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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
3  世界の壁攻略
175/999

3-61  雲行き

―1―


「で、どうするよ?」

 無理でーす。お金が足りません。

『わかった。考えておく』

「おう、頼むぜ!」

 そう言い残して親方達は帰って行った。にしても親方が自ら来てくれるんだね。人手不足なのかなぁ。


 うーん、かなりのお金が必要になったよなぁ。よし、とりあえず明日ギルドで相談してみよう。それとお金を節約することも考えないとね! 節約って大事だよね。


 さーて、今日の晩ご飯はどうしようかな。よし、今日は美味しい物が食べたいし、転移でスイロウの里に行くか。帝都では、まだ美味しい料理が食べられるお店を探していないしな。今から探すのも面倒だ。それにタレが、うん、タレのかかった料理が食べたいんだ! 美味しい物は必要経費だよね。


 ということで転移して食堂にゴーだ。


 結局、その日は食堂でタレのかかったグレーウルフの肉を食べたのだった。うーん、グリーンヴァイパーの肉にタレをかけた物の方が美味しかったなぁ。筋張っていて微妙なんだよね。わざわざ、帝都からスイロウの里まで戻ってきたのに、今日は失敗だったなぁ。


 あ、これ、思ったけど、換金って帝都ではなく、こっちで、スイロウの里で行えば税金を取られない分、お得なのでは……。だよね、だよね? あー、でも、ステータスプレートに討伐の履歴が残るからなぁ。帝国領で倒した魔獣が大森林で換金されている。しかも時間差が殆ど無く、みたいな――これって、怪しまれる要素しかないよね。下手に目を付けられて、何か尋問されたり、迫害されたら嫌だよな。仕方ない。まぁ、たいした額でもないし、帝国に媚びを売るって意味でも税金、払っておきますか。




―2―


 今日も今日とて冒険者ギルドへ向かうのです。


 墓地を抜け、貧民窟へ。


 そして、予想通り俺の姿を見つけた瞬間に走り寄ってくるクソ餓鬼ども。


「芋虫、来た」

「芋虫、来た」

「なんで昨日来なかったんだよー」


――[アイスウォール]――


 クソ餓鬼と俺の前に氷の壁を張る。ははは、コレで近寄れまい!


「うお、何だ、コレ」

「すっげ、硬い」

「ひんやりするけど思ったほど冷たくないね」

「……」


 クソ餓鬼どもが氷の壁に夢中になっている間に、その横を抜ける。ふぅ、クソ餓鬼どもに構ってられるか、俺は冒険者ギルドに行くんだ!


「ふふ、また会いましたね」


 いつから居たのか俺の隣に青いフードの少女が居た。え? え? あれ?

「3度出会うなんて、運命かもしれませんね、ふふふ」

 いつの間にかクソ餓鬼どもの声が聞こえなくなっている。

「そんな芋虫さんに1つ忠告です。もうすぐ、ここは戦場になります。お逃げなさい。また死ぬような目に遭うのは嫌でしょう?」

 な、何を言っているんだ?

「私はあなたの存在を買っているんですよ。こんな所で失うには惜しいですからね、ふふふ」

 目深にかぶった青いフードの下から蠱惑的な口が覗いている。

『何を言っている?』

 周りの音が聞こえない。青いフードをかぶった少女の笑い声だけが世界にこだまする。

「では、忠告しましたからね。これは私のちょっとした善意、そして気まぐれ、ふふふ」


 そして周囲に音が戻る。


 うん、アレ、俺、何をしようと……ああ、クソ餓鬼を回避して冒険者ギルドに行くところだった。ああ、お金を稼がないと。何かナイスなアイディアがあるといいなぁ。




―3―


「お、遅かったな!」

 冒険者ギルドの前にはジョアン少年が居た。何故居る。まぁ、いい。無視して冒険者ギルドに入ろう。

「え、あ、おい、ちょ、ちょっと待てよ!」


 今日も冒険者ギルドには犬頭のスカイさんが居た。と、他にも冒険者? の姿がちらほらと見えるな。め、珍しいー。

「おー、チャンプ。良いところに」

 え? 良いところだったの?

「チャンプってば、今、女王の黎明に挑戦していたよね」

 あ、はい。

「じゃじゃーん。なんとソルジャーアント、エリートアント、クィーンアントが害魔獣認定されました」

 害魔獣……の認定? 何のこと?

「期間限定ですが、今なら倒すだけでGPが貰える、超お得!」

 そういえば大森林ではシルバーウルフが特別討伐魔獣になっていたね。アレと同じか。まぁ、いいや。

『ところで、早くお金が稼げるようなクエストはないだろうか?』

「チャンプ、お金がいるの?」

 はい、必要です。お金はあって困る物じゃあ、ないんですぜ!


「なんで、い、いつも無視するんだよ……」

 後ろでいじけているジョアン少年は無視する。いや、別に悪意があるわけじゃないんだよ、ただ面倒くさいって思っているだけなんだよ。後で構ってあげるから待ってなさい。


「うーん、今だったら、一番、旬な女王の退治だね! 今なら報奨金ボーナスも付くよ!」

 へぇ。女王は倒したかったからね。ちょうどイイネ。あれ? でも確かランクが……。

「あー! チャンプってばさ、Eランクじゃん。勘違いしていた!」

 そうなんだよな。女王の討伐ってCランクのクエストだから、最低D以上ないとクエストが受けられないんだよなぁ。

「でも大丈夫、大丈夫。Dランク以上の人とパーティを組めば行ける行ける」

 え? それ有りなの?

「いやあ、冒険者ギルド的には問題があるんだけどさー。貴族なんかが箔をつける為に上位の冒険者を雇って――ああ、東側のギルドなんて酷いのよー」

 パワーレベリングですね、分かります。経験値がある世界だもんなぁ、簡単に強くなれる手段があるなら乗るよね。うーむ、そういうのも有りなのか。まぁ、冒険者ギルド的には好ましくないが黙認って感じなのかな。

「ま、そういうこともあるから、オススメしたのは内緒だけどさ、そういう手もあるってことで」


 ま、Dランクの知り合いなんて都合良く居ないし、今日の所は普通のクエストを受けて女王の黎明に向かいますか。



 Dランク

 討伐クエスト

 ソルジャーアントの討伐

 小迷宮『女王の黎明』に無数に生息するソルジャーアントの討伐

 最低6匹以上の討伐をお願いします。


 クエスト保証金:5,120円(銀貨1枚)

 報酬:51,200円(小金貨1枚、銀貨2枚)

 獲得GP:240


 3日以内の討伐をお願いします。



 よし、今日もクエストを頑張りますか。ところで、同じクエストを何個も受けるって出来ません?

「さすがに、それは無理さー。じゃ、頑張って」

 俺はスカイからステータスプレート(銀)を受け取る。さ、行きますか。


『少年、来るか』

 いじけて座り込んでいたジョアン少年が跳ねるように起き上がる。おー、金属鎧でその動き、素晴らしいな。

「ふふん、どうやら僕の力が必要なようだ!」

 はいはい、じゃあ、行きますよ。エミリオも準備オッケーだな。

「にゃあ」


 じゃ、今日も行きますか。

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