2-10 説明
―1―
「今日は最後の初心者指導になりますね。ということで今回は森ゴブリンが多く生息する小迷宮に向かいます」
小迷宮? というか、多く生息すると言いましたかッ!
『多く倒す予定ならば複数討伐クエストの方が効率が良かったのでは?』
「そうですね。ですが、今回は初心者指導なので最初の三つクエストを完遂して貰います」
ま、そこら辺は自分でやれってコトなんですね。あ、そうだ。
『ウーラ殿、もし良ければ魔法について聞いてもよろしいか?』
最後だし、魔法についても聞けるだけ聞いておこう。
「ま、魔法ですか……。魔法は苦手なので、あ、余り詳しくないんですよね。そ、そうだギルドのソフィアちゃんが魔法に詳しいですよ。ただ情報料は取られそうですけどね」
よし、今度会ったら聞いてみよう。
「小迷宮まではもう少しあるので、パーティなどについて説明しますね。少し長くなるけれど丁度良い気分転換になると思います」
パーティってアレですね。ステータスプレートの裏の更新履歴にあった4→8ってヤツですよね。
ん?
【ウーラさんよりパーティ申請が来ています。パーティに参加しますか? Y/N】
うお、右上にシステムメッセージが。もちろんイエスで。
【パーティインッ!】
うお、なんだ、この無駄に頑張っている加入メッセージは……。
「はい、加入できましたね。今、僕の周りに漂っているモヤみたいな物が見えますか?」
ん? 確かにウーラさんの周りに蒸気のような物が揺らめいて見える。
「パーティに加入すると、パーティメンバーの状態が見えるようになります。このオーラがその人の状態を示しています。危ない状態だと燃え尽きそうな感じになりますし、離れていても立ち上るオーラで大体の居場所が分かります」
なるほど、割とゲーム的な感じですね。
「後はパーティ間のみで有効な魔法であったり、魔法具があったりします。とパーティを組むと良いことも多いんですが、デメリットもあります」
デメリット?
「取得される経験値が頭割りになります。種族レベル差によっては貰える経験値がかなり減りますね。それでも最低1は貰えるんですけどね。一番深刻なのは獲得出来る魔晶石ポイント(MSP)が頭割りになることです」
『魔晶石ポイント?』
ん? 新しい単語だな。
「魔晶石ポイントについては、また後で説明しますね」
ふむぅ。
「MSPは森ゴブリン以上くらいの魔獣を倒すと手に入るんですが、森ゴブリンだとMSPは1しか増えないんです。もし二人以上のパーティだと0になります。つまり森ゴブリン程度の場合、ソロじゃないとMSPは取得出来ないことになります。4人パーティでMSPを1得ようと思うと最低MSPを4以上持っている魔獣を倒す必要があるってことですね」
切り捨てってコトか。
「ただまぁ、獲得出来なかったMSPに関してはパーティ全員にGPとして配布されるので、それを狙う冒険者も居ますね」
なるほど完全に無駄になるわけじゃないのね。で、魔晶石ポイント(MSP)って何よ。
【ウーラさんがパーティを解散しました】
ああ、パーティの説明だけだったのか。
「クエスト受注後のパーティ加入はお勧めしません。受注後に加入した人はクエストの報酬が貰えませんからね。パーティを組んでからの受注が基本になります」
ふむふむ。多分、この辺は冒険者の常識なんだろうね。知らなかったら恥を掻いていたよってトコでしょうか。
―2―
「ランさんはまだクラスを持っていないと思いますが、今後のためにMSPについて説明しますね」
お、やっと魔晶石ポイント(MSP)の説明か。
「魔獣を倒すとMSPというものが貯まります。どれくらい貯まったかはステータスプレートを見れば分かります。クラスを手に入れると格クラス毎に4つのスキルを取得出来るようになるのですが、そのスキルを取得したり、スキルレベルを上げたりするのに使うのがMSPになります」
あッ! そういうことだったのか。俺、スキルツリーもってるじゃん。0からどうやって増やすんだろうって思っていたんだけど、MSPを振り分けて上昇させるわけね。
つまり、これから狩る予定の森ゴブリンを倒せば倒すだけMSP稼ぎが出来るわけね。うほ、楽しみが増えた。
「魔獣と戦う上でスキルは非常に重要なのでMSPを得ることも冒険者の使命の一つですね」
やはりスキルか……。自分の魔法糸を見ただけでも分かるけど、常識外の力だよねぇ。
「実はMSPを得る方法はもう一つあるんです。ずばり、魔石を砕くことですね」
ほう?
「魔石は換金も出来ますし、魔法具の材料にもなるので悩みどころですね」
『ちなみに砕くとどれくらいのMSPが手に入るのだろうか?』
「一人で普通に狩猟したときと同じだけ手に入りますね。これから狩猟する森ゴブリンなら倒して1、魔石を砕いて1、計2を取得出来ますね」
2ポイントになるのは……大きいのかな?
「次はステータスも説明しますね。今日が最後だから、どんどん説明しますよ。大事なことだから覚えてくださいね」
長い説明ありがとうございます。
「ステータスプレートに書かれているモノを上から順に説明しますね」
はい、お願いします。
「まずはHP、その人の健康状態を表しています。最高が100ですね。これが減っているってことは命に関わってきます」
あ、ゲーム的に体力とかじゃないのね。状態グリーンでーす。
「次にSPですね。この下にあるMPと関わりのあるステータスになるんですが、魔獣から攻撃を受けた際の盾になる数値だと思ってください。この数値が残っている限り肉体が傷つくことは殆どありません。減った分はMPから補充されます」
なるほど身体の周りを守ってくれる防御膜の役割がSPってことね。MPが多ければ多いだけ固くなるってこと……かな?
「SPがMPから補充できると言いましたが、注意点もあります。SPの最大値です。SPの最大値が低くMPが多い人だと破壊力の無い攻撃には強くなりますが、強力な攻撃を受けたときに一気にSPを超えたダメージを受けて危機的状況になりかねません。逆にSPの最大値が高くてもMPが少ない人はSPを削りきられたら、そこで終わってしまいます。なのでSP最大値もMPも多いのが理想になりますね。まぁ、それが難しいんですけどね」
『ちなみにSPやMPの増やし方は?』
「基本、増えません」
へ? いやいやいや、それは無いだろう。無しだろう。
「就いたクラスの補正によって増減はします。後は種族レベルが上がったときに増えることもあるらしいです。僕は増えませんでした」
うーん、自分の数値って多い方なのだろうか。モンスターだし、多い方だと思いたい。
「次はMPですね。魔法を使うと消費されます。後はスキルの一部も消費されるモノがあるらしいですね。大魔法を使いたいのに最大MPが足りなくて使えず、魔法使いの道を諦めた、なんて人も居るみたいですね」
増えないことの弊害、か。
「MPが少なくなると精神的に不安定になり、最終的に気絶してしまいます。MPを使い切らないようにするのも重要ですね」
『ちなみにMPの回復手段は?』
【《念話》スキルが開花しました】
【《念話》スキル取得に伴い、念話使用頻度を熟練度に反映します】
へ? 会話の途中だったが突然のシステムメッセージに驚く。慌ててステータスプレートを見る。
「MP回復しゅだ……ランさん、どうかしましたか?」
ステータスプレートの所持スキルに念話のスキルが増えていた。
念話:熟練度1994
ど、どういうことだ!?
6月2日修正
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