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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
3  世界の壁攻略
149/999

3-36  決着!

―1―


 飛び上がった竜を見上げる。空高くってほどでは無いな。それでも上空からの攻撃ってのは大きなメリットだよなぁ。


「では行くぞ」

 あ、はい。どーぞ。


 竜の口に紫の光が集まる。ブレスか。にしても紫の光ってことは魔法系じゃないの? 魔法ぽいモノなのに、この魔法が無効化される闘技場で使えるとか卑怯じゃないか。

 竜が羽ばたき滑空しながら紫の炎まき散らす。うお、うひぃ、ちょ、洒落にならない。


――《魔法糸》――


 魔法糸を飛ばし紫の炎を大きく避けていく。跳んで逃げる俺を紫の炎が追いかけてくる。うおおおぉぉぉ。何時までもブレスを吐き続けることは出来ないはずだ。その時まで逃げて逃げて逃げまくるぞー。

 

 竜の口が閉じブレスが止む。心なしか竜の顔が疲れているように見えるな。よし、ここだ。って、上空の敵にどうやって攻撃するんだ? あー、弓が欲しい。

 どう攻撃しようか悩んでいる俺目掛けて、竜が、竜騎士が突っ込んでくる。視界に赤い点が走る。ここはサイドアーム・ナラカに持たせている分、リーチが上のグレートソードの方が迎撃に向いているか? よし、喰らえ!


――《ゲイルスラスト》――


 螺旋を描く風を纏った竜槍と烈風を纏ったグレートソードがぶつかり合う。じりじりとグレートソードが押される。このままでは……くそ、そっちは竜とで2対1じゃん。根本的な力が違うじゃん。


――《ウェポンブレイク》――


 せめて相手の武器とぶつかり合っているこの状況だけでも無駄にしないようにせねば、と武器破壊スキルを発動させる。

 そのままグレートソードが弾かれ槍が俺の体を抉っていく。そして、その纏っていた風の風圧によって吹き飛ばされる。

 はぁはぁ、傷は……大丈夫か? よし、体は動くな。まだまだ頑張れる。


 地面に降り立った竜がまた羽ばたき上空へ。また上空か。


 再度、竜の口に紫の光が集まる。またかよ! 俺の視界が真っ赤に染まる。に、逃げないと……くっ、先程受けた攻撃が原因か、体が重い。逃げ遅れた俺の体が紫の炎に包まれる。あ、熱い、熱い……あれ? 熱くないぞ。しかし、その瞬間、体に激痛が走る。痛い、痛い。体中の痛みに転げ回る。はぁはぁ、体が燃えたり、焦げ付いたりはしていないが、タンスの角に小指をぶつけたくらい洒落にならない痛さだったぞ……。

 ブレスを吐き終えた竜がまたもこちらへと突進してくる。視界に赤い点が走る。俺は赤い点を回避するように動き、スキルを発動させる。


――《払い突き》――


 今度は真紅で打ち払ってくれる!


 相手の槍が俺の眼前で止まる。竜が俺の眼前で急停止し、横へスライドする。ちょ、空中で自由に動くとか物理法則を無視しているよ!

 相手の槍を打ち払おうと構えていた俺のサイドから竜槍の一撃が迫る。俺はなんとか攻撃を反らそうとグレートソードをぶつける。ついでに!


――《ウェポンブレイク》――


 相手の竜槍に致命的な一撃を与えた手応え。後一回ほどで砕けそうだ。しかし、ウェポンブレイクを当てることには成功したが、相手の槍の勢いを殺しきれない。体を捻り、なんとか致命傷を避けるが体に大きく貫き傷を負ってしまう。身が削れ、体液がぼたぼたとこぼれ落ちる。俺はそれを見て、ああ、本当に魔獣の体なんだな、と今更ながらに何故か再認識していた。ははは。


 竜騎士自体よりも竜が優秀すぎる。空中で軌道を変えたり、動いたりは卑怯すぎる。


 竜がまたも上空へ。くそ、もう体が動かないぞ。


 竜の口に紫の光が集まる。この動きの鈍った体では回避は難しそうだな。火属性か……。真紅も一応は火属性を獲得していたよな。行けるか?


 竜の口から紫の炎が迸る。行くぞ!


――《百花繚乱》――


 穂先も見えぬほどの高速突き。突きの一つ一つが紫の炎を貫き、炎の花弁を開かせていく。辺りに幾つもの火の花が咲き乱れる。俺が突きを繰り出す度に自身の体から体液がこぼれ落ちる。はぁはぁはぁ。

 竜のブレスが止まる。全ての炎を打ち消すことは出来なかったが、致命傷は避けられたぞ、生き延びたぞ!

 そして竜が、竜騎士が、竜槍が、螺旋の風となってこちらへ駆け抜ける。何度目だよ、何度も何度も同じ事を馬鹿の一つ覚えみたいに繰り返して、そんな同じ技が何度も通じるかよ!


