3-59 氷魔法
―1―
まずはギルドギルド。クエストの完了報告をしないとね。
別れる間際も、ずーっと、何かを喋り続けていたジョアン少年を無視して冒険者ギルドへ。
スカイくーん、居ますかー。
「はい、はい、はーい」
スカイ君が手を振っている。
『クエストの完了を頼みたい』
「へ?」
俺はスカイにステータスプレート(銀)を渡す。
「うお、マジじゃん。仕事、早いねー」
あ、どーも。
「これ、今回の報酬ね」
ソルジャーアントの討伐
クエスト報酬:51,200円(小金貨1枚、銀貨2枚)
獲得GP:+240(495)
合計:40,960円(小金貨1枚)
税金で銀貨2枚分も取られたのか。ちょっと取り過ぎじゃないですかね。ま、それでも小金貨1枚はゲット出来たわけだから、これは大きいかな。明日は建築ギルドの人が我が家の改装の下見に来るからね。お金はあっても困らないのだ。
さ、お金も貰ったし、かえ……と、そうだ。ソルジャーアントからはどんな素材が取れるか聞いておこう。
『ちなみにソルジャーアントからは、どんな素材が取れるのだろうか?』
「へ? 素材? ちょっと待ってよ」
スカイが何かの本をぺらぺらとめくっている。
「おー、あったあった。外皮と顎だね。ただ、サイズが大きくて持ち運びが不便な割には買い取り値が安いってことで不人気だねー」
不人気だから憶えてないのは仕方ないなんて言っていたのは聞かなかったことにして、なるほど外皮と顎か。まぁ、確かにあのサイズを持ち歩くのはキツいよなぁ。が、俺には魔法のウェストポーチXLという素晴らしいアイテムがあるからね。余裕、余裕。次はしっかりと回収しよう。いくら買い取り値が安くても『ちりも積もれば』だよね。
じゃ、今日は帰りますか。
今日も帰りに謎肉の串焼きを買って帰る。これ、最近はまっているんだよね。魚醤をつけて食べると香ばしさが増して美味しいのよ。あー、でも、出来るならタレをかけたいなぁ。食堂でタレの存在を知ってしまったからなぁ。腐ってもいいからタレを買いたい――いや、逆転の発想だ。腐らないような魔法を開発して……うーん、無理か。でも冷えた飲み物が出てくるくらいだから冷やす技術はあるんだよな。それを流用して、うん、夢が膨らむなぁ。
―2―
――[アイスウェポン]――
ホワイトランスが氷に覆われていく。よし。
建築ギルドの人たちが来るまでアイスウェポンの熟練度上げを行うことにする。女王の黎明に生息する蟻には氷が有効だったもんね。出来る限り熟練度を上げておいた方が有利に戦えそうだ。
――[アイスウェポン]――
覆われていた氷が砕け散り、再度、新たな氷に覆われる。
俺は我が家の広い庭で何度も何度もアイスウェポンの魔法を繰り返す。MPを回復させながら、何度も繰り返す。
昼を過ぎても繰り返す。一度、お昼休憩だけは取り、また繰り返す。うーん、建築ギルドの人たち、遅いなぁ。もしかして道に迷っているのかな。でも場所は知ってる感じだったよな。あー、やっぱり来て貰う時間を確認しておけば良かった。
まぁ、黙々と魔法を使って待ちますか。
しばらく繰り返していると壊れた門の方に誰かがやってきたようだ。お、やっと来たみたいだな。
「な、なんで来ないんだよ!」
やって来たのはジョアン少年だった。あー、もうジョアン少年も鬼人族だから、てっきり建築ギルドの人だって、勘違いしてしまったじゃないか。
「きょ、今日も迷宮に行くと! 準備して冒険者ギルド前で待っていたのに!」
あ、そうなんだ。見れば、確かに水袋に食料、ランタンなど迷宮を探索する道具を持っている。ほー、昨日の経験が生きたな。
が、今日は行かないんだぜ。だって我が家の大切な改築のお話があるんですもん。
『今日は迷宮には行かないぞ』
ジョアン少年が驚きこちらを睨み付ける。いや、そんな顔をされてもだね。
「ど、どういうことだ!」
いや、どういうことも何も、ジョアン少年とパーティを組んだ憶えもないし、今日も迷宮に行くなんて約束していないよね。
『今日は他に約束があるからな』
「む、それなら仕方ない」
そうは言いつつも口を尖らせている。ま、俺はアイスウェポンを使い続けよう。
――[アイスウェポン]――
「な、何で、さっきから同じ魔法を繰り返しているんだ?」
え、何でって熟練度上げですよ。どうせなら熟練度上げたいじゃん。カンストさせたいじゃん。暇なんだから、時間は有効活用しないとね。
――[アイスウェポン]――
ふぅ、何だろう。こう――数値がどんどん増えていくのが楽しくなってくる。永遠にこれだけを繰り返せそうな気分になってくる。楽しいなぁ。
【[アイスウォール]の魔法が発現しました】
へ? 急に新しい魔法が発現した。何だ、コレ。いつもだったら、俺がピンチになったー、とか、俺が必要だー、みたいな感じの時に発現したような気がするんだけど、何だ、コレ。
と、とりあえず使ってみよう。
――[アイスウォール]――
俺の目の前の地面に鋭く尖った無数の氷の柱が壁のように立ち上がる。うお、びっくりした。
氷の壁を叩いてみる。おー、硬いね。これ、防御とかに使えそう。上が尖っているから足場には出来なさそうだけど通路を塞ぐとか色々と使い道がありそうだなぁ。
ちなみに消費MPは……24か。結構、使うね。今の最大MPだと連発は厳しいか。でも、これ女王の黎明で便利に使えそうだよね。氷の壁で通路を塞いで増援を来させないようにするとか、うん、使える魔法が手に入ったぞ!




