3-33 ボス骨
―1―
グレートソードで周囲の骨を手当たり次第に叩っ切りながら進む。倒したそばから骨が復活していく。キリが無いな。前方のスケルトンを叩っ切りながら上を見る。うん、天井はそれほど高くないな。
――《魔法糸》――
天井に魔法糸を飛ばし、空中へ。
からのッ!
――《スピアバースト》――
赤い光に包まれた真紅が地面に激突する。走る衝撃波。赤い光の衝撃波によって周囲のスケルトン達が吹っ飛んでいく。よし、見えた!
吹き飛んだスケルトンの集団の奥に、ぼろ布を纏ったスケルトンが見える。早く周囲の骨が復活する前に倒さないと。
俺はサイドアーム・ナラカに持たせたグレートソードを構え駆け出す。慌ててぼろ布を纏ったスケルトンが逃げ出す。それを追う俺。逃げんなしー。
何とか背に追いつきグレートソードを振りかぶる。しかし、それを防ぐように巨大骸骨が立ちふさがった。いつの間に復活した!
俺は復活した巨大骸骨に真紅を叩き付ける。巨大骸骨が怯んだ隙にそのままぼろ布骸骨まで駆け抜ける。こんなのをいちいち相手していたら周囲の骨がどんどん復活しちゃうからね。無視無視。
さあ、追いついたぜ。
一瞬、こちらを振り向いたぼろ布骸骨目掛けてグレートソードを叩き付ける。グレートソードの一撃にてぼろ布骸骨が怯む。そこへッ! 上段からのグレートソードの重さを活かした一撃を叩き込む。その一撃によってぼろ布骸骨の半身が粉々に吹き飛ぶ。それを見て、俺はすぐさまグレートソードを手放す。そのままサイドアーム・ナラカで剥き出しの魔石を掴み、引き抜く。魔石を抜かれたぼろ布骸骨が粉になって消えていく。後は残った骸骨を砕くだけだな。
俺は周囲に残った復活している骸骨にグレートソードを叩き付けていく。後は事後処理だけですな。数は多いし、復活するしで範囲攻撃が無ければ本当に危険な感じだなぁ。まぁ、今の俺には範囲攻撃があるから楽勝なんですけどね!
複数の骸骨を倒した先には今回も黄色の箱があった。宝箱か。罠を外してくれる人が居ないのは痛いなぁ。早く、一人で何でも出来るようにならないとなぁ。まぁ、それはともかく鑑定してみますか。
【ポイズンガス】
毒か……。これ、パッと開けてパッと部屋から脱出すれば何とかならないかな。さすがに爆弾とかなら危険だけど、ガスなら何とかなるんじゃないかなぁ。よし、やってみよう。
思い切って黄色の宝箱を開け放つ。開けた瞬間、嫌な匂いと嫌な色の煙が立ち上がったような気がしたが、そんなモノは気にせずダッシュ、ダッシュです。中身を見ている暇なんてないのです。
広間から階段へ。階段の曲がり角で嫌な色の煙が消えるのをチラチラと壁越しに覗きながら待つ。そういえば、ここって空気とか空調とかどうなっているんだろう。余り気にしていなかったけれど迷宮内って色々とヤバイんじゃないか? ま、まぁ、考えても答えは分からないし異世界らしい不思議な力が働いていると思考停止しておこう。
しばらく待っていると嫌な色の煙はかき消えていった。よし、戻って箱の中身を確認だ。
箱を覗いてみると、中には一本の矢が入っていた。何だろう? まずは鑑定だな。
【魔法の真銀の矢】
【真銀で作られた魔法の矢。矢を放った後、しばらくすると矢筒に戻っている不思議な矢】
うん、これは不思議だな。にしても勝手に戻ってくるとか凄まじく便利そうな矢だよなぁ。あー、弓が使える状態だったなら凄く嬉しかったんだけどなぁ。まぁ、コンポジットボウを返して貰うまでは大切に保管しておきましょう。その時はチャージアローで壊さないように気をつけて使わないと、な。
―2―
宝箱のあった広間を抜けるとまた細い通路になっていた。左右には二段になった凹みが無数にある。なんだろうな、コレ。何かが納まっていたんだと思うんだけど、何が入っていたんだろうか。
そのまま通路を進んでいるとまた開けた部屋に行き当たった。部屋の中には無数の砕けた骨が散らばっている。そして部屋の奥には両開きの扉が見える。お、如何にもボス前って感じだな。扉の先がボスかなぁ。
扉に近づくと辺りに散らばっていた骨がカタカタと音を立てて動き出した。動き出した骨が重なり合い一つの形を作っていく。ま、まさか?
