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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
3  世界の壁攻略
142/999

3-29  国と国

―1―


「置いていかないでください」

 俺が個室への道を戻っていると青法衣の少女が走ってきた。お、復活したか。で、何が彼女のトラウマを呼び起こしたんだろうね。

「あんたは何者なんですか!」

 走ってきたのか、はぁはぁと荒い息をついた後、すぐに飛び出したのがその言葉だった。いや、あのー、何者と聞かれても困るよな。芋虫型魔獣? 星獣様? 何て言えばいいんだろうか。俺自身、自分のことが良くわからないからなぁ。だって気付いたらこんな状態だもん。ホラーだよ、ホラー。

「あんたみたいなのは沢山いるんですか!」

 少女が手に持った棍棒を振り回している。こわ、当たるってば。あんたみたいって星獣のことなのかなぁ。

『わからないな』

 いや、ホント、分からないです。

「くっ、まぁ、いいでしょう」

 いいのか。

「わ、私が、この国、一番の治癒術士、な、なんですからね、うん、そう、そうね」

 なんだか、うんうんと頷いている。は、はぁ、一番でいいと思いますよ。

「そうよ、そうだ、そうね、うん」

 少女の無表情な顔が笑顔に変わっていく。作り笑顔ってヤツだね。

「気を取り直してー、ご利用ありがとうございましたーなんですよー。今回はフロウさんの依頼で無料でしたがー、次からはー、お金を取りますからねー。死に紙なら2,000死に紙、お金なら5,120円(銀貨1枚)になりますよー。またのご利用をお待ちしておりますー」

 あ、はい。にしても硬貨での支払いも有りなのか。久しぶりに硬貨の存在を聞いたな。まぁ、次の利用はないんですけどね。だってさ、あなたを呼び寄せる方法も分からないし、随分とお値段がお高い気がするからね。

「次に私を呼ぶ時は闘技場内の時は食事場のおばちゃんに言ってくださいねー。外からの時は受付でお願いしますねー」

 あ、はい。早いフラグ回収すいません。って、呼び方は分かったけどさ、呼ばないからね、呼ばないんですよ。だってさ、回復魔法も憶えたし、高いし……君を利用する機会は、無いッ!


 にしても、この少女の話しぶりや態度からすると帝都では治癒術士って、もしかすると貴重な人材なのかなぁ。




―2―


 今日も今日とて朝練だー。オーガスが復帰してこないので一人黙々と朝練です。そういえば最近はキョウのおっちゃんの姿も見ないなぁ。個室になっちゃったから、ますます会う機会がないもん。

 今は団体戦にも参加しないし、次の試合も決まらないから――暇でしょうがないんだぜ。


 日課の訓練が終わり控え室に戻るとフロウが居た。お、もしかして次の試合が決まったのかな?

「ほう。芋虫か、丁度良かった」

 次は噂の星獣様との戦いだったよな。どんな魔獣なんだろうか、楽しみだぜ。あ、もしかしてクラスを得ることが出来た魔獣って、その星獣様か。そうとしか考えられないよな。どんな姿なんだろうな。俺が知っている星獣様って言うと羽猫くらいしか知らないしなぁ。やっぱり、あんな如何にもな感じなんだろうか。俺もどうせ魔獣になるなら、あーいった感じの如何にもな魔獣になりたかったなぁ。俺ってば見た目が雑魚ぽいもん。


『次の試合か?』

 俺の言葉にフロウはクククと笑っている。

「ほう。そんなにも次の試合が楽しみか。だが、今回は違う用件だ」

 あ、違うんですか。ちょっとがっかりだなぁ。もう闘技場暮らしにも慣れすぎて飽きてきたし、そろそろ迷宮の攻略やMSP稼ぎに行きたいんですよ。自由になりたいんですよー。

「三日後に神国との親善試合がある」

 う、嫌な予感しかしないんですが。

「今、帝都に来ている神国のお姫さんのお連れの騎士との接待試合だな」

 フロウはクククと笑っている。あー、接待なんですね。

「その試合に闘技場の選手枠もあるんだがな、出場させようと思っていたオーガスが治療中だからな。代わりにお前を、な」

 ふむふむ。そういえばオーガスの治療も長いよなぁ。魔獣は丈夫って聞いていたけど何か問題でも起こっているのかな。

『自分が参加するメリットは?』

「ほう。そうくるか。残念ながら報酬はないな。喜べ、しかも強制参加だ。ククク」

 ですよねー。

「まぁ、この試合は負けてもいい。いや、むしろ負けろ」

 へ、へぇ? 何故に?

「さっきも言ったがな、接待だからな。勝つ必要は無い」

 了解。でもさ、それで負けて殺されでもしたら洒落にならないぞ。

「ああ、今回の試合は殺しは無しのお遊びだからな。だから間違っても殺したり、ケガさせたりするなよ?」

 なるほど、完全に接待――お気軽な試合な訳ですね。

「まぁ、この試合で可愛そうなのは軍人連中よ。神国の連中は普人族以外をゴミみたいに思っているからな。軍人をやっている蟻人族なんかは、その憂さ晴らしに付き合わされるようなもんだ」

 おー、懐かしの蟻人族。ソード・アハトさんも帝国の軍人だったよな。元気にしているかなぁ。

 にしても神国って帝国からすれば冷戦状態とはいえ敵国なんだよな? そんな相手に接待試合をするのか? お姫さまとやらものんきな状態だったし……うーん、イマイチ国と国の関わりや力関係が分からないなぁ。

「ま、伝えたからな。当日はお前の部屋に迎えが来るから心構えだけはしておけ」

 了解。


 にしても3日後か……。まだまだ結構、日数があるなぁ。今更、団体戦に参加する気にもなれないし、訓練しかやることがないし、暇だな。


 どうしようかな。

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