3-37 試合前
―1―
「では、このまま通路でお待ちいただけますか?」
黒い服のお方からのお言葉。いや、あのう、体中が痛いんですが……。今ね、俺の体から体液がぴゅっぴゅっ出てるんですよ。酷いんですよ。
痛む体を我慢して、しばらく待っているとずだ袋さん達を引き連れたフロウがやって来た。いやぁ、わざわざ俺に会いに来るとか……もしかして暇なのか?
「ほう。なかなか面白い試合だったな」
ありがとうございます。ですが、もう体力の限界なんで、話は短めでお願いします。
「おいおい、大丈夫か?」
大丈夫じゃないです。さっきから体液がこぼれ……あれ? 体液が止まっている。いつの間にか傷がうっすらとだけど治っているな。何だろう、これもHPやSPの関係なのだろうか。うーん、相変わらずよく分からない。
「まぁ、後で治癒術士を呼んでやる」
あー、あの少女ね……要らないです。それよりも白い部屋の使用許可をくださいな。
「この後、まだ5戦ほどあるからな。治療はその後だ、と言いたいところだが、お前は観戦が出来るわけでもないしな、まぁいいだろう」
へ? まだ後5戦もあるの? つまり親善試合って、全部で8試合もするのか……。ということは引き分けもあり得る――いや、むしろ引き分けを狙っているのか?
「お前が戦ったのは将来有望な新米の竜騎士らしいぞ。ククク」
へー。まぁ、技の熟練度は凄かったけど、それだけだったもんなぁ。新米なら仕方がないか。で、その話をしにわざわざ来てくれたのかな?
「ほう? まぁいい。今回の試合の褒美というわけではないが、次の試合が決まったぞ」
へ? もうですか? 早くない? 次って、噂の星獣様とやらだよね?
「次のお前の試合は一週間後だ」
ほ、ほう。すぐなような、まだまだ時間があるような、微妙な日数だな。
「まぁ、今のお前では確実に負けるだろうがな」
ほ、ほほう。言いますね。そこまで言うなら勝ったらどうしますか? どうしますか!
「ほう。その目、勝つ気か……」
その目って……この芋虫アイの眼力が分かるのか? くりくりしているくらいしか分からないと思うんだが、いやまぁ、何かの比喩かな。
「そうだな。ヤツに万が一でも勝てたならば……何か特別な報酬を特別に用意しよう」
ほうほう。その言葉、忘れるなよ。
「それとな、もし勝てたならば、お前にとっての試合は次が最後になるだろうな」
へ? 8戦目が最後じゃないの? 剣聖様とやらが居るんだよね?
「剣聖戦はオマケだ。まぁ、その時になればわかるだろうよ」
フロウはそう言い残して去って行った。剣聖戦はオマケ? どういうことなんだろう。7回戦の星獣様に勝てるなら余裕ってことなんだろうか? うーむ。
「それではご案内します」
あ、はい。いかん、いかん。考え事をしていてずだ袋さん達の存在を忘れていた。
ずだ袋さんのご案内で白い部屋に。よーし、ヒールレインを使っちゃうぞー。と、その前にステータスプレートを確認しておくか。
HPは70か。結構減っているねぇ。SPは0、って、0かよ。1週間で満タンまで行くかなぁ。これは寝る前のMP消費訓練はお休みしないと間に合わないな。にしても70かぁ、70だよ。何というか区切りの良い数字過ぎて、お前の状態なら70程度じゃね? って言われているような気になってくるよ。実際、怪我の度合いを数値化なんて無茶苦茶だしね。結構、適当な気がするなぁ。まぁ考えても仕方ない、魔法を使ってみよう。
――[ヒールレイン]――
癒やしの雨が降り注ぐ。おうおう、暖かい感じです。さーて、HPは、と。お、ゆっくりと数値が増えている。SPも少しずつだけれど増えているな。両方増えるのか。SP回復のために使うのならMPからの変換の方がマシかと思ったけれど、HPも回復するなら使う価値があるかもしれんね。
―2―
「では行くぞ」
復活したオーガスさんとの朝練です。にしても親善試合が終わるのを狙ったかのような復活タイミングだよなぁ。
オーガスの振るうグレートソードをサイドアーム・ナラカで受けてみる。ダナンの鋼糸は掴むことが出来たんだよな。ならば他の武器を掴んで奪うことが出来るのでは? って発想なんだけど、どうかなー。
サイドアーム・ナラカがオーガスのグレートソードを受け止め、掴み、そのまま消えた。は? 消えた?
俺はサイドアーム・ナラカを再度発現させる。ああ、MPが勿体ないです。うーん、勢いがあり過ぎると消えちゃうのかな? よーし、色々実験しちゃうぞー。
次にオーガスが手に持った状態のグレートソードを掴んでみる。うん、普通に掴めるな。そのまま武器を振り回してみてもらう。サイドアーム・ナラカが引っ張られ、そのまま消えた。は? 消えた?