骨と骨が重なり合い、まるで死に神が持っているかのような鎌を持った巨大な骨の芋虫を作っていく。な、な、な、ここでボスか? 魔石を持っていないけれど砕いて倒せるのか? と、とにかく先手必勝だ。相手の完成を待つ必要なんてないからな!
サイドアーム・ナラカに持たせたグレートソードの上段からの振り下ろし。その強烈な一撃によって骨が粉々に砕け飛んだ。うん? ボスかと思ったらあっさりだな。その瞬間、視界が真っ赤に染まる。な? 何処からかの攻撃が?
――《集中》――
集中力を上げ、敵の攻撃に備える。その瞬間、背後からヒュンヒュンと音が聞こえてきた。
――《魔法糸》――
俺はすぐさま魔法糸を飛ばす。その勢いのまま空中へ飛び距離を取る。
俺が居た場所を鎌のような骨がくるくると回転しながら通り抜けていく。ど、何処から? 俺が振り向くと、そこには鎌を持った芋虫のような骨が居た。なんだと?
俺は新しい芋虫型の骨まで駆け出しグレートソードを叩き付ける。俺の攻撃を防ごうと鎌のような骨を構えるが、それごと叩き壊す。よし、破壊した。うん、脆い、脆いぞ。
その瞬間、またも視界に赤い線が混じる。すぐさま、そちらを向くと鎌のような骨を持った芋虫がそれを投げつけようと振りかぶっているところだった。させるかよッ!
俺は即座に駆け寄りグレートソードで骨を叩き壊す。その瞬間、またも視界に赤い線が走る。ちょ、モグラ叩きかよ。赤い線の先へ駆け寄り復活していた芋虫型の骨を叩き壊す……が、次々と赤い線は増えていく。や、やばい。
魔石を持ったスケルトンは何処だ? もしかして、この扉の先か?
俺は扉に駆け寄り、手をかける。その瞬間、俺の背中に飛んできた鎌のような骨が刺さる。うぐ、痛ぇ、痛い、痛い。く、が、我慢だ。まずは扉を開けないと――しかし、扉は押しても引いてもスライドさせようとしても……まったく動かなかった。ここの骨を倒さないと開かない仕組みか何かなのだろうか? くそ、まずは何にしてもこいつらを片付けないと調べることも出来ないか……。
魔石を持った骨は? 魔石は何処だ?
扉を背にした状態で俺は周囲を見回す。周囲には無数の巨大な芋虫型の骨が、いつの間にか俺を取り囲むように存在していた。手に見える部分は鎌のような形になっている。どうする、どうする?
俺の手に握られていた真紅が自然と地面に触れる。うん? 手を下ろしたつもりはないんだが……って、地面? まさか?
地面をよく見ると一部分から線が延びていた。おいおい、そんなところに隠れていたのかッ!
俺は地面の線目掛けて真紅を投げる。真紅が地面から伸びていた線の先に突き刺さる。その瞬間、周囲の芋虫型の骨達が全て崩れ去った。ふぅ、今回は残りを壊す必要もなかったか。
さあ、これでゆっくりとこの部屋を調べることが出来るな。