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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
3  世界の壁攻略
186/999

3-71  軽率な

―1―


 羽蟻が居た部屋まで来てやっと蟻を発見する。巨大蟻1に羽蟻1か。うーん、雑魚だな。


 蟻を発見した、すぐさまにジョアン少年が駆け出す。ジョアン少年は巨大蟻狙いか。じゃ、俺は羽蟻に当たりますか。

 俺とキョウのおっちゃんが羽蟻に向かっていく。あ、キョウのおっちゃんが近接なら俺は弓で戦おうかな。

 キョウのおっちゃんが2本の長剣を抜く。羽蟻が背の羽を震わせ飛び上がる。


 コンポジットボウに鉄の矢を番える。


――《チャージアロー》――


 鉄の矢に光が集まっていく。


――《集中》――


 集中力の増した世界で狙いを定める。そして飛び上がった羽蟻の羽を狙い撃つ。


 光の矢が狙い違わず羽蟻の羽を貫く。音もなく近寄っていたキョウのおっちゃんが落下してくる羽蟻を待ち受けていた。

 抜刀した長剣を左から斜めに一閃、右から斜めに一閃。キョウのおっちゃんの長剣が羽蟻の硬い外皮を斬り裂き、そのまま斬り抜ける。うん、やるじゃん。

 俺はジョアン少年を見る。しっかりと真新しい大盾で巨大蟻の攻撃を危なげなく防いでいる。ちゃんと仕事をしてくれているな。うんじゃ、そちらの巨大蟻も倒しますか。

 コンポジットボウから真紅に持ち替えジョアン少年の元へ走る。


 巨大蟻の眼前に到着すると同時にスキルを発動させる。


――《スパイラルチャージ》――


 赤と紫の螺旋が巨大蟻を貫く。一撃必殺!


「ひゅー。ランの旦那、やるねぇ」

 いつの間にか巨大蟻の近くまで来ていたキョウのおっちゃんが話しかけてくる。

「こりゃあ、旦那に任せて、俺は楽させて貰うのも有りかも知れないんだぜ?」

 無しなんだぜ?


 ジョアン少年が大盾を地面に叩き付け、大きく息を吐いていた。そして、こちらに笑いかける。

「どうだ!」

 あ、はい。今後も盾役お願いします。俺とか紙装甲ですから。しかもさ、キョウのおっちゃんも俺と同じ回避型ぽいんだよなぁ。

 俺は羽蟻から羽に刺さっている鉄の矢を引き抜く。うーん、チャージアローで貫通しなかったのか。見ると鉄の矢は折れていた。貫通しなくても使い捨てになってしまうのか――ちょっと勿体なかったかな。

「旦那、傷ついていない方の羽を刈ってしまおうぜ」

 あ、もしかして換金素材って羽なのか。


 キョウのおっちゃんと二人で素材や魔石を回収していく。ジョアン少年は自身の大盾に寄りかかって休憩している。ちなみに羽から何が出来るんだろう。

「羽から靴が出来るんだぜ」

 なんだと。どうやったら羽から靴が作れるんだよ。おかしいよ、絶対におかしいよ。

「伸縮性に優れ、個人の足のサイズに合わせる必要が無く、炎の上を歩くことも出来る――と聞いたことあるんだぜ」

 へ? 炎の上を歩くとかどういう状況よ。というか、そんな状態だと靴は大丈夫でも熱やその他諸々でやばそうだけどなぁ。そこら辺も異世界の謎の力で大丈夫なんだろうか。ま、幾ら靴の力で大丈夫とか言われても、俺的には試してみたくない内容だな。




―2―


 少し広めの通路をしばらく進むと、またも大きく開けた部屋に出た。


 そして、その奥に巨大な芋虫が居た。なんかいるよ!

「いたぜ。多分、あれが女王なんだぜ」

 俺の数倍はあろうかという芋虫が目の前に居る。その巨体を金色に輝かせながら、うねうねとのたうっている。よ、幼虫? ちょっとグロいです。


 俺は部屋の中を見回す。ちょっとした運動場くらいの広さはあるな。天井も高く、10メートル以上はありそうだ。そして周囲の壁には無数の穴が開いており、そのいくつかの穴から巨大な蟻が顔を覗かせていた。


 目の前の巨大な金色芋虫が、その体に比べ異様に小さな顔をこちらに向ける。そしてカチカチと歯を打ち鳴らす。気付かれたか? いや、まずは先制攻撃だ。


 コンポジットボウに鉄の矢を番える。


――《チャージアロー》――


 鉄の矢に光が集まっていく。ジョアン少年がガチャガチャと大きな音を立てながら女王へと駆けていく。相変わらず行動が早いなぁ。ホント、後先を考えてないのでは……と心配になるんだぜ。


 最大限まで光を集めた鉄の矢を放つ。光の矢がジョアン少年を追い抜き、女王の脳天に刺さる。

 その瞬間、広間にギニャアと耳障りな音が大きく響き渡る。女王の雄叫び? ジョアン少年も音に足を止めてしまう。む、もしかして距離があり過ぎてチャージアローが余り効いていない?


 女王の叫びに合わせて周囲から無数の蟻が、わらわらと現れる。黄色蟻に巨大蟻、羽蟻もいる。

 ジョアン少年が不安そうにこちらを振り向く。

『周りの雑魚を惹き付けることは可能か? 女王は自分が受け持つ!』

 俺の天啓にジョアン少年が任せろとばかりに頷く。

「旦那、俺はどうした方がいいんだぜ?」

 キョウのおっちゃんが口の端をあげ、ニヤリとしながらこちらに話しかけてくる。そうだなぁ、おっちゃんも雑魚の相手を。ジョアン少年が防いでおっちゃんが倒すって感じで数をサクサクッと減らしてください。頼みます。

『少年のフォローを頼む』

「わかったんだぜ」

 キョウのおっちゃんが片手を上げて、俺に応え、そのままジョアン少年の元へと駆けていく。


 うんじゃまぁ、俺が女王を相手しますか。

『なるべく早く雑魚を倒して、こちらを手伝いに来てくれ』

 俺は天啓を飛ばす。いや、だってさ、俺一人で女王を相手するなんて、厳しそうだもんね、仕方ないよね。


 俺は女王目掛けて駆けていく。さあて、ついでに鑑定しておくか。


【名前:率爾の女王】

【種族:エルダーアント(幼)】


 うん? なんだ幼って。幼いって意味か? にしても予想通り名前付き(ネームドモンスター)だったか。普通の女王蟻より強いとか無いよな――無いよなッ!

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