その後も色々実験して分かったことは、軽くて握れるくらいの細いモノなら掴めるみたいだ。鋼糸を掴めたのは偶々だったのか……。しっかりと握れる感じのモノなら奪うことも出来そうだが、それほど力が無いので上手くタイミングを合わせないと相手に引っ張られて消えてしまうって感じだな。
それでもレイピアとか突剣みたいな細くて軽い武器なら上手くタイミングを合わせれば面白いことになりそうだよね。よし、これは憶えておこう。
そういえばダナンから鋼糸をゲットしていたな。使えるようになれば面白いかもしれないな。よーし、ちょっと鑑定してみよう。
【遮断の銀の糸】
【魔法を遮断する効果を持った銀製の細い糸】
へぇ、鋼糸ではなく銀糸か。魔法遮断の効果は面白いと思うけど、糸でどうやって遮断するんだ? うーん、よく分からないな。
まぁいいや、練習してみよう。
銀糸の先には指を差し込むような輪っかが付いている。指がない俺にははめ込むことが出来ないのでサイドアーム・ナラカに持たせてみる。よーし切断しちゃうぜー。
銀糸をオーガスのグレートソードに叩き付けてみる。悪いな、オーガス。お前のグレートソードをバラバラにしちゃうぜ。
しかし、銀糸は簡単に弾かれた。へ? も、も、も、もう一度だ。
もう一度、グレートソードに叩き付ける。やはり弾かれる。そ、そうだ、叩き付けるのが駄目なんだ。引っ張るような感じでやらないと駄目なんだな、うん。しかし叩き付けようが引っ張ろうが、全て弾かれる。な、何でだ? ダナンはこの銀糸を使ってスパスパと切り裂いていたよな? なんで出来ないんだ?
う、うーん。分からない。そもそも糸でモノを切るってのは無理なんじゃないか? 何らかのスキルなんだろうか? うーん、仕方ない、この武器は保留ってことで。次の星獣戦での隠し武器として使えると思ったんだけどなぁ。世の中、そう上手くはいかないか。
まぁ、まだまだ日数はあるんだ。出来うる限りの準備はしておこう。
ちなみにオーガスは次の対戦相手、星獣の情報は教えてくれませんでした。もう、ケチだなぁ。
名前:ラン(氷嵐の主)
所持金:0円
ギルドランク:E
GP :216/6400
MSP :40
種族:ディアクロウラー 種族レベル:7
種族 EXP 1888/7000
クラス:狩人 クラスレベル:2
クラスEXP12654/16000
HP: 100/100
SP: 810/810
MP: 82/ 82
筋力補正:8 (2)
体力補正:6 (2)
敏捷補正:45(4)
器用補正:10(8)
精神補正:4 (0)
所持スキル :中級鑑定(叡智のモノクル)
サイドアーム・ナラカ:-
魔法糸:-
天啓:-
毒耐性:熟練度5600
危険感知:-
異能言語変換:-
クラススキル:槍技:熟練度3172
スパイラルチャージ:熟練度2120
払い突き:熟練度1080
スピアバースト:熟練度80
百花繚乱:熟練度136
ゲイルスラスト:熟練度152
ウェポンブレイク:熟練度384
弓技:熟練度1010
チャージアロー:熟練度1320
集中2:熟練度232
遠視1:-
早弓2:-
増加2:-
解体1:-
クラス :狩人
弓技 LV1(0/200)
集中 LV2(0/60)
遠視 LV1(0/40)
早弓 LV2(0/120)
生活 LV0(0/100)
増加 LV2(0/60)
解体 LV1(0/40)
初級テイム LV0(0/40)
サブクラス :戦士
戦技 LV0(0/100)
早熟 LV1(0/40)
挑発 LV0(0/20)
物理耐性 LV0(0/40)
サブスキル1:浮遊4:熟練度1690
転移3:熟練度210
サブスキル :飛翔ツリー
浮遊 LV4(0/50)
転移 LV3(0/320)
飛翔 LV0(0/300)浮遊LV4 転移1以上
超知覚LV0(0/100)飛翔LV1以上
所持属性:水:熟練度684
風:熟練度430
所持魔法:アイスニードル:熟練度100
アイスボール:熟練度752
アイスウェポン:熟練度2
アクアポンド :熟練度102
ウォーターボール:熟練度100
ウォーターカッター:熟練度40
ヒールレイン:熟練度12
装備品:風槍眼―真紅―
ロングソード
グレートソード
布
魔法の真銀の矢
遮断の銀の糸
所持品:ステータスプレート(銀)
叡智のモノクル
魚醤
魔法の巾着(3)
謎のパーツ