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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
3  世界の壁攻略
184/999

3-69  会議室

―1―


『キョウ殿、何故ここに?』

 そうだよ、何でいるんだよ。何でキョウのおっちゃんが居るんだ?

「そう言えば、ランの旦那は冒険者だったな。俺も闘技場を卒業して冒険者になったんだぜ」

 おー、本当か! 良かったじゃん、良かったじゃん。


 ぞろぞろと冒険者達が会議室へ入ろうと集まってくる。多いな。

「俺らも入ろうぜ」

 ああ、そうだな。


 会議室の中へ入る。会議室の中は広く、入った場所が一番高い席になっており、そして奥へ行くほど低くなっていく。さらに一番奥が舞台のようになっており、そこに3人の男女が立って居た。中央に眼鏡をかけた長髪の女性、右に厳つい歴戦の戦士風の男、左に目を閉じている少年。


 俺の体だと座るのは窮屈なので立った状態で何かが始まるのを待つ。


 どんどん武装した集団が席に着いていく。何だろう、この世紀末みたいな武装した連中が大人しく席に座っていく光景。俺は笑えばいいのか――シュール過ぎる。

「旦那、座らないのかなんだぜ?」

『いや、立ったままで良い』

 今いる冒険者は全部で……1人、2人、3人……200近くかな? うん、沢山だね。帝都だけでもこれだけの数の冒険者がいるのか。


「集まったようだな。では、これより今回の大規模レイドクエストの説明に入る」

 中央の女性が話し始める。ふむ、あの人が司会進行役なワケね。にしても眼鏡女子かぁ。この世界にも眼鏡があったんだな。このモノクル以外では初めて見たな。

「まずは自己紹介をしよう、私は……」

 と、そこで、眼鏡の女性は一度会話を止めた。そしてこちらをキッと睨む。

「おい、何処の馬鹿だ、私を鑑定しようとしたのは!」

 え? いや、俺じゃないですよ。さすがに、そんな空気の読めないことはしませんよ。

「まぁいい、それだけ優れた探求士だということにしておく。だが、次は無いぞ!」

 キョウのおっちゃんも俺を見ている。いや、だから、俺じゃないってば。

「では改めて、私はクラン『アクスフィーバー』のクランマスター、アーラだ。そして今回の大規模レイドクエストのリーダーも務めさせて貰うことになった」

 ほー、アクスフィーバーって確かウーラさんやイーラさんのとこだよな。って、ア・イ・ウかよ。ギャグみたいな名前のクランだな。となると次はエーラって名前なんだろうか。び、微妙……。


「戦鬼アーラって呼ばれているんだぜ。Aランク冒険者で全てを見通す魔眼の魔法具と馬鹿みたいにデカい斧を持って戦うって聞いているんだぜ」

 知っているのか、キョウのおっちゃん。よし、そのまま隣で解説をするんだ。字幕の文字が戦『鬼』になっているな、でもさ、こういう場合って姫じゃないの? まぁ、姫って年齢じゃなさそうだけどさ。


「次に俺だが、俺はクラン『女神の剣』のクランマスター、シュウだ。今回のサブリーダーを務める。隣のアーラに何かあった時は俺が指揮を執ることになる」

 そう言ったのは厳つい戦士風の男だった。なんだか、臭そうな感じの人だよね。


「実力も有り、才能もあるが、キモいことで有名なヤツなんだぜ。何でも女性経験が無いことを自慢しているらしいんだぜ」

 あー、はい。キモいってキョウのおっちゃんに紹介されるってどうよ。何だか同情しちゃうな。


「では、私たちの自己紹介はこれくらいにしよう。さて、今回集まって貰った理由だが……」

 あれ? あのちっこい少年の説明は無いのか? だ、誰なんだろう? キョウのおっちゃんもしゃべり出したりしないし、ホント、誰なんだ?




―2―


「先日の魔獣襲撃の件は、皆も知ってのことだろう」

 あ、はい。俺もグリフォンを撃退しました。

「足の速い魔獣ばかり、しかも帝都の防備が手薄な場所を狙っての襲撃だ。帝都の情報を把握している――まるで内部から手引きしたかのようだが、まぁ、今回はその件はいい」

 わざわざ言わなくてもいいって分かっていながら喋ったってことは――わざと情報を漏らしてくれたのかな? うん、そういうことだよね。

「どうも、その魔獣達は先遣隊だったようだ。現在、統率された魔獣の大軍が、この帝都へ迫っている」

 な、なんだと?

「その数、約8千」

 何処かから、ひゅーって口笛が聞こえる。へ? 俺の聞き間違いかな。8千って言いましたか? 8,000だと! 80とか800の間違いじゃなくて?

