3-43 家の中
―1―
我が家の探索開始です。
まずは木の扉を開けて、っと。ガチリという音と共に家の扉が外れた。うおおおぉぉ、いきなりドア大破かよ! お、俺の家が……。
あ!
そうだ、忘れていた。まずはチェックポイント作らないと。そうだった、そうだった、忘れるところだった。
俺はぼうぼうの草をかき分け、ちょっとした広さの中庭に戻る。
――《転移チェック3》――
よし、我が家の中庭にてチェック完了。これでいつでも、どんなときでも自宅に戻って来ることが出来ます。わーい。
さて、改めて我が家を探索ですね。
まずはエントランス。ちょっと洋風な感じですな。正面に大きな扉、左にも大きな扉、右は小さな普通の扉。そして二階への階段。うん、我が家が広くて嬉しい!
あ、靴を脱いだ方がいいのかな……って俺は靴は履いてなかった。うん、ボケたボケた。いや、でも改築して、もっともっと綺麗にしたら、お客様には靴を脱いであがってもらう玄関を作ろう。うん、それは大事だ。大事だ!
まずは正面の部屋だな。
――《魔法糸》――
魔法糸を正面の扉に飛ばし、くっつけて開けようとする。魔法糸に引っ張られてドアが開……あ、またドアが吹っ飛んだ。うおおぉぉぉ、マジですか。脆すぎないか? 普通に引っ張っただけで取れるなんておかしいよ、絶対、おかしいよ。
ま、まぁ、改装前の取り壊しの手間が省けたと思って、うん。しょんぼり。
正面の部屋に入る。うーん、ここは談話室かな? うんうん、いい感じじゃないか。雰囲気あるよー。
次は左の部屋かな。こちらも正面と同じくらい大きめの扉だな。
――《魔法糸》――
こちらも魔法糸を飛ばし、くっつけて扉を開ける。よし、こちらは壊れなかったぞ。
中は……食堂か。左、西側の部屋は食堂と。ぼろぼろで崩れ落ちているけれど長方形の大きなテーブルに椅子の残骸が残っているな。しかしまぁ、エントランスから、いきなり食堂とか……洋館ってそんな感じの作りが普通なんだろうか。詳しくないからわかんないなぁ。お? 奥に、もう一個扉があるぞ。もしかして調理場かな?
奥の扉を開けて中に入ると……ちょっと大きめのキッチンになっていた。ここはレンガ? 石造り? なんだな。と、ここにも半分壊れた扉が。壊れた扉から外が見える。なるほど、食材とかの搬入口かな? この先に食料庫とか置くといいかもしれないなぁ。
さぁ、次は戻って右の普通の扉だ。せっかくだから俺はこの赤の扉を選ぶぜ!
別に赤くもない普通の扉の先は廊下だった。廊下かぁ。いや、でも、いきなりさ、扉を開けた先が廊下なら――扉を付ける必要があったか? 無いだろ。
廊下を挟んで3部屋、折れ曲がった先に1部屋。扉も無く(多分、壊れちゃったんだろうね)部屋の様子は廊下から丸見えだった。これは客室だろうか。
よし、次は2階かな。
エントランスに戻り、階段へ足をかける。何だ! この階段は! ぼっろぼっろで崩れ落ちそうだ。ただでさえ階段を上がるのは苦手なのに、怖いなぁ。
階段をのろり、のそり、と上っていると階段が、足下が抜けた。ちょっ、マジか。
――《魔法糸》――
俺はとっさに魔法糸を飛ばし、落下を防ぐ。まるで蓑虫だ。魔法糸を縮めて階段の上に戻る。ふぅ、心臓に悪いなぁ。びっくりしたよ。階段も修繕が必要っと。
階段を上った先は廊下が右と左に分かれていた。まずは右に行くか。
右の廊下を進むと右手に扉が。ここも扉を開けて確認してみる。うーん、ここも客室ぽい感じだなぁ。そのまま進むと廊下が左に折れ、窓のある廊下に。
右手に窓のある廊下の中心部、左手側に扉。ここも中を開けてみる。ちょっと豪華な作りの広めの部屋。大きなベッドだった物の残骸も残っている。ここが、この家の主の部屋かなぁ。
窓のある廊下に戻り、左に曲がり進む。ここも右手に扉っと。うーん、ここも客室ぽい感じだな。
そして、そのまま進むと階段に戻ってきた。おー、ぐるりと1周した感じか。
これで全ての部屋を回ったかな。にしても凄い洋館ちっくな作りだなぁ。帝都が中華な建物ばかりなのに意外だよね。うーん、帝都の外れに作られているし、隣が墓地だし、何か曰くがあるのかもしれないなぁ。
しかしまぁ、外から見ると屋根裏部屋でもありそうなのにさ、無かったよね。こういう洋館だと屋根裏部屋と地下室は定番なんだけどなぁ。まぁ、この屋敷を作った人がそういった遊び心がなかったのかもしれない。
さあて、探索も終わったし、後は……食事だ!
「にゃあ」
小っこい羽猫も鳴いている。
フロウから327,680円(金貨1枚)も貰っているからな。帝都の美味しい食堂を探して大陸料理に舌鼓を打つのもいいよなぁ。色々なお店を巡りたいよね。ああ、ワクワクしてきたぞー。と言っても、今日は疲れたから《転移》でスイロウの里に戻る予定なんですけどね。あそこなら、何処に何があるか分かっているから、お店を探し回って日が暮れて困る、なーんてことがない! うーん、《転移》が超便利です。ホワイトさんの所に顔を出して武器の手入れもして貰いたいしさ。
帝都の武器防具屋や冒険者ギルドは明日だね、明日。
明日は帝都の大工さん? の所にも顔を出さないとなぁ。色々と直して貰いたいし、それがどれくらいの費用になるのか見積もりも出して貰わないとね。ま、まぁ、そういった人たちが居れば、だけどさ。さすがにこのサイズ、この規模の家を自分でどうにかは出来ないからなぁ。専門知識もないしさ。
そろり、そろりと階段を下り、我が家を後にする。うーん、てっきり幽霊とか出てきて、出て行けー、みたいな展開でもあるかと思ったが、さすがにそんな漫画みたいな展開は無かったか。
うんじゃ、まぁ、一度スイロウの里に戻りますか。
――《転移》――