおっちゃんが懐から地図を取り出し広げる。うお、地図だ。地図なんてあったのか? すっげ、初めて見たぞ。あー、でもさすがに世界地図ではないのか……。帝都周辺くらいだね。南側は、横線? 壁? でラインが引かれて、その下は全部、永久凍土って書かれているな。本当に簡単な地図だね。


「今、居るのはここなんだぜ」

 キョウのおっちゃんが帝都の南にある大きな平原を指差す。ふむふむ。お、この西側が魔人族の住み処だった半島かぁ。意外と大きいんだな。この半島から南下して、峠を越えて、北東へ進んでいたのか。地図で見ると意外と遠回りしていたんだなぁ。って、ん?

『キョウ殿、聞きたいのだが』

 キョウのおっちゃんが頷く。

『この峠は、今、どうなっている?』

「ああ、帝都と南を繋ぐ道なんだぜ? 今は地竜の暴走と崖崩れで封鎖されているんだぜ」

 ふむ。俺はそれに巻き込まれたからな。

『地図では、峠のさらに南側からも、この峠道へ入れるように見える。そして、この峠を経由して帝都側へ抜けられそうに見えるのだが』

「ああ、崩れていなければ行けると思うんだぜ……って」

 うん。そうだよ。そこから帝都に回れるよね。しかも崖崩れしているような場所から来るとは誰も思わないでしょ。奴ら、空飛ぶ魔獣を持っているみたいだもんね。空を飛んで崩れた崖を乗り越えてくるとか、あり得そうじゃないか。

「旦那、これは……」

 ああ、キョウのおっちゃん、俺もそう思うんだぜ。

「これは当たりだと思うんだぜ」

『うむ』

 3兄弟は話しについて行けなかったのか、3人でうんうんと頷いていた。えーっと、本当にわかっています?


「つまり、ここで待っていれば、ぶつかるってことなんだぜ」

 そうそう。途中のルートの正確なトコロまではわかんないけどさ、帝都への侵入は、その峠を経由する可能性が高いと思うんだ。

「今から、ここまで行くのか?」

 おうさ。イーラさんよ、そうなんだぜ。

「遠くないか?」

 えー。

「ああ、急ぐ必要があるんだぜ」

 キョウのおっちゃんの言うとおりだ。先を越されたら意味が無いもんね。


 さあ、間に合うか? 相手が、こちらに気付かれないよう慎重に進んでいると思いたいな。こういう時の飛翔スキルか? いや、でも、俺一人が先行しても仕方ないしなぁ。特に相手が魔族なら、俺一人ってのは危険だよな。

 ああ、転移を峠にチェックしておくんだった。って? 俺、今、転移のチェック、帝都だよな。あの峠なら帝都からの方が近くないか? 転移するか? いや、でも転移のレベルが3だから3人までだし、ウーラさん達とはパーティを組んでいないから、転移で一緒に行動できないし……うーん。


「ランさんよ、俺たちだけ先行していいか?」

 うん? どういうこと?

「これを見てくれ」

 イーラさん達がポーチから小さな陶器の瓶を取り出す。

「スピードポーションです。今回、帝都に急いだ時の残りがまだあるんだ」

 あー。そういうのもあるのね。そういえばクノエ魔法具店で色々なポーションを混ぜ混ぜして作れるとか――うーむ、今度、顔を出して、俺も色々なポーション作成にチャレンジしてみよう。って、そうじゃない、そうじゃない。

「ただ、さすがに僕たちの分しかないんです」

 いいよ、いいよ。俺的には都合の良い展開だよ。

『わかった、ならば現地合流で。自分とキョウ殿は別ルートから進む』

 キョウのおっちゃんが何を言い出すんだって顔でこちらを見る。まぁまぁ、任せなって。


「では、向こうで会いましょう!」

「またねー」

「じゃあな」


 3人がポーションを服用し、すぐに駆け出した。風を置いていくかのような速さだ。すぐに3人の姿が見えなくなる。おー、さすがはスピードポーション、早い早い。じゃ、こっちも行きますか。っと、せっかくだから、帝都でジョアン少年も回収するか。あれだけ帝都を守れ的なカッコイイ台詞を言っておいて回収するのは格好悪いけどさ、レッドカノンクラスとの戦いになるなら、少しでも戦力が欲しいからね。仕方ないんだぜ。

『では、キョウ殿、自分たちも行こう』

 キョウのおっちゃんが頷く。じゃ、転移しますよ。


――《転移》――


 駆け出そうとしたキョウのおっちゃんごと遙か天空へ。

「ちょ、おい、なんだ、これ、何なんだぜ」

 転移のスキルなんだぜ。


 そしてそのまま我が家の前に。はい、着地っと。ああ、ズタボロの我が家……、今回のレイドクエストの報酬で立て直すからね、待っててくれよ。って、うん? あれ? 俺の家だった残骸の前に人が居ないか? 何だろう? って、今はそんな時じゃないな。時間大事。

『キョウ殿、帝都からの方が峠には近いはず。急いで向かうぞ』

「あ、ああ。りょ、了解なんだぜ。って、ここ帝都か、帝都なんだぜ? どうなっているんだぜ?」

 はいはい、いいからいいから。ちゃっちゃっと行こうぜ!


 西大門に向かうと、門の前で外を睨み、仁王立ちしているジョアン少年が居た。いや、今から、そんな気を張っても……。

『少年、魔族が迫っている。少年も来い!』

 ジョアン少年は俺が授けた天啓に驚き、こちらへと振り向く。

「な、ラン。い、いつの間に?」

 今、さっきだよ。それよりも急ぐんだって。


『行くぞ!』

 俺の天啓にジョアン少年が戸惑いながらもついていくる。


 さあ、魔族にリベンジの時間だぜ!

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