「中にはグリフォンのようなBランクの魔獣、ゲイルギガスといったCランクの魔獣も複数見える」

 その瞬間、会議室の中が騒がしくなる。ほー、グリフォンってBランクだったんだ。

「静まれ!」

 歴戦の戦士風のシュウの一喝。しかし、冒険者達が静かになることはなかった。

「驚くことも無理はない。しかもそれらが統率され一糸乱れぬ行進をしているのだ」

 アーラさんの言葉に静かになる会議室。統率している者が居るってことやね。

「今回のレイドクエストはそれら魔獣の殲滅だ!」

 え? マジですか? 今、ここに居る冒険者って200人くらいよ? 一人で40も倒すの?

「と言っても、私たちが全てを相手する必要は無い。すでにウドゥン帝国軍が動いている」

 ああ、そりゃ、さすがに兵隊さんも動くか。

「帝国軍、約1,600が正面から当たる。私たちは遊撃隊として自由に魔獣を狩る。これが作戦だ」

 へ? 随分と大雑把だなぁ。って、軍隊の数――1,600人しか居ないのかよ。魔獣の方が圧倒的に数が多いじゃないか。

「お前らが軍の命令を聞くとは思えないからな。自由に戦えとのことだ」

 その言葉に冒険者達が盛り上がる。中にはひゃっはーって叫んでいる人も――ここは、何処の世紀末だ。

「ただし、ある程度は私の命令で動いて貰うぞ」

 まぁ、さすがに完全自由じゃないか。

「出発は明後日の10時、集合は当ギルドだ。それまでに準備をしておけ」

 ああ、今すぐ出発じゃないのか、良かった、良かった。

「今回はある程度の支給品は配られるが、お前達も冒険者なら分かっているよな? 自分の身は自分で守れ、その為の準備を忘れるな」

 となると、俺が準備すべきは……食料だな。食事、大事。

「すでに帝国軍は動いている。私たちは、その後を追う形だ。それと、この大規模レイドクエストが終了するまでクエストの受注は全て停止になる、気をつけろ」

 あ、クエスト、受けられないのね。あー、1日余裕があるから、女王討伐のクエストを受けようと思っていたのになぁ。ま、仕方ないか。




―3―


 説明会が終わり、一度解散となった。その中で、俺は見知った顔を見つける。

「ああ、ランさん」

 モコとクレアの二人だ。

『女王討伐の件だが……』

 二人は首を横に振る。

「こうなっては仕方ない。この間の約束はこのクエストが終わった後にしよう」

「そうね、その為にも生きて戻らないとね」

 ちょ、フラグ臭いことを言うのやめてくれません。というかだね、俺はクエストとしては受けられないけど一緒に女王の討伐に行かないかって誘うつもりだったんだがなぁ。これは無理そうか……。


 仕方ない!


 さ、俺も一度帰るか。と、帰ろうとしたところだった。何やら1階の方が騒がしい。


 何が起こっているのかと1階へ下りる。


「な、何で僕が駄目なんだ!」

 窓口のお姉さんへジョアン少年が叫んでいた。うん?

「何度も説明しましたように、あなたは冒険者になれる年齢にありません。それは幾ら剣聖様の孫でも一緒です」

「そ、そんなことを言っている時じゃないだろ!」

 あー、ジョアン少年って冒険者になれない年齢なのか。つまり、今回の大規模レイドクエストからは置いてけぼりと。いや、参加しなくて済むなら、それっていいコトなんじゃね?

「あ、ラン! いい所に! お前からも言ってくれよ」

 俺の姿を見つけたジョアン少年が寄ってくる。いや、俺に振るなよ。

『少年、お前は残れ』

「何でだよ!」

 俺の言葉にジョアン少年は納得出来ないようだ。

『帝都を守る者も必要だろう?』

 その言葉を聞いて、ジョアン少年があっと驚いた顔をする。何を驚く必要があるんだ?

『昨日、襲撃があったのは知っているな? ここが安全とは限らない。ならばお前は守るべきだろう』

「た、確かに……」

『ならば、今回は残れ。それもお前の仕事だ』

 そうだよ。少年は大人しくしてな! と、そうだ。それはそれとしての話をしないと。キョウのおっちゃんは何処かな?

『ところで、キョウ殿、少年、ちょっといいかな?』

 二人が俺のそばに集まる。


『これから蟻退治に行かないか?』

 フラグは潰しておかないとね!

2020年12月12日誤字修正

アーラに何か合った時は → アーラに何かあった時は

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