 砕け散れ!


――《集中》――


 俺はグレートソードと真紅をクロスに構える。それを見た竜が空中で動きを変える。集中力の増している俺はそれを見逃さない。それに、な! 俺が狙っているのはお前らじゃないんだ。その竜騎士の手に握られている竜槍なんだよ!


――《Wウェポンブレイク》――


 クロスさせたグレートソードと真紅が竜槍を打ち砕いていく! どんなに動こうが方向転換しようが、何しようが、その持っている武器を俺に突き刺しに来るのは同じだろう。俺はその瞬間に当てるだけでいいんだよ!


 砕け細かい破片になって舞っていく竜槍。武器を無くし、茫然自失のまま地上に着地する竜騎士と竜。へへ、この瞬間を待っていたぜ。今ならズタボロの俺でも外しようがないぜ!


 喰らえ!


――《スパイラルチャージ》――


 真紅が赤と紫の螺旋を描き風を貫いていく。無防備な竜騎士へ真紅の螺旋が迫る。しかし相手の竜は優秀だった。

 俺の攻撃が迫っているのを素早く感知した竜は、自身の体で竜騎士を守ろうとその翼を盾にする。真紅が竜の翼を貫き竜騎士に迫る。しかし届かない。

 く、まさか、ここで邪魔されるとは……。いや、翼に傷を負ったことで飛び立てなくなったはず。もう一度だ! 竜の爪も牙も尻尾もまだまだ健在だ。油断は出来ない。それでも!


 俺は次の攻撃を繰り出そうと痛む体を押さえグレートソードを構える。


 竜が、相手の竜が俺の攻撃を全て受けきろうと立ちふさがる。翼にダメージを受け、飛び立てず、動きの鈍っている竜が、それでも騎乗している竜騎士を守ろうと体を持ち上げ立ちふさがる。


 お、お前……。攻撃よりも守ることを選ぶのか?

「よ、よくも僕の竜槍を壊したな! 魔獣の分際で! その浮かんでいる剣といい、なんて気味の悪い魔獣なんだ! ヘポイト、体を下げるんだ。これでは、その魔獣を倒すことが出来ない」


 ……。


 ……こ、こいつは。武器の無くなったお前がどうやって俺を倒すんだ。その竜がお前を守っているのが分からないのか! 竜だけならまだまだ戦えるんだぞ! 武器のなくなったお前はただのお荷物でしかないんだぞ!


 あ! そうだ、この竜、これだけ賢いんだ。もしかしたら……。

『すまないが、その騎乗している坊やを一発だけ殴らせて貰えないか? それで俺は満足する』

 竜に限定して天啓を授けてみる。話が通じると良いのだが……。


 俺の言葉が分かったのか竜が体を下げ、しゃがみ込みうずくまる。おお、有り難い。

「お、おい、ヘポイト。どうしたんだ」

 竜騎士は竜の謎の行動に慌てている。はっはー。俺はゆっくりとぼろぼろの体を動かし竜騎士に近づく。しかしまぁ、この体だと一発殴りつけるのも困難だな。腕が短いしね。


――《魔法糸》――


 俺は魔法糸を地面に飛ばし、その勢いで空中へ。


『お前は、その竜にどれだけ助けられているかを理解しながら気絶しろッ!』


 そのまま体当たりをかますように思いっきりぐーで竜騎士を殴りつける。ざまぁ、みさらせ。


 そのまま華麗に着地というわけには行かず、地面に叩き付けられゴロゴロと転がる。はぁ、スッキリした。

 さてと約束だからな。


 俺はゆっくりと体を起こし、会場を、周囲を見回す。そして宣言する。

『降参だ』

 ま、元々負ける予定だったしな。

『これ以上は体が動かない。自分の負けだ』


 俺の言葉に会場が沸く。

「やるじゃねえか、芋虫」

「やったな」

「善戦だったぜ」

「ふぅ……」

「見応えのある試合だったぞ」


 おろ? 意外と賞賛されている。てっきり殺せコールでも始まるかと思ったんだが……意外な展開だ。あの頭の悪そうな姫様も大きな拍手をしている。おろろ? さすがにゼンラ帝は起きているのか寝ているのか分からない焦点の定まらない視線でこちらを見ているだけだったが、それでも、うーむ。予想外です。いざとなったら走って逃げるくらいの体力は残していたんだけど不要だったか?


 舞台上に黒い服の人たちが現れる。あら? ずだ袋さん達じゃないんだね。俺は黒い服の人達に運ばれて通路へ。


「なかなか、上手い戦い方でしたね」

 黒い服の人のお褒めの言葉。ありがとうございます。

「帝都の民は強い者が好きです。先程の試合は帝都民のお眼鏡にかなう戦いだったと思います」

 あ、そうなんですね。


 はぁ、良かった。にしても、今回の戦いは疲れた。


 体もぼろぼろだよ……